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第十八章 結婚式の話
第三百六十五話 レポートが終わらない
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それは一月末の寒い日の事。
夕食の際に、チナさんが言った一言から始まった。
「あ、エステル様。まだレポートが提出されていないので、早目に出して下さいって言われています」
食堂にいた全員の視線がエステルに集中した。
何だかエステルが汗をダラダラとかいているぞ。
「リン、レポートって何か知っている?」
「実習先の報告をするレポートです。最終学年の私達は、学校にいかない代わりにレポート提出が義務付けられています」
「えっ、それって大事なものでは」
「提出期間はあと一週間ありますが、殆どの学生は昨年の内に提出しています。私もフローレンスも提出済みです」
ふむ、いわゆる卒業課題みたいなものか。
そして、殆どの人が提出しているらしいが、目の前のエステルは滝のような汗を流している。
「エステル、正直に言いなさい」
「わ、忘れていた……」
「どのくらいの量だ?」
「所定の用紙を十枚……」
「なんだ、簡単じゃないか。俺なんて、毎日山のような書類をこなしているぞ」
「文字書くの苦手……」
しかし、文書処理が苦手なエステルにとって、これは非常に大きな壁らしい。
「エステル、暫くレポートに専念しなさい。ショコラとホワイトを監視につける。もし、進展が悪いようだったらフローラ様に言っていいぞ」
「ちょっと! ショコラもホワイトもワープ使えるじゃん。あっという間にお母さん呼んじゃうよ!」
「でなければ、さっさと終わらせなさい」
「うう……」
流石に観念したようで、エステルもキッチリとやるようにした様だ。
「マシュー君も、エステルがサボっていたら怒って良いよ」
「「「うん、分かった!」」」
ここは遊び相手になっているマシュー君にも言っておこう。
こうしておけば大丈夫なはずだ。
「エステル、食後から早速やるよ」
「明日からじゃないの?」
「このおバカ。わざわざこんなアホな事を伝えに来たチナさんの事も考えなさい!」
こうして俺達は、エステルのレポート課題提出に向けて一丸となって動き始めた。
「……うがあ……」
「「「はあ」」」
しかしながら、成果は芳しくない。
最近のエステルは脳をフル回転させている為か、たまにゾンビみたいになっている。
途中からリンとフローレンスもついてレポートを書いているが、絶望的な語彙力らしい。
「どうも、直感で書く文章は素晴らしいのですが、きちんとした形式で文章を書くのは苦手みたいです」
「それでも、あと二枚ですので何とか終わるかと」
だいぶ苦戦しながらも、何とか形にしている様だ。
どれ、一回様子を見に行くか。
リンとフローレンスと共に、エステルの部屋に行った。
「ブツブツブツブツ」
「一応、真面目にやっているんだな」
エステルは真面目に机に向かってレポートを書いていた。
頭から煙が出そうな感じだが、何とか踏みとどまっている。
「あの手紙がかなり効果でていますね」
「私でもやる気になりますよ」
リンとフローレンスが言っているのは、エステルの机の上に置かれた一枚の手紙。
マシュー君達が頑張れって書いてエステルにプレゼントしたという。
これがかなり効果があったのか、真面目に取り組む原動力になっていた。
俺は、リンとフローレンスに後を任せて部屋を出た。
次の日には何とかレポートも終わり、俺が仕事で帰ってくる前には提出も終わったという。
「でも、何でフローラ様がうちにいるの?」
「どうやらレポートを学園に届けている最中に、王城にまだレポートが提出されていないと連絡が行った様です」
「また、タイミングの悪い……」
物凄く良いタイミングで王城に連絡が行った結果、レポートを提出して地獄から抜け出したはずのエステルは、フローラ様によって再び地獄に落とされた様だ。
「あなたはいつも宿題を後回しにして。それでギリギリまで徹夜していたじゃないですか。今回なんて、チナさんが教えてくれなければ、留年の可能性もあったのよ」
「ごめんなさーい」
しかしエステルが謝ってもフローラ様の怒りがおさまるわけもなく、エステルは王城にドナドナされた。
それでも、また同じ事を繰り返すのだろうと、一度思いは一緒だった。
ちなみにマシュー君達の手紙は、額に飾られてエステルの部屋に飾られる事になった。
夕食の際に、チナさんが言った一言から始まった。
「あ、エステル様。まだレポートが提出されていないので、早目に出して下さいって言われています」
食堂にいた全員の視線がエステルに集中した。
何だかエステルが汗をダラダラとかいているぞ。
「リン、レポートって何か知っている?」
「実習先の報告をするレポートです。最終学年の私達は、学校にいかない代わりにレポート提出が義務付けられています」
「えっ、それって大事なものでは」
「提出期間はあと一週間ありますが、殆どの学生は昨年の内に提出しています。私もフローレンスも提出済みです」
ふむ、いわゆる卒業課題みたいなものか。
そして、殆どの人が提出しているらしいが、目の前のエステルは滝のような汗を流している。
「エステル、正直に言いなさい」
「わ、忘れていた……」
「どのくらいの量だ?」
「所定の用紙を十枚……」
「なんだ、簡単じゃないか。俺なんて、毎日山のような書類をこなしているぞ」
「文字書くの苦手……」
しかし、文書処理が苦手なエステルにとって、これは非常に大きな壁らしい。
「エステル、暫くレポートに専念しなさい。ショコラとホワイトを監視につける。もし、進展が悪いようだったらフローラ様に言っていいぞ」
「ちょっと! ショコラもホワイトもワープ使えるじゃん。あっという間にお母さん呼んじゃうよ!」
「でなければ、さっさと終わらせなさい」
「うう……」
流石に観念したようで、エステルもキッチリとやるようにした様だ。
「マシュー君も、エステルがサボっていたら怒って良いよ」
「「「うん、分かった!」」」
ここは遊び相手になっているマシュー君にも言っておこう。
こうしておけば大丈夫なはずだ。
「エステル、食後から早速やるよ」
「明日からじゃないの?」
「このおバカ。わざわざこんなアホな事を伝えに来たチナさんの事も考えなさい!」
こうして俺達は、エステルのレポート課題提出に向けて一丸となって動き始めた。
「……うがあ……」
「「「はあ」」」
しかしながら、成果は芳しくない。
最近のエステルは脳をフル回転させている為か、たまにゾンビみたいになっている。
途中からリンとフローレンスもついてレポートを書いているが、絶望的な語彙力らしい。
「どうも、直感で書く文章は素晴らしいのですが、きちんとした形式で文章を書くのは苦手みたいです」
「それでも、あと二枚ですので何とか終わるかと」
だいぶ苦戦しながらも、何とか形にしている様だ。
どれ、一回様子を見に行くか。
リンとフローレンスと共に、エステルの部屋に行った。
「ブツブツブツブツ」
「一応、真面目にやっているんだな」
エステルは真面目に机に向かってレポートを書いていた。
頭から煙が出そうな感じだが、何とか踏みとどまっている。
「あの手紙がかなり効果でていますね」
「私でもやる気になりますよ」
リンとフローレンスが言っているのは、エステルの机の上に置かれた一枚の手紙。
マシュー君達が頑張れって書いてエステルにプレゼントしたという。
これがかなり効果があったのか、真面目に取り組む原動力になっていた。
俺は、リンとフローレンスに後を任せて部屋を出た。
次の日には何とかレポートも終わり、俺が仕事で帰ってくる前には提出も終わったという。
「でも、何でフローラ様がうちにいるの?」
「どうやらレポートを学園に届けている最中に、王城にまだレポートが提出されていないと連絡が行った様です」
「また、タイミングの悪い……」
物凄く良いタイミングで王城に連絡が行った結果、レポートを提出して地獄から抜け出したはずのエステルは、フローラ様によって再び地獄に落とされた様だ。
「あなたはいつも宿題を後回しにして。それでギリギリまで徹夜していたじゃないですか。今回なんて、チナさんが教えてくれなければ、留年の可能性もあったのよ」
「ごめんなさーい」
しかしエステルが謝ってもフローラ様の怒りがおさまるわけもなく、エステルは王城にドナドナされた。
それでも、また同じ事を繰り返すのだろうと、一度思いは一緒だった。
ちなみにマシュー君達の手紙は、額に飾られてエステルの部屋に飾られる事になった。
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