恋人が乗り移った君に恋をした

まつも☆きらら

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第2話

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「どういうこと・・・・・?」

目の前にいるのは、如月きさらぎ咲也だった。

交通事故で亡くなった恋人夏美の弟で、さっき出会ったばかり。

近くで見るとさらにその整った顔立ちがきれいに見え、相手は男なのに思わず緊張してしまう。

『柊真なら、わかってくれると思ってた』

咲也が、夏美の声で―――表情で、俺に微笑みかける。

「俺は、わけわかんないんだけど」

何がどうなってるのか、全くわからなかった。

『うふふ、柊真らしい。ね、座ろう?』

そう言って、夏美―――の声をした咲也は、俺の袖をくいっと引っ張った。

「!!」

その仕草は、まさに夏美のくせだった。

―――やっぱり、夏美・・・・・。

「―――弟に、のりうつったってこと?」

『ん―、そういうことかな?わたしにもよくわからないけど』

そう言って小首を傾げる仕草も、夏美のくせだった。

しかし、そんな仕草を咲也がしてもかわいく見えるのが不思議だ。

見た目はそれほど似ていない。

どちらかといえば童顔でかわいらしい印象だった夏美に比べ、咲也は美人タイプでクールな印象を受ける。

大きな瞳が似ていると言えなくもないけれど、いつも笑顔でいた夏美とさっき会ったばかりでまだ笑顔を見せていない咲也とでは全く印象が違って見えた・・・・・。

「わからないって・・・・・」

『―――事故にあったことは覚えてるわ。横断歩道を歩いていたら、突然すごい力で跳ね飛ばされた・・・・・。気付いたら、血だらけで動かなくなった自分を、上から見ていたの』

「上から?」

『そう。体がふわふわと浮いて・・・・自分の体が透けて見えた。それで、すぐにわかったわ。ああ、わたし、死んじゃったんだって・・・・・』

そう言って、夏美は寂しそうに笑った。

『柊真との結婚が決まって、浮かれ過ぎちゃったのかな・・・・・。もうすぐ咲也も帰ってくることになってたし、咲也に柊真を紹介できるの、すごく楽しみにしてたの。咲也はちょっと人見知りする子だから最初はとっつきにくいと思うけど、でも柊真とならすぐに仲良くなってくれると思ってた』

「・・・・咲也くんが、文句言ってやろうと思ってたって・・・・・」

『うん、聞いてた』

夏美が、おかしそうにくすくすと笑った。

『わたしね、咲也のこと可愛がりすぎちゃったのね。たった一人の弟だし、両親の分もわたしが頑張って面倒見なくちゃって思ってたし、年も7歳も離れてるせいか、咲也が可愛くて可愛くて仕方なかったの。だからちょっと甘やかし過ぎちゃって・・・・だいぶわがままな子になっちゃった。それで、今更だけど弟離れしなきゃって思って・・・・・ちょうど大学で咲也がスペインに興味を持ってスペインの勉強がしたいって言ってたから、じゃあ留学したら?って勧めたの。幸い、貯金もぎりぎり足りそうだったし。その点は両親に感謝してるの。わたしや咲也のために、こつこつ貯めていてくれたんだから。それで、咲也がスペインに行って・・・・・そのすぐ後に、わたしは柊真と出会うことができた』

夏美が、俺を見て微笑む。

夏美の手が、俺の手に重なった。

懐かしい温もりが、俺の手を包む。

『でも、咲也にはすぐに知らせることができなくて・・・・・だって、恥ずかしいじゃない?今までずっと彼氏なんかできなかったのに、咲也がスペインに行ったとたん彼氏ができたなんて、きっと咲也にはいやみを言われるだろうなって思った。それで、なかなか言うチャンスがなくて・・・・・でも、結婚することになって、式場も、日取りも決まって・・・・もう、言うしかないって思って、先週ようやくメールで知らせたのよ』

「そうだったんだ」

『うん。そうしたら、すぐに電話がかかってきて。ふざけんな!って怒鳴られちゃった』

そう言いながらも、夏美は楽しそうに笑った。

『だけど・・・・・会えるの楽しみにしてるって・・・・きっちり顔見て文句言ってやるって・・・・そう言ってた』

夏美の声が震えた。

「夏美・・・・・」

俯いて、涙を流す夏美の肩を抱く。

夏美が俺の肩に頭をもたせかけた。

はたから見たら、奇妙な光景かもしれない。

どう見ても男同士、肩を寄せ合っているのだから。

『柊真・・・ごめんね・・・・せっかく、プロポーズしてくれたのに・・・・・わたし、柊真のお嫁さんになれなくて・・・・・』

「・・・・・仕方ないよ・・・・・こんなの、誰も予想できない・・・・・」

『柊真・・・・お願いがあるの』

夏美は顔を上げると、涙でうるんだ瞳で、俺の顔を見つめた。

「何?」

『咲也を・・・・弟を、見守ってあげて欲しいの』

「え・・・・・」

『ずうずうしいお願いだってわかってる。でも、こんなこと他の人には頼めない。咲也は、とても繊細で・・・・傷つきやすい子なの。ちょっとわがままだけど、本当はとっても純粋な子なの。わたし、咲也のことが心配で・・・・・。咲也を1人残していくことなんて、できない』

「でも・・・・確か親戚の人が・・・・・」

その言葉に、夏美は首を振った。

『ダメ、あの人たちには・・・・・咲也を任せられない』

強い口調だった。

いつも優しい、おっとりとした夏美には珍しいことだった。

『柊真、お願い・・・・・。このままじゃ、わたし安心して逝くことができない』

「夏美・・・・・」

それなら。

夏美は当分はここに・・・・咲也の中にいるということなのだろうか。

俺が、咲也を見守るということは、夏美の傍にいられるということなのだろうか・・・・・。

「・・・・いいよ。わかった。俺が、咲也くんの傍にいればいいんだろ?」

俺の言葉に、夏美は嬉しそうに笑った。

『ありがとう!咲也。ーーー愛してるわ』


そう言って、夏美は俺の首に腕を回し、唇を重ねたのだった・・・・・・。
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