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第59話
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「すみません!僕がついていながら―――」
家に着くと、宮下が深々と頭を下げた。
「どんな状況だったんだ?」
「あの・・・・」
「わたしが、コーヒーを入れたところだったのよ」
そう言ったのはキッチンから出てきた裕子だった。
リビングのソファーには彩名が座っていた。
「それで、宮下くんと慧くんがソファーに座ってコーヒーを飲んでたの。彩名も学校から帰ってきたところで、わたしも一緒に4人で雑談しながらコーヒーを飲んでたら、慧くんの携帯が鳴りだして―――」
「慧さんが、電話に出ながら部屋を出て行ったんです。僕も一緒に行こうとしたら、手振りでストップ掛けられて。階段を上がって行くのは見てたので自分の部屋で話したいんだろうと思ったんです」
「電話は誰からだったんだ?」
「『ママ、お疲れさま』って言ってたのでクラブのママだと思うんですが、その後20分経っても降りてこないので様子を見に部屋へ行ったんです。そしたら姿がなくて―――本当に申し訳ありません!」
「いや―――お前のせいじゃない」
クラブのママからの電話なら仕事の話で、問題ないと思ったのも無理はない。
そして二階の自室へ行くのも見ているのであれば、降りてくれば当然足音がするはずだと思うだろう。
「パパ、慧くんどこへ行ったんだと思う?」
彩名が心配そうに言った。
「・・・・わからない。宮下、お前はここに残って慧が帰ってきたらすぐ知らせてくれ」
「わかりました」
俺はリビングを出ると、二階の慧の部屋へ向かった。
部屋は特に変わったところはなく、当然慧の携帯や財布はなかった。
ベッドの布団やまくらをどけてみたりマットレスの下を調べてみたが、何もなかった。
慧が何か行き先のヒントを残しているんじゃないかと思ったのだが・・・・。
「―――そうか、やっぱりな。―――ああ、何か残していってるんじゃないかと思って探してるんだが―――」
片岡に確認してもらい、慧にかかってきた電話はクラブのママからではないことがわかった。
だとすると、慧がわざとママからの電話だと装ったことになる。
電話の相手は誰だったのか。
高梨秀夫からの電話だった可能性はある。
さっき片岡と話していた推測が当たっていたとしたら、2人が以前から連絡を取り合っていた可能性は十分考えられるのだ。
「―――ん?」
部屋中を探し、そろそろ車に戻らなくてはと思いドアの方を向いた時に、それが目に入った。
ドアのノブの下に、白い紙のようなものが見えた。
テープで張り付けられていたそれを外し、折りたたまれていたメモ用紙のようなものを広げてみる。
そこには走り書きのような文字で『橋本』と書いてあった。
―――どういうことだ・・・・?
俺はそのメモを手に、急いで車に戻った。
「橋本?どういうことです?」
「わからない。橋本家の人間はもう残っていない。だとしたら・・・・」
「橋本・・・・橋本家‥‥あ、橋本家!」
片岡が何かに気付いたように声を上げた。
「なんだよ?」
「橋本家ですよ!あの家―――もう燃えてしまいましたけど、あの家じゃないですか?」
「そうか‥‥あそこは事件現場だからまだ立ち入り禁止になっているが、テープが張られているだけだから入ろうと思えば入れる。―――課長に連絡する。俺たちはこのまま橋本家に向かおう」
「はい!」
片岡がハンドルを切り、来た道を戻る。
橋本家は俺の家のすぐ隣だ。
慧がいないと気づいてからまだ1時間も経っていない。
そこから移動していなければまだそこにいるはずだ。
それでも。
俺の胸はざわざわと落ち着かなかった。
嫌な予感がする。
慧―――。
家に着くと、宮下が深々と頭を下げた。
「どんな状況だったんだ?」
「あの・・・・」
「わたしが、コーヒーを入れたところだったのよ」
そう言ったのはキッチンから出てきた裕子だった。
リビングのソファーには彩名が座っていた。
「それで、宮下くんと慧くんがソファーに座ってコーヒーを飲んでたの。彩名も学校から帰ってきたところで、わたしも一緒に4人で雑談しながらコーヒーを飲んでたら、慧くんの携帯が鳴りだして―――」
「慧さんが、電話に出ながら部屋を出て行ったんです。僕も一緒に行こうとしたら、手振りでストップ掛けられて。階段を上がって行くのは見てたので自分の部屋で話したいんだろうと思ったんです」
「電話は誰からだったんだ?」
「『ママ、お疲れさま』って言ってたのでクラブのママだと思うんですが、その後20分経っても降りてこないので様子を見に部屋へ行ったんです。そしたら姿がなくて―――本当に申し訳ありません!」
「いや―――お前のせいじゃない」
クラブのママからの電話なら仕事の話で、問題ないと思ったのも無理はない。
そして二階の自室へ行くのも見ているのであれば、降りてくれば当然足音がするはずだと思うだろう。
「パパ、慧くんどこへ行ったんだと思う?」
彩名が心配そうに言った。
「・・・・わからない。宮下、お前はここに残って慧が帰ってきたらすぐ知らせてくれ」
「わかりました」
俺はリビングを出ると、二階の慧の部屋へ向かった。
部屋は特に変わったところはなく、当然慧の携帯や財布はなかった。
ベッドの布団やまくらをどけてみたりマットレスの下を調べてみたが、何もなかった。
慧が何か行き先のヒントを残しているんじゃないかと思ったのだが・・・・。
「―――そうか、やっぱりな。―――ああ、何か残していってるんじゃないかと思って探してるんだが―――」
片岡に確認してもらい、慧にかかってきた電話はクラブのママからではないことがわかった。
だとすると、慧がわざとママからの電話だと装ったことになる。
電話の相手は誰だったのか。
高梨秀夫からの電話だった可能性はある。
さっき片岡と話していた推測が当たっていたとしたら、2人が以前から連絡を取り合っていた可能性は十分考えられるのだ。
「―――ん?」
部屋中を探し、そろそろ車に戻らなくてはと思いドアの方を向いた時に、それが目に入った。
ドアのノブの下に、白い紙のようなものが見えた。
テープで張り付けられていたそれを外し、折りたたまれていたメモ用紙のようなものを広げてみる。
そこには走り書きのような文字で『橋本』と書いてあった。
―――どういうことだ・・・・?
俺はそのメモを手に、急いで車に戻った。
「橋本?どういうことです?」
「わからない。橋本家の人間はもう残っていない。だとしたら・・・・」
「橋本・・・・橋本家‥‥あ、橋本家!」
片岡が何かに気付いたように声を上げた。
「なんだよ?」
「橋本家ですよ!あの家―――もう燃えてしまいましたけど、あの家じゃないですか?」
「そうか‥‥あそこは事件現場だからまだ立ち入り禁止になっているが、テープが張られているだけだから入ろうと思えば入れる。―――課長に連絡する。俺たちはこのまま橋本家に向かおう」
「はい!」
片岡がハンドルを切り、来た道を戻る。
橋本家は俺の家のすぐ隣だ。
慧がいないと気づいてからまだ1時間も経っていない。
そこから移動していなければまだそこにいるはずだ。
それでも。
俺の胸はざわざわと落ち着かなかった。
嫌な予感がする。
慧―――。
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