転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ

文字の大きさ
672 / 1,191
第二十八章 エマさんとオリビアさんの結婚

八百六十八話 新人職員と共にスラム街での炊き出し

しおりを挟む
 教皇猊下はこの後教皇国で会議があるそうで、僕は担当者と共にゲートで教皇猊下を送りました。
 そして、午後に炊き出しを予定しているので、カレン様も一緒に手伝ってくれることになりました。
 この炊き出しにはナッシュさんとスタンリーさんも参加して、住民の意見を集める事になっています。
 他にも新人の職員が参加予定で、住民と直に接する良い機会にするそうです。
 ミカエルとブリットは参加するけど、他の子たちは残念ながらお昼寝の時間です。
 昼食を食べて準備ができたところで、目的地のスラム街の教会に移動します。
 カレン様がいることを考えて、道中は王城の軍の待機場に集まってゲートを使って一気に移動します。

「こ、これが双翼の天使様が使うという空間魔法なのか……」
「あっという間にスラム街に着いてしまった。こんなにも凄いものなのか」
「やっぱり、初めて体験する人はそうなっちゃいますよね……」

 ナッシュさんやスタンリーさんを始めとする職員は、いきなり目的地に着いて唖然としちゃいました。
 スラちゃんが自分も長距離転移魔法が出来るよと触手をふりふりとアピールしていたけど、残念ながら新規職員には気づいて貰えなかった。
 因みに、カレン様の護衛としてポニさんたちを辺境伯領から呼び寄せました。
 ポニさんたちはとっても強いし、万が一強盗などが現れても大丈夫です。
 炊き出しと無料治療の準備も完了したので、さっそく始めましょう。

「ふふふ、教皇国で私たちが活躍する前準備が整ったわね」
「張り切らないといけないわね」
「だあ! お前らは、カレン様と新人職員の護衛をしていろ! ここで、大惨事を引き起こすつもりか!」

 いきなり包丁を手にしたレイナさんとカミラさんを、ジンさんが必死の形相で止めています。
 うん、流石にここで破壊王のデス料理を披露するのはマズイと思います。
 僕も二人の背中を押して、カレン様のところに連れて行きました。
 新人職員は何が何だか分からないみたいだけど、僕的には一生知らない方が幸せだって思います。
 その間に、カレン様と従魔のヒカリと共に、リズ、エレノア、ミカエル、ブリットが治療を始めます。

「ミカエルちゃんとブリットちゃんは、随分と治療が上手になりましたね」
「「本当? えへへ!」」

 二人はカレン様に褒められて、かなり上機嫌です。
 僕の目から見ても、二人の治療の腕はグングンと上がっているもんね。
 みんなで手分けして治療をするので、かなり効率よく回っています。
 その間にも、新人職員が治療を受ける人から様々な意見を聞いていました。
 炊き出しの方も、中々良い感じで回っています。
 そんな中、ある意味大活躍している部隊があります。

「ブルル」
「あっ、不審者です!」
「捕まえる」
「うわあ!」

 ブッチーが、治療の列に並んでいた不審者の服を掴んで引っ張ってきました。
 サンディの鑑定によって正体も直ぐにバレて、拘束されて兵に連行されます。
 同じような感じで、ポニさん部隊が大活躍していて、新人職員はポカーンとしていました。
 今日も、ネズミホイホイ作戦は大成功ですね。

「これは、ある意味凄い事をしています。住民サービスを王族や貴族自ら行い、更に様々な意見を王城の職員自ら聞いています。これだけでも、かなりの王都の住民へのサービスになっています」
「尚且つ、聖女様や王女様がいる状況に加えて沢山の人が集まっているので、犯罪者も沢山集まる。集まった犯罪者を、軍と連携して一網打尽にすると。一石二鳥どころではないですね」

 ナッシュさんとスタンリーさんは、この作戦の意図を目の前で実感して貰いました。
 僕としては、そこまで理解してくれただけでも大満足です。
 こうして、三時過ぎには無事に炊き出しと無料治療が完了しました。
 僕たちは王城に戻って、新人職員は会議室に集まって住民からの意見を集約し始めました。
 会議室には僕とジンさんもいて、カレン様とリズたちは宰相執務室で休んでもらってます。

「おっ、やっているな」
「「「へ、陛下!」」」

 と、ここで陛下が会議室に入ってきました。
 新人職員が一生懸命意見を纏めているのを、関心したように見ていました。

「今日の炊き出しは、王城にいるだけでは見ることのできない住民の生の意見を聞けたはずだ。我々の仕事の先には、常に王国の国民がいる事を忘れてはならぬぞ」
「「「はい!」」」

 陛下は新人職員の元気の良い返答を聞いて、満足そうにして会議室を後にしました。
 書類ばっかりに目がいく、頭でっかちな職員になって欲しくないのもありそうです。
 つい最近、自分の意見が通らなくて上司を殴った職員がいるもんね。
 今日炊き出しに参加した新人職員は、馬鹿な職員にはならないキラキラした目を持っていました。
 多くの不審者を捕まえたし、今日の炊き出しも大成功ですね。
しおりを挟む
感想 287

あなたにおすすめの小説

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。