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帰還、そして出産
71 美月来訪2
しおりを挟む「ものすごい、お屋敷ですよね。お城かと思っちゃいましたよ」
美月は、キョロキョロと部屋の中を見渡している。石垣があって立派な門がある屋敷。一段高い水屋は、天守閣のよう。田に水が入ると堀のようで、まさに小さな城だ。
「すごいでしょう。私も初めて来たときは驚いたのよ」
沙織も入ってきた。その後ろには、お茶と茶菓子を運んでくる杏奈と環奈。
「え~と、あなたは確か、向こうの世界で会った…」
「はい。お目にかかるのは二度目です。山本沙織と申します。四号さんと呼ばれております」
「よ、四号さん…?」
丁寧にお辞儀する沙織に慌てて頭を下げつつ、美月は怪訝な顔。無論だ。まだ美月には、詳しい説明をしていない。
舞衣は、自分で四号と名乗った沙織に少し意外感を覚えた。四号さんと呼ばれるのを嫌がっていると思っていたからだ。
もちろん沙織は、そう呼ばれるのを恥ずかしいと思っている。しかし、これから仲間になる美月に、自分の立場をハッキリさせておきたかったのだ。
「今、お茶を出したのが杏奈で五号さん、こちらが環奈で六号さん。舞衣さんが正妻ですので、私たちの姓は山本のままです。呼ぶときは名前でお願いします。
特に、杏奈と環奈は中学生ですので、五号さん・六号さんという呼び方は、人前では絶対禁句です」
美月は口を開けたまま、沙織の言葉を聞いていた。
が、クイッと舞衣に視線を修正…。
「舞衣さん、結婚したって言いましたね」
「はい、言いました」
「結婚・・・したんですよね」
「しました。入籍も済んでます」
「電話で言っていた、共同生活って…」
「この通りです」
「新婚さんなのに、二号さんどころか六号さんまで…」
「え~と、どう説明すればいいかな……」
美月の鋭い視線に舞衣はたじろぎ、言い淀んでしまった。
「私から説明させてもらいます」
やれやれと、仕方なさげに沙織が引き取る。
いつもなら、こういう役割は恵美が買って出る。しかし、恵美は神社の方に居る。
また、舞衣が説明するより、一応常識人の沙織が、この非常識の説明をした方が説得力ありそうだ。舞衣もある意味、常識を超越した存在なのだ。
ということで、沙織が順を追って話す。
こちらに戻ってからの自分たちのこと。身籠っている神子のこと。神子を無事に産むために、ここで共同生活をしていること。そして最後は、恵美とは違って恥ずかし気に言いよどみながら、毎夜の営みのことも…。
「毎晩…。六人と……。ま、舞衣さん」
「はい、なんでしょう?」
「前にも同じこと聞きました…。正気ですか?」
「正気です」
「本当に?」
「本当に」
「マジですか?」
「マジです」
「私にも、加われと?」
舞衣は大きく頷いた。
「………。分かりました。お世話になります」
・・・・。
沙織は、奇妙な二人の掛け合いと美月の結論を聞き、安心しながらも呆れた。
(あれで、納得できちゃうんだ……)
「そうだ、美月。私、ニュース見てなかったから、電話した後で知ったんだけど……」
舞衣は、美月の暴露で所属していた隅田川乙女組が解散になってしまった話題に触れた。
「みんな自業自得です。足の引っ張り合いしか出来ないような世界は、絶対間違っています。舞衣さんは被害者なんですから、気に病むことないですよ」
「ありがとう、美月。いっぱい無理させちゃったよね。ゴメンね」
「も~う、舞衣さん、この間から謝ってばかりですよう!」
「ゴメン」
「ほら、また!」
二人の温かい雰囲気に、沙織も、杏奈も環奈も、良い仲間が出来そうだと微笑んだ。
「で、美月。今日から一緒にいられる?」
「あ、今日は大丈夫なんですけど。明日はちょっと…」
「明日って…。あ、そうだ。美月の誕生日だ…」
「そうなんです。で、両親に、誕生会するから帰って来いと言われてまして。
色々ニュースにもなっちゃったし、まだ何も報告してないから、きちんと話に来なさいってことなんでしょうね…」
「そっか。それはしょうがないわね。あ、じゃあ、今日はここでも、一日早い美月の誕生会ね」
「そうですね。歓迎会も兼ねまして。早速、祥子さんに料理をお願いしないと」
沙織も同調して、ニッコリ笑った。が、美月としては、来ていきなりそんなこと、申し訳なさ過ぎる。
「舞衣さん、そんな、いいですよう。何もいりません!」
「ダメよ! 美月は、ここでゆっくりしていて! 私、祥子さんと交代してくるから。沙織さん、あと、お願い!」
「分かりました」
舞衣は慌てて神社へ走っていってしまった。
呆気にとられながら見ているしかない美月に、沙織が笑い乍ら言う。
「いつも、こんな感じで、みんな仲良くしているんですよ。舞衣さんは正妻なんだから、もっと偉そうにしても良いのに、全くそういう素振り見せないんだから…」
(なるほど、舞衣さんらしい…)
美月も嬉しそうに頷いた。
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