格闘系治癒師の異世界冒険者録

藤なごみ

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第一章 新人冒険者

第三話 新しい体

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 全く分からない事ばかりだけど、私がどうすればいいかという情報が出てきた。
 なら、まずはその情報を確認しないとならない。

「私が行く世界について、もう少し詳しく教えて下さい」
「それはもちろんです。イメージとしては、マイさんの世界で言う近代ヨーロッパに近い時代構成をしています。王族貴族と平民が暮らす封建的な世界で、階級社会も存在します」
「えっと、それって伯爵とか子爵という階級が存在している認識で良いですか?」
「国によって制度は違いますが、概ねその様に思って頂けたらと」

 いきなり覇権を争う様な戦乱の世に送り込まれる事は回避されたみたいだ。
 でも、何だかこの展開ってどこかで聞いた様な気がするぞ。

「人々は様々な職業に就いて、日々働いています。未開の地があったり危険な動物や魔物などがいますが、まだ軍や警察組織が発展していません。その為に冒険者という、一種の傭兵的な存在があります」
「自分の身一つで、様々な依頼を受けて報酬を貰う仕事ですね。高校の時の授業で、ちらっと似たような話を聞きました」

 確か日本でも、特に戦国時代に傭兵みたいな職業があったって聞いた様な。
 とはいえ、文明が全く無い原始的な状況ではなさそうだ。

「マイさんが住んでいた世界との一番の違いは、魔法という異次元な力が存在していることです。魔法はその世界の人全てが使える訳ではなく、千人に一人程の割合です。また、科学が発達していない代わりに魔導具でという魔力を込めた道具で生活を支えています」
「魔法、まるでゲームみたいな力が存在していますね」
「確かに、マイさんの世界でいうゲームの世界をイメージしてくれれば良いかと。そして、マイさんには聖属性という魔法の適性がある事も分かりました」

 あっ、ここまで話を聞いて分かった。
 居酒屋のバイト仲間に借りた、異世界転生物の本の内容にかなり近い。
 そんな世界に行くことが確定しているんだ。
 しかも魔法の適性があっても、流石にどう使えば良いか分からない。
 うーん、不安はまだまだ大きいや。

「マイさん、マイさんが行かれる世界について少しは理解できましたか?」
「何となくは。全ては理解できませんが……」
「そうですね。ただ言葉だけでは想像がつきませんね。でも、悪い世界ではないといえましょう」

 悪い世界ではない、裏を返せば元々住んでいた世界よりも良い世界ではないとも言える。
 特に、安全面では元いた世界とはまるで違うだろう。
 私は武道を習っているとはいえ、一人の女性だ。
 もしもの事を考えると、どうしても不安になってしまう。
 すると、女性は何かを思い出した様な表情に変わった。

「あっ、もう一つマイさんに伝えなければならない事がありました。実はマイさんのデータを一部バックアップしてリカバリーした際に、元々のデリート対象の物も含まれていました。リカバリー結果、全く違う姿に生まれ変わりました」

 シューイン、ぽよん。
 ぽよん、ぽよん。

「わっ、わわ。こ、これはもしかしてスライム?」

 テーブルの上が一瞬光ると、そこには透き通った緑色のふよふよとした生物が存在していた。
 お茶の湯呑みにも余裕で入ってしまう程に小さな生物は、小さなつぶらな瞳で私を見上げた後にぴょんと私の肩に飛び乗った。

「そうです。マイさんが行く世界にも存在している生物になります。マイさんのデータと共にリカバリーされたので、いわばマイさんのパートナーみたいな存在です。因みに、このスライムは風属性の魔法が使えます」
「へえ、中々の存在なんですね。へっ、わっ、わわ!」

 ぴかー!

 女性の話を聞きながらスライムを指でちょんちょんと突っついていると、今度は私が謎の光に包まれた。
 光は一瞬で止んだのだが、何故か私の目の前に座る女性との視線が変わっていた。

「ふう、あの光は何だったんだ? あれ、視線が変わっている? って、何だこれ!」
「マイさんの体の再合成が完了したみたいですね」

 さっきまで私は二十一歳の女性だったはずなのに、そこそこ高かった身長は縮んでしまいスレンダーだった体もぺったんこになってしまった。
 まるで、中学生の頃に戻った様な……
 幸いにして服は体に合った物に変わっていたので、服のサイズが合わなくて脱げちゃうって事はなかった。

「マイさんは二十一歳でしたが、体を再合成した結果十二歳となりました。不十分なデータでは、ここまでが限界でした」
「つまりは、再合成が終わるまでしか元の姿でいられなかったんですね」
「申し訳ありません。この姿のままではなくキチンと成長しますので、そこはご安心を」

 ははは……
 なんだろう、小さい頃の姿になってしまったのが一番ダメージ大きいかも。
 私の胸って、ここまでぺったんこだったんだ……
 この虚しさは、成長していたからこそ分かる。

「必要な物は、腰につけている魔法袋に入っています。マイさんとスライムにしか取り出せないので、防犯上は問題ないありません」
「はい、はい……」
「まずは冒険者として生計を立てて、お金を得てから他の職業に就いた方が良いでしょう。初心者冒険者が過ごしやすい街の付近に転移する事になっています」
「分かりました……」

 色々な事のショックから、女性の話をキチンと聞けてなかったかもしれない。
 でも、私の肩に乗っているスライムが馬締に話を聞いているので、多分大丈夫でしょう。

 ぴかー。

 再び私の周囲が光りだすと、女性は席から立ち上がって私に頭を下げました。

「マイさん、本当にご迷惑をおかけしました。そろそろお時間の様です。マイさんの未来が、幸多い事を心から願っております」

 シュイーン!

 そして、目が開けられない程の眩しい光に私は包まれました。
 でも、眩しい光の向こうで今までずっと申し訳無さそうな顔をしていた女性が私に向けてニコリとしたのを見て、少しホッとしました。
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