月の影に隠れしモノは

しんいち

文字の大きさ
71 / 167
帰還、そして出産

71 美月来訪2

しおりを挟む

「ものすごい、お屋敷ですよね。お城かと思っちゃいましたよ」

 美月は、キョロキョロと部屋の中を見渡している。石垣があって立派な門がある屋敷。一段高い水屋は、天守閣のよう。田に水が入ると堀のようで、まさに小さな城だ。

「すごいでしょう。私も初めて来たときは驚いたのよ」

 沙織も入ってきた。その後ろには、お茶と茶菓子を運んでくる杏奈と環奈。

「え~と、あなたは確か、向こうの世界で会った…」

「はい。お目にかかるのは二度目です。山本沙織と申します。四号さんと呼ばれております」

「よ、四号さん…?」

 丁寧にお辞儀する沙織に慌てて頭を下げつつ、美月は怪訝けげんな顔。無論だ。まだ美月には、詳しい説明をしていない。
 舞衣は、自分で四号と名乗った沙織に少し意外感を覚えた。四号さんと呼ばれるのを嫌がっていると思っていたからだ。
 もちろん沙織は、そう呼ばれるのを恥ずかしいと思っている。しかし、これから仲間になる美月に、自分の立場をハッキリさせておきたかったのだ。

「今、お茶を出したのが杏奈で五号さん、こちらが環奈で六号さん。舞衣さんが正妻ですので、私たちの姓は山本のままです。呼ぶときは名前でお願いします。
 特に、杏奈と環奈は中学生ですので、五号さん・六号さんという呼び方は、人前では絶対禁句です」

 美月は口を開けたまま、沙織の言葉を聞いていた。
 が、クイッと舞衣に視線を修正…。

「舞衣さん、結婚したって言いましたね」

「はい、言いました」

「結婚・・・したんですよね」

「しました。入籍も済んでます」

「電話で言っていた、共同生活って…」

「この通りです」

「新婚さんなのに、二号さんどころか六号さんまで…」

「え~と、どう説明すればいいかな……」

 美月の鋭い視線に舞衣はたじろぎ、言い淀んでしまった。

「私から説明させてもらいます」

 やれやれと、仕方なさげに沙織が引き取る。
 いつもなら、こういう役割は恵美が買って出る。しかし、恵美は神社の方に居る。
 また、舞衣が説明するより、一応常識人の沙織が、この非常識の説明をした方が説得力ありそうだ。舞衣もある意味、常識を超越した存在なのだ。

 ということで、沙織が順を追って話す。
 こちらに戻ってからの自分たちのこと。身籠みごもっている神子かんこのこと。神子かんこを無事に産むために、ここで共同生活をしていること。そして最後は、恵美とは違って恥ずかし気に言いよどみながら、毎夜の営みのことも…。

「毎晩…。六人と……。ま、舞衣さん」

「はい、なんでしょう?」

「前にも同じこと聞きました…。正気ですか?」

「正気です」

「本当に?」

「本当に」

「マジですか?」

「マジです」

「私にも、加われと?」

 舞衣は大きく頷いた。

「………。分かりました。お世話になります」

 ・・・・。

 沙織は、奇妙な二人の掛け合いと美月の結論を聞き、安心しながらもあきれた。

(あれで、納得できちゃうんだ……)

「そうだ、美月。私、ニュース見てなかったから、電話した後で知ったんだけど……」

 舞衣は、美月の暴露で所属していた隅田川乙女組が解散になってしまった話題に触れた。

「みんな自業自得です。足の引っ張り合いしか出来ないような世界は、絶対間違っています。舞衣さんは被害者なんですから、気に病むことないですよ」

「ありがとう、美月。いっぱい無理させちゃったよね。ゴメンね」

「も~う、舞衣さん、この間から謝ってばかりですよう!」

「ゴメン」

「ほら、また!」

 二人の温かい雰囲気に、沙織も、杏奈も環奈も、良い仲間が出来そうだと微笑ほほえんだ。


「で、美月。今日から一緒にいられる?」

「あ、今日は大丈夫なんですけど。明日はちょっと…」

「明日って…。あ、そうだ。美月の誕生日だ…」

「そうなんです。で、両親に、誕生会するから帰って来いと言われてまして。
色々ニュースにもなっちゃったし、まだ何も報告してないから、きちんと話に来なさいってことなんでしょうね…」

「そっか。それはしょうがないわね。あ、じゃあ、今日はここでも、一日早い美月の誕生会ね」

「そうですね。歓迎会も兼ねまして。早速、祥子さんに料理をお願いしないと」

 沙織も同調して、ニッコリ笑った。が、美月としては、来ていきなりそんなこと、申し訳なさ過ぎる。

「舞衣さん、そんな、いいですよう。何もいりません!」

「ダメよ! 美月は、ここでゆっくりしていて! 私、祥子さんと交代してくるから。沙織さん、あと、お願い!」

「分かりました」

 舞衣はあわてて神社へ走っていってしまった。
 呆気あっけにとられながら見ているしかない美月に、沙織が笑いながら言う。

「いつも、こんな感じで、みんな仲良くしているんですよ。舞衣さんは正妻なんだから、もっと偉そうにしても良いのに、全くそういう素振り見せないんだから…」

(なるほど、舞衣さんらしい…)

 美月も嬉しそうにうなずいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...