転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ

文字の大きさ
467 / 1,191
第二十四章 お兄ちゃんの官僚としての忙しい日々

六百六十三話 思わぬところから見つかった怪しい報告書

しおりを挟む
 早速、皆で宰相の執務室に移動します。
 すると、既に報告書が大きなテーブルの上に用意されていました。
 宰相はまだ会議が続いているそうで、執務室に帰ってきていません。

「すみません、報告書を用意して貰っちゃいまして」
「いえいえ、このくらいはなんてことありません。ただ、貴族家毎にしてありますので、確認が終わりましたら元に戻して頂けると助かります」
「「「はーい」」」

 いつもの職員さんからの注意を聞いて、リズ達は元気よく返事をしています。
 レイナさん達も付いてくれているので、既に報告書をチェックし始めました。
 僕もチェックを始めます。

 ペラペラ。

「あれ? すみません、この報告書は過去数年全く同じ筆跡と記載になっています。こんな事ってありますか?」
「うーん、これは怪しいですね。報告内容に変化がなければ同じ内容で提出する事はありますが、筆跡まで同じとなる事はありません」

 調べ始めて十分後、僕はある貴族の報告書がおかしいのに気づきました。
 職員さんもおかしいと言ったので、これは要確認です。

「あっ、これもお兄ちゃんがさっき言った内容に似ているよ」
「どれどれ? あっ、本当だ。筆跡と記載内容が全く同じだ」
「この二領は隣同士だわ。うーん、記載内容も全く同じだし、とっても怪しいわね」

 リズが見つけた報告書も、僕が見つけた報告書と内容が一緒です。
 カミラさんも、とっても怪しいと睨んでいます。

「この領地は王都近郊にあり、馬車でも一日あれば着きます」
「そんな近くに、問題の領地があるんですね」

 職員さんから二領のある場所を教えて貰ったけど、万が一闇ギルドの拠点だとしたら王都に近いのは大問題だね。
 すると、スラちゃんが触手を上げました。

「スラちゃんが、その領地に飛んでいくって! 直ぐに、転移魔法を使える様にするってよ」
「それは、とってもありがたい、うん? 飛んでいく?」

 リズが言った、スラちゃんが問題の領地まで飛んでいくって一体どういう事?

 ふわっ。

「「「スラちゃん、すごーい!」」」

 って思っていたら、本当にスラちゃんが宙に浮いていた。
 えっ、一体何が起きているんだ?

「これは重力魔法の飛翔ね。恐らくスラちゃんの事だから、上位魔法の高速飛翔まで使えるはずだわ」
「飛翔って、益々スラちゃんがスライムには思えなくなっちゃったよ」

 空間魔法の一種である重力魔法は、僕もプリンもまだ使えないんだよなあ。
 カミラさんの補足を、僕は呆然としながら聞いていました。

 ばしゅーん!

 そしてスラちゃんは地図で大体の位置を確認したら、触手をフリフリして窓から勢い良く飛んで行きました。
 うん、とんでもない速さですね。

「いーなー、リズもお空を飛んでみたいなあ」
「エレノアも飛んでみたいの」

 うん、僕も今回ばかりはリズとエレノアの気持ちが良く分かります。
 というか、またスラちゃんに魔法で負けちゃったよ……
 気を取り直して、再び報告書の確認を進めます。

 ガチャ。

「戻ったぞ。執務室からとんでもない速さの物が飛んでいったらしいが、何か知っているか?」
「おじいちゃん、スラちゃんが問題のありそうな領地に飛んでいっただけよ」
「そうか、なら問題ないな」

 会議が終わったらしく宰相が戻ってきたのだが、カミラさんが簡単に説明したらあっさりと納得していた。
 それで良いのかと思いつつ、宰相は怪しい報告書を手にとっていました。

「ふむ、カスバク子爵と男爵家か。コイツラは贅沢主義で、前から怪しいと思っておったのじゃ」

 既に、宰相にも目をつけられていた所だったのか。
 となると、軍の調査も入っているかもしれないね。

「アレク様、また変なの見つけました」
「サインが全く一緒ですわ」
「報告内容も一緒です」

 今度はサンディとアイビー様とルーシーお姉様が、おかしな報告書を見つけてきました。
 直ぐに皆で確認すると、とってもビックリする事が書かれていました。

「えっ、バイザー子爵家からの報告書?」
「あそこは、辺境伯と国の共同統治になっているはずじゃ」
「でも、前に闇ギルドが拠点としていましたよね……」

 あまり思い出したくないけど、忘れられない闇ギルドとの最初の戦いの事。
 僕は、思わず嫌な記憶を思い出しちゃいました。

「終わったよ!」
「その三つだけですの」
「おお、そうか。ご苦労様」

 結局、怪しい報告書は三領地のみでした。
 でも、思わぬ所から怪しい報告書が見つかったので、急いで対策会議をする事になりました。
しおりを挟む
感想 287

あなたにおすすめの小説

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

こうしてある日、村は滅んだ

東稔 雨紗霧
ファンタジー
地図の上からある村が一夜にして滅んだ。 これは如何にして村が滅ぶに至ったのかを語る話だ。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。