記憶を嫌う少年と記憶を探す少女の物語

Rin凜Lin

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プロローグ

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 寒い。
 暗闇の中、まるで水中にいるかのようにゆっくりと沈んでいく。
 這い上がろうとしても、いくら藻掻いても沈む感覚は消えない。
 光が見えてこない。

「──エル──」

 遠くの方で声が聞こえる。
 どこかで聞いたことがある安心する声だ。

「シエル──逃げ──!」

 ……父さん……?
 暗闇の中で父さんの姿が見えた。
 咄嗟に手を伸ばすが届くことはなく、遠く離れていってしまう。

「シエル──」

 父さんの姿が見えなくなり、次に聞こえてきたのは女性の声。
 これもどこかで聞いたことがある。

「──願い──生きて──」

 涙を流す少女の姿。
 その姿を見ると、なぜか胸が苦しくなる。
 どうして泣いているんだよ。
 少女に触れようとしたが、やはり届かない。

 嫌だ。
 離れないでくれ。
 泣かないでくれ。
 どうしてこうなった。
 誰がこうしたんだ。

 もうやめてくれ……

 もう何も……何も失いたくはないんだよ……



 ──────────



 温かい。
 誰かに抱きしめられている。
 すごく安心する。
 一体誰なんだろう?
 顔を見ようとしたけれど、強く抱きしめられて思うように動けなかった。
 苦しくなるほど強く。
 その人は優しく私の頭に触れた。
 その手はなぜか震えている。

「──ヘラ──あなた──と──」

 上手く聞き取れなかったけど、私の頬に熱いものが流れた。
 その瞬間、その人は私から離れて勢いよく押した。
 私は暗闇へと落ちていく。

 ここはどこなんだろう?
 私はどこへ行くのだろう?
 あの人は誰だったんだろう?
 あなたは私になんて言ったの?

 何も分からない。
 分からないの。
 だからお願い──

 一人にしないで……!
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