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第十四章 公国

第二百八十八話 魔物あふれの予兆

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 公国に行くにあたって、出発前に解決しないといけない事。
 それは、先日の市街地での二週間に渡る奴らとの戦いで消費された薬草の補充。
 特に燻す為の薬草が品薄なので、ある程度取らないといけない。
 しかし俺とレイアにビアンカ殿下は仕事が忙しいし、市内の巡回の手も緩められない。
 勿論、公国から避難しているジュリエット様とリディア様の警備もある。
 じゃあ誰が薬草を取るのということになったら、うちに実習できたメンバーが対応してくれる事になった。
 更に、巡回に参加しない入園希望者の面々も参加する。
 念の為にタラちゃんとポチとスラタロウにホワイトが付き添いで出ているが、人間ではなく従魔が付き添いってのも凄い。
 スラタロウとホワイトがいれば大丈夫だろう。

「「「行ってきます!」」」

 元気よく挨拶をする薬草取りの一行を見送りつつ、俺達はそれぞれ仕事に向かった。

「確か薬草を取るのは今日だよな?」
「はい。ギルドや関連する部局には、予め伝えてあります」
「バッチリ」
「そうか。でも、スラタロウがいるからこの前の量を取ることもあり得るな」
「今回は量に制限がありませんので、かなりの量になる可能性があります」

 そんなことを宰相とかと話をしていたが、ポーションとかも在庫が少ないので薬草は沢山あってもいい。  
 そんな事を話ししていたら、軍務卿とエステルが部屋に入ってきた。
 軍務卿の手に、何やら魔道具を持っている。
 おや? だいぶ前に見た記憶がある魔道具だな。

「今日巡回中に、スラム街でこの魔道具が置かれていたのを見つけたの」
「こいつは、特定の動物や魔物を呼び寄せる魔道具だ。今回は、忌々しい奴らを誘き寄せる様になっていた」

 そうだ!
 バルガス様やビアンカ殿下と初めてあった際に、馬車についていた魔道具とそっくりだ。
 それを見てか、ビアンカ殿下も苦々しい表情になっている。
 あれ?
 ということはもしかして。

「少し前の奴らとの戦いは、人為的に起こされた可能性があると」
「その可能性が高いのう。あの時に、ビンドン家の屋敷にいた奴らがそこまで大量発生するとは思わない」
「しかもこの魔道具は王城にしかなく、しかも厳重に管理されているのを確認してきた」
「人神教国が犯人」
「間違いないないじゃろう。貴族主義の連中は壊滅した後じゃ。選択肢がない」

 皆、ため息しか出てこない。
 マイケルとナンシーが王妃様達に土下座していたときにも、王妃様は沢山の奴らが現れた事を不審に思っていた。
 この魔道具があれば、全て合致する。

「宰相、ビアンカ殿下。帝国にも伝えた方がいいですね」
「そうだな。これは急いだほうがいい」
「しかし、人神教国の奴らも手が荒くなってきたのう」

 宰相が部下に急ぎ指示を出した。
 更に、各都市にも警戒するように通達が出された。

「もし、帝国にも同じ魔道具があるとなると、人神教国は公国に手を出されないようにこちらの足止めを画策している可能性があります」
「結果次第だが、その可能性は高い」
「更に、何かを仕掛けてくる可能性はあるな」

 そう言い残し、軍務卿とエステルは部屋を出た。
 軍による巡回も強化されるという。
 うちの巡回部隊との二重の目で、より一層細かく見るようにする。
 そう思っていたら、想定外の所から情報が入ってきた。

「宰相、ギルドから今日の薬草取りの経過が入ってきました。どうもいつもに比べて魔物が多くて、前回よりも少な目だと言う事です。それでも十分な量が取れていますが」
「怪しい」
「確かに怪しい。討伐した魔物の種類を調査させよう」
「もしかして、ギース伯爵領で起きた魔物あふれの再来ですか?」
「奴らには前科がある。不審におもったら、調査させよう」
「巡回部隊も外を警戒すべき」
「そうだな。そろそろお昼ごはんでうちに帰ってくる頃だから、皆に伝えてこよう」

 スラタロウとホワイトがいるから、多少の敵は問題ない。
 だけど、大量に発生したら厄介だ。

「お兄ちゃん、街の外が騒がしいよ」

 お昼に帰ってきたミケが、異変を感じて俺に訴えてきた。
 ミケ達の感覚でも、異常を感じている。
 どうも、沢山の気配を感じているらしい。
 と、ここでスラタロウが、薬草取りをしているメンバーを連れてワープしてきた。
 
「サトーさん、森の中が魔物だらけです。普段現れない魔物も沢山出ています」
「つい先日森に行きましたが、明らかにおかしいです」

 エスメさん達が、口々に森の異常を訴えている。
 念の為に、魔物の種類を聞いておこう。

「遭遇した魔物は、どんな特徴があった?」
「ウルフ系の、足の速いものが多かったです」
「その他も、動きの早い魔物が多かったですね」

 これはもう確定だろう。
 魔物のあふれは、先に足の速いものから現れる。
 他の人達も、俺の考えに気がついた様だ。

「恐らく魔物のあふれを人為的に起こしているやつがいる。直ぐに動けるように準備を。ドラコ達を除いた入園希望者はうちに待機。エスメ達は、別途学園から指示が出るかもしれないので、学園に向かおう」
「間違いなく陽動を仕掛けてくる。ミケとドラコ達とドリーは街中を警戒だ。馬も一頭出させよう」
「空から魔物がくる可能性もある。ララとリリとバハムートも、いつでも動けるようにしよう」
「子ども達とジュリエット様にリディア様は、地下室に避難を」

 俺はそう言い残し、後をエステルとリンに任せて王城に向かった。
 王城にも情報が入ったのか、慌ただしく動いていた。

「サトーか、そちらの準備はどうだ?」
「陛下、こちらは直ぐに動けるように指示してきました。街中にも馬とかを出させます」
「そうか、それならよい。全く、こんな事を仕掛けてくるとはな」

 陛下も憤慨しているが、本当に大迷惑だ。
 そして、閣僚も集まり大会議を本部にして会議が始まった。

「城外北東にある森で異常が確認されています。既に北と東の門は閉めております」
「南西にある森でも、異常が確認されています。こちらも現在門の閉鎖作業中です」
「市内に警報を流しました。騎士の巡回も強化しています」

 次々と軍から情報がもたらされる。
 既に足の早い魔物が、守備兵と交戦しているらしい。

「うちのメンバーを各門につけましょう。北門には、エステルとショコラにマリリさんとタコヤキ。西門には、リンとポチにマルクとスラタロウ。南門には、オリガとサファイアにガルフとタラちゃん。東門にはフローレンスとシルクとフウにクロエで。シルとリーフは、軍につけます」
「どの門も、バランスの取れた構成だな」
「街中は、ミケとドラコとシラユキとルシアにドリーにベリルとチッチ。馬も一頭だします。ララとリリはバハムートに乗るホワイトと共に、上空の警戒にあたります」
「それで、残りのメンバーと馬で、ジュリエット公女とリディア公女を守る訳か。サトーの屋敷は要塞並だから、先ず落ちることはないだろうな」
「俺は、市内に魔物が出たら向かう予定です。レイアも同じだな」
「頑張る」
「では、妾も魔物が出たら対応するかのう」
「こちらの指揮が落ちるから、できれば出ないでほしいものだ」
「父上、それは無理な話じゃ」

 陛下とビアンカ殿下の話はさておき、俺はお屋敷にワープした。

「このようなメンバー構成で戦うことになる。アメリア達にお屋敷の防衛を任せるので、十分に気をつけて」
「了解だよ! 悪者はやっつけるよ!」

 こうしてメンバーの割り振りをした後、俺は再び王城に向かった。
 王城に戻った所、北門で魔物の群れと戦闘が開始したと連絡が入った。
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