恋人が乗り移った君に恋をした

まつも☆きらら

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第3話

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何度も、ついばむようなキスを繰り返し―――

俺は夏美の髪を撫でた。

「夏美・・・・・」

夏美が、閉じていた目を開け、俺を見つめ―――


徐々に、その瞳が見開かれる。


「!?うわぁ!!?」

夏美―――咲也が、飛び退くように俺から離れ、その勢いでベンチから落ちて地面に尻もちをついた。

「え・・・・・」

突然のことに、俺もすぐに動くことができない。

「な・・・・何してんだよ!?」

「え?何って・・・・・」

「なんであんたと俺がくっついてんだよ?てか・・・・・俺、何してた・・・・・?」

咲也が、きょろきょろと周りを見回す。

―――ああ、そうか・・・・・。

「覚えてないのか・・・・・」

今目の前にいるのは、夏美ではなく咲也なのだ。

「覚えてないって、何を?」

―――参ったな・・・・・

俺は、頭を掻いた。

果たして、俺の話を潤が信じるだろうか?

「どうせなら、ちゃんと話していってくれたらいいのに・・・・・」

ぼそりと呟いた俺の言葉に、咲也が怪訝な顔をする。

「は?何?」

―――てか、これ、話してもいいのかな・・・・・?

「・・・・ねえ、1人で考え込んでないで、ちゃんと説明してくれない?」

咲也が、溜息をつきながらも立ち上がり、服に着いた土を払った。

「・・・・説明、してもいいけど・・・・信じてね?」

そう念を押してから、俺は話し始めたのだった・・・・・。





「―――と、いうことなんだけど・・・・信じる?」

再びベンチに腰を下ろした咲也に、俺は事実をありのままに伝えた。

咲也は顔色を変えることなく、口を開いた。

「―――信じない」

―――あ、やっぱり。

そんな気はした。

話をしてる最中も、咲也は俺から一切目を逸らさなかったけれど、その瞳が揺れることもなかった。

「何それ。なっちゃんが俺の中にいる?じゃあなんで俺には何もわかんねえんだよ?」

「それは俺にも・・・・・」

わかんないけどと言おうとして、咲也が突然立ち上がり、言葉が途切れる。

「―――付き合ってらんねえ。帰るわ」

「え―――帰るって、あの家に?」

夏美と咲也の家は、両親が残してくれたという一軒家だった。

今はそこに喪主の親戚夫婦をはじめ、まだ数人の弔問客が残っているはずだ。

咲也は俺の言葉に足を止め、振り向いた。

「―――今日は、友達の家に泊まる」

「友達って・・・・・」

「それ、あんたに教える必要ある?」

「でも、夏美に頼まれてるし・・・・・」

そう言った途端、咲也の鋭い視線が俺に突き刺さった。

ドクンと心臓が音を立てる。

咲也の瞳は常に強い光を湛え、まるで吸い込まれそうな錯覚に陥りそうになる。

―――こえーな、もう・・・・・

それでも、俺だってここで怯むわけにはいかない。

「咲也を―――見守るって、約束したから」

その言葉に、さらにその鋭さを強める瞳。

「―――あんたに咲也って呼ばれる覚えはねえよ」

俺の背中を、冷や汗が流れる。

「ご―――ごめん、咲也くん、あの―――」

「・・・・幼馴染みだから」

「へ・・・?」

「これから行くとこ。幼馴染みの家。ウチからも近いし、明日の葬式にもちゃんと行くから―――って、叔父さんたちに言っておいて」

「あ―――うん。わかった・・・・」

俺が頷くと、咲也は再び俺に背を向け、すたすたと歩いて行ってしまった・・・・・。



俺はいったん夏美の家に戻ると、喪主の叔父夫婦に咲也の伝言を伝えた。

2人はちょっと怪訝そうな顔をしていたが、特に何も言うことはなかった。

俺は通夜の席を後にし、夜道を歩きながら夏美と咲也のことを考えていた。

夏美は、よく咲也のことを自慢げに話していた。

『今年二十歳になるの。昔から女の子みたいに色白で、目が大きくて、わたしよりもよっぽど美人なのよ。憎たらしいくらい。うふふ。ちょっとひねくれてるところもあるけど・・・・・本当はすごく純粋で、優しい子なの。早く、柊真に会わせてあげたいな』

確かに、はっと目を引くほどの美形だと思った。

どこか人を寄せ付けないようなオーラを漂わせた咲也。

俺の話を信じてはもらえなかったけど・・・・・・



『幼馴染みだから』

『これから行くとこ。幼馴染みの家。ウチからも近いし、明日の葬式にもちゃんと行くから―――って、叔父さんたちに言っておいて』


ちゃんと、話してくれた。

俺のことなんて気にくわないだろうけど、それでもちゃんと俺の目を見て話を聞いてくれた。


―――うん。大丈夫。


きっと、いい子だよ。

明日は、夏美の葬式だけれど・・・・・。

咲也が来る。

ということは、また夏美と話せるかもしれないということだ。

「・・・・・また、明日な・・・・・」

俺は夜空の星を見上げそう呟くと、軽い足取りで家へと向かったのだった・・・・・。
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