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仙界にて
9 高橋舞衣 …アイドル引退…
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私の前を歩いている、巫女さんのような、綺麗な女性は何者?
何で私、こんなところに来ちゃったんだろう。
そう、あれは昨日のこと……。
私は高橋舞衣。アイドルグループ「隅田川乙女組」に所属していました。
五十人いるメンバーの中で、一応、楽曲パフォーマンスのセンターポジションを続けて務め、ちょっと恥ずかしいですが、「絶対エース」などと呼ばれていました。
でも、私は二期生の十人の内の一人。メンバー五十人の内の三十人は、創立時からの一期生(後の十人は三期生)で、先輩です。
結成一年後に私たち二期生が入ったのですが、後で入ってきた私がセンターを攫って行き、その後も続いて毎回…。これでは先輩たちは、面白いはずがありません。私よりも遥かに歌唱力が上の人もいますし…。
ずっと冷たい目で見られ、とげのある言葉を投げかけられていました。
私はそんなつもりはないのに、先輩を見下しているとか、お調子に乗ってるとか、生意気だとか。挙句はプロデューサーと寝たんだろうって、それは酷い!
女の世界って嫌い。何で足の引っ張り合いのようなことばかりするのかしら?
ショッチュウある嫌がらせも、だんだんエスカレート。
私の衣装にジュースをかけられていたり、ロッカーの中に使用後のナプキンを何枚も放り込まれたり。下着姿の盗撮画像を流されたり…。
そして決定的な出来事が。
大きな会場で、楽しみにしていたコンサート。
満員のお客様の前。
私は歌の途中、急にお腹が痛くなり、ついに我慢できなくなって粗相を…。
立ち込める異臭。白い衣装が茶色く染みる。
曲の途中で抜け出し、私は化粧室に飛び込みました。
コンサートは、まだ続く。でもお腹が…。出られない。
何でこんなことに!
そういえば、始まる前、後輩の細田美月に飲み物もらって…。
あの中に下剤が? そんな馬鹿な。
怖がって一期生に逆らわない三期生の中で、彼女は唯一、私を慕ってくれていた存在のはず…。
コンサート大丈夫かな。もうそろそろ、終わった時間。
私どうしよう? 恥ずかしくてみんなの前に出られない。
あ、誰かトイレに入ってくる。
「舞衣のやつ、最低! どこ行っちゃったの。冬木プロデューサー、カンカンよ」
「そうよね。途中でセンターがいなくなるなんて! お客さんざわついちゃって、大変!」
あの声は、私をいじめる中心的存在、一期生の黒崎里奈と橋本あゆみ。
「全くですよ。舞台で漏らすなんて。臭いし、やってらんないって感じです」
あれは、同期で、黒崎の子分的立場に収まっている北野照子。
「そうですよね~。私、これからもお二人に付いて行きます。よろしくお願い致します」
こ、この声は、細田美月!
うそ? な、なんで? あいつらのスパイだったの?
そんな、信じていたのに!
扉が閉まる音。四人は出て行ったみたい。
そして、すぐに、
「舞衣さん! います? 大丈夫ですか? 冬木プロデューサーが探してますよ」
この声は、三期生の遠藤スミレ。
「ごめん。着替え持ってきてもらえないかな…」
届けてもらった着替えを着てプロデューサーのところへ。
私は、冬木プロデューサーに頭を下げました。
「もう私ダメです。大勢の観客の前で漏らしちゃうなんて。みんなにも顔向けできない」
「体調悪い時は誰にでもあるよ。思いつめないで。お婆様のこともあったばかりだから」
私の両親は幼いころに交通事故で無くなっていて、祖母に育てられました。
唯一の肉親で、私の活躍を喜んでくれていた祖母。
その祖母も一カ月前に亡くなってしまいました。
お祖母ちゃんに顔向けできない…。
涙がこみ上げる。
「今日は帰って休みなさい」
プロデューサーは、あまり問い詰めず、タクシーを手配してくれました。
私は一人、マンションへ帰り、眠れない夜を過ごしました。
信じてたのに、美月まで! 許せない!
周りは皆、敵ばかり…。
もう…、無理…。
・・・私、やめる。
決心した私は、自筆の引退宣言をファックスでマスコミに送信することにしました。
まあ、プロデューサーに、これ以上迷惑かけられないし、グループ内のドロドロは書かないでおこう。
今日をもって引退。今までのお礼と、お詫び。理由は、心労が重なって体調不良とでもしておこうかな。
プロデューサーには電話でと思って架けましたが、朝早いので留守番電話でした。
「舞衣です。昨日は本当に申し訳ありませんでした。色々考えたのですが、やはり、私はもう続けられません。突然で申し訳ありませんが、引退させて頂きます。マスコミ各社にも通知してしまいました。お世話になり、有難うございました。そして、勝手なことしてごめんなさい。
これから、お祖母ちゃんのところへ行きます。後はしばらく一人になりたいかなって思っています」
そうして、祖母の家のあった長野県下伊那郡阿智村へ。
帽子とサングラスで顔を隠し、電車とバスを乗り継いで約六時間…。
お墓参りし、祖母の住んでいた家に来ました。
この家の現在の持ち主は、一応、私。住む気は無かったけれど、ここに暫く居ようかな。
あ、でもプロデューサーに、お祖母ちゃんのところへ行くって留守電入れちゃったから、探しに来ちゃうかな?
あ、しまった。あれじゃあ、自殺するのかと誤解しちゃうかな? お墓参りするだけのつもりだったけど…。
そんなことを考えて、ボーっとしていると不意に白い光に包まれて……。
何で私、こんなところに来ちゃったんだろう。
そう、あれは昨日のこと……。
私は高橋舞衣。アイドルグループ「隅田川乙女組」に所属していました。
五十人いるメンバーの中で、一応、楽曲パフォーマンスのセンターポジションを続けて務め、ちょっと恥ずかしいですが、「絶対エース」などと呼ばれていました。
でも、私は二期生の十人の内の一人。メンバー五十人の内の三十人は、創立時からの一期生(後の十人は三期生)で、先輩です。
結成一年後に私たち二期生が入ったのですが、後で入ってきた私がセンターを攫って行き、その後も続いて毎回…。これでは先輩たちは、面白いはずがありません。私よりも遥かに歌唱力が上の人もいますし…。
ずっと冷たい目で見られ、とげのある言葉を投げかけられていました。
私はそんなつもりはないのに、先輩を見下しているとか、お調子に乗ってるとか、生意気だとか。挙句はプロデューサーと寝たんだろうって、それは酷い!
女の世界って嫌い。何で足の引っ張り合いのようなことばかりするのかしら?
ショッチュウある嫌がらせも、だんだんエスカレート。
私の衣装にジュースをかけられていたり、ロッカーの中に使用後のナプキンを何枚も放り込まれたり。下着姿の盗撮画像を流されたり…。
そして決定的な出来事が。
大きな会場で、楽しみにしていたコンサート。
満員のお客様の前。
私は歌の途中、急にお腹が痛くなり、ついに我慢できなくなって粗相を…。
立ち込める異臭。白い衣装が茶色く染みる。
曲の途中で抜け出し、私は化粧室に飛び込みました。
コンサートは、まだ続く。でもお腹が…。出られない。
何でこんなことに!
そういえば、始まる前、後輩の細田美月に飲み物もらって…。
あの中に下剤が? そんな馬鹿な。
怖がって一期生に逆らわない三期生の中で、彼女は唯一、私を慕ってくれていた存在のはず…。
コンサート大丈夫かな。もうそろそろ、終わった時間。
私どうしよう? 恥ずかしくてみんなの前に出られない。
あ、誰かトイレに入ってくる。
「舞衣のやつ、最低! どこ行っちゃったの。冬木プロデューサー、カンカンよ」
「そうよね。途中でセンターがいなくなるなんて! お客さんざわついちゃって、大変!」
あの声は、私をいじめる中心的存在、一期生の黒崎里奈と橋本あゆみ。
「全くですよ。舞台で漏らすなんて。臭いし、やってらんないって感じです」
あれは、同期で、黒崎の子分的立場に収まっている北野照子。
「そうですよね~。私、これからもお二人に付いて行きます。よろしくお願い致します」
こ、この声は、細田美月!
うそ? な、なんで? あいつらのスパイだったの?
そんな、信じていたのに!
扉が閉まる音。四人は出て行ったみたい。
そして、すぐに、
「舞衣さん! います? 大丈夫ですか? 冬木プロデューサーが探してますよ」
この声は、三期生の遠藤スミレ。
「ごめん。着替え持ってきてもらえないかな…」
届けてもらった着替えを着てプロデューサーのところへ。
私は、冬木プロデューサーに頭を下げました。
「もう私ダメです。大勢の観客の前で漏らしちゃうなんて。みんなにも顔向けできない」
「体調悪い時は誰にでもあるよ。思いつめないで。お婆様のこともあったばかりだから」
私の両親は幼いころに交通事故で無くなっていて、祖母に育てられました。
唯一の肉親で、私の活躍を喜んでくれていた祖母。
その祖母も一カ月前に亡くなってしまいました。
お祖母ちゃんに顔向けできない…。
涙がこみ上げる。
「今日は帰って休みなさい」
プロデューサーは、あまり問い詰めず、タクシーを手配してくれました。
私は一人、マンションへ帰り、眠れない夜を過ごしました。
信じてたのに、美月まで! 許せない!
周りは皆、敵ばかり…。
もう…、無理…。
・・・私、やめる。
決心した私は、自筆の引退宣言をファックスでマスコミに送信することにしました。
まあ、プロデューサーに、これ以上迷惑かけられないし、グループ内のドロドロは書かないでおこう。
今日をもって引退。今までのお礼と、お詫び。理由は、心労が重なって体調不良とでもしておこうかな。
プロデューサーには電話でと思って架けましたが、朝早いので留守番電話でした。
「舞衣です。昨日は本当に申し訳ありませんでした。色々考えたのですが、やはり、私はもう続けられません。突然で申し訳ありませんが、引退させて頂きます。マスコミ各社にも通知してしまいました。お世話になり、有難うございました。そして、勝手なことしてごめんなさい。
これから、お祖母ちゃんのところへ行きます。後はしばらく一人になりたいかなって思っています」
そうして、祖母の家のあった長野県下伊那郡阿智村へ。
帽子とサングラスで顔を隠し、電車とバスを乗り継いで約六時間…。
お墓参りし、祖母の住んでいた家に来ました。
この家の現在の持ち主は、一応、私。住む気は無かったけれど、ここに暫く居ようかな。
あ、でもプロデューサーに、お祖母ちゃんのところへ行くって留守電入れちゃったから、探しに来ちゃうかな?
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