異世界に転生して冒険者始めました

さくら

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15 ラルフの思い

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翌日―――。

アル君の家族の邪魔にならないように、十時頃に病院に着くように家を出た。
俺の実家は男爵家だから街の中心部にあるが、家を出て独り暮らしをしている俺は、街から少し離れた静かな場所に、三LDKと一人で住むには広い平家を借りて住んでいる。
庭付きで街からは馬車で三十分程度かかるが、家賃は街中の半分程度まで下がり、静かで過ごしやすい。
街までは鍛練をかねて歩き、お金は節約している。
貴族なのに……。と思われるかも知れないが、冒険者は身体が命。怪我や病気で何時仕事が出来なくなっても生活出来るよう、なるべく貯蓄しているのだ。

まあ、これまでの冒険で得た賞金にはほとんど手を着けずにいたので、多少贅沢しても仕事をしないで死ぬまで生活出来るだけの蓄えはある。
大体、服は着れれば何でもいいし、冒険者の為か食事も食べれれば何でも好き嫌いなく食べれる。ギャンブルにも興味がなく趣味もない。
パートナーもいないため、プレゼントやデートをしてお金が減ることもない。
ついでに、料理は全く出来ないので、街で購入した食事や、家の近くの食堂というよりは酒場のような店で済ませるようにしているが、一人分だけなので、そんなにお金が掛かることはない。




本当は、朝イチでアル君に会いに行きたかったが、昨日のようにロイドに絡まれると面倒くさいので、時間をずらし病室を訪ねた。
「アル君おはよう」
笑顔全快で病室の扉を開けながら挨拶する。
「ラルフさん、おはようございます」
「よお、ラルフ。調度いい時間にきたな。母上が戻られたら、お前を置いて家に帰る所だったぞ」
ニヤニヤ笑っているロイドは無視して、アル君の側に行く。
アル君はベットの脇にちょこんと座り、レイモンドさんと話をしながら、俺を見るとニッコリ笑ってくれた。


アル君、可愛すぎだ!今すぐ抱き締めてキスして俺の欲望を注ぎ込みたい。


白いシャツに茶色のベストとズボン、少し明るい茶系のブーッを履いており、病室に差す光でキラキラ光る金髪を後で纏めリボンで結んでいる。
色白で華奢な身体が合間って、儚げに見えてしまう。
こんな子に見つめられたら、どんな人でも何でもしてあげたい、願いを叶えたいと思ってしまうだろうが、それは俺の役目だ!誰にも手出し出来ないように守らなければ……。
……だがまだ早い。まずは今日、アル君の家族から一緒に冒険に行ってもいいと許可を貰わないといけない。
そうしたら、二人きりで冒険して、俺の事を知ってもらって、番になってもらおう。

「……フさん、ラルフさん!聞いてますか?家に帰りますよ」
「ん?……ああ、分かった」
どうやら、自分の世界に入っていたみたいだ。
アル君は、レイモンドさんに片手で抱き上げられ、その首に腕を回し落ちないようにしながらも、なかなか動かない俺を見て声を掛けてくれたようだった。

しまった……。
アル君は、俺が抱き上げたかったのに……。

少し残念そうな顔になったのか、ロイドが俺を見ながら口だけ動かし「ばーか」と言ったのが分かり、イラッとしたが、落ち着け俺!
気を取り直して、一番最後に病室を出た。




ブラットフォード侯爵家は、街中でも王城の近くに大きな館と広い敷地を持っている昔からの名家だ。
病院からも馬車で十分くらいで着いた。
「おかえりなさいませ」
玄関前で執事らしき三十代の男性が、この街にしては珍しい黒髪を後ろに撫で付け、隙なく燕尾服を着こなし、身体を直角に曲げて挨拶をしている。

まずは侯爵婦人が馬車から降りるのを、執事らしき人が優雅に手を添えて手伝う。
その後を、今度はロイドに片手で抱き上げられたアル君が言葉を交わしながら、微笑んでいる。
アル君、そんな奴に笑わなくていいから、俺にだけ笑って欲しい。
独占欲丸出しで、余裕がなさすぎだとは思うのだが、アル君の事になると何時ものように振る舞うことが出来ないのだ。これが運命の番というものなとかもしれない……。
そんな自分の事を客観的に思いながら、レイモンドさんの後に続き、やはり執事だった男性、ジョージ・グラハム 三十六歳に挨拶をする。
彼の一族は代々ブラットフォード侯爵家の執事として仕えており、彼は小さい頃から父親から執事としての教養や作法を叩き込まれたのだという。
今は、ブラットフォード侯爵の専属執事をしている父親の代わりに、屋敷全体の管理を任されているのだとか……。
どうでもいいが、アル君になつかれているこの執事に嫉妬してしまう。




執事に明るい光の差し込むリビングに案内された。
室内を見渡すと、白を基調としている壁紙やカーテン、木の温もりが伝わってくる足の低いテーブル、テーブルを囲むように一人掛けソファーが二脚、三人掛けのソファーが二脚がそれぞれ向かい合わせに配置されている。他にも、植物や家具が邪魔にならないように配置され、暖かくて居心地がよく、それでいて洗練された空間が出来ていた。
ここでアル君生活している姿が簡単に思い描くことが出来る。


「ラルフさん、座ってお話をしましょう。お茶も召し上がれ」
侯爵婦人が自らお茶を入れ、テーブルの上には手作りと思われるクッキーが置かれている。
アル君達兄弟は此処にはいない。多分、アル君を部屋で休ませるために彼の自室に行ったんだろう。
俺はお茶の置かれたソファーまで移動しても座らず、一人掛けソファーに座っている威厳があるが優しい瞳をしている侯爵に挨拶をした。
「初めて御目にかかります。ラルフ・バーキンと申します。ブラットフォード侯爵、この度は俺の落ち度のせいで、息子さんに怪我をさせてしまい申し訳ございませんでした。しかも、あんな……辛い思いまで……」
俺は頭を下げながら言葉を詰まらせてしまう。
「ラルフ君。頭をあげてくれるかい?私達家族は君が悪いわけではない事を知っているから気にしなくてもいい。それよりも、アルベルトを助けて頂いて感謝する」
侯爵夫妻が俺に向かい頭を下げた。
俺は慌てて「こちらこそ、すみませんでした」とまた頭を下げた。
「ふふっ。二人ともそのくらいにして、お話をしましょう。ラルフさんから大切な話があるのだそうよ。ラルフさんも座って頂戴」
侯爵婦人の言葉に遠慮がちに三人掛けのソファーに座り、お茶を一口飲み込み落ち着こうとした。
侯爵夫妻は、何故ここに俺が来たのか知っているが侯爵に話す気はないらしく微笑んでいる。
これは覚悟を決めて正直に話すしかないだろうな。
「侯爵、俺にアル君を下さい!」
しまった!唐突すぎた……。運命の番であることや、一目惚れだが愛していることを話すつもりだったのに……。
侯爵夫妻も、呆然とした顔をしてるじゃないか!
「すみません。……改めて、アルベルト君は俺の運命の番です。不安にさせる事もあるかもしれませんが大切にします。だから、俺のお嫁さんに下さい!」
色々と言葉は足りないが、俺の思いは伝えた。


「ラルフ君、アルベルトは何と言っているんでしょうか?」
「それが、出会って直ぐに告白したら逃げられて、今回の事件に……」
いままで、元気に動いていた俺の耳と尻尾はしょぼんとなっているだろう。それほど、今回の事件は俺の中でトラウマになりつつある。
「でも、その後病院で再度告白して、結婚はまだ考えられないが、一緒に冒険をしてくれると言ってくれました。だから、まずはアルベルト君に俺の事を知って貰えるように、一緒に冒険に行く許可と、今後アルベルトが了承してくれたら結婚の了承をして頂きたく、お詫びも兼ねて本日伺いました」
侯爵は直ぐには答えなかった。
「あの……侯爵?」
「私は賛成よ。アルベルトも満更ではないようだし……何より、ラルフさんは格好いいから」
「確かに、アルベルトが納得しているのなら、私達は反対しない。宜しく頼むよラルフ君。ただし、未来の事は貴方とアルベルト次第だがね」
「勿論です!ありがとうございます」
俺は、心から感謝をしアル君の両親に向かい深々と頭を下げた。
「これからの二人の行く末が楽しみね、あなた」
「そうだな。もしかしたら兄達より先に結婚なんて事もあるかもしれない。今から獣人の孫が出来るのが楽しみだねソフィア」
「そうね。うふふ」
夫妻は穏やかに微笑んだ。
侯爵夫妻は本当に仲が良い。俺達もこんな夫婦になれるだろうか?
いや、先ずは俺の事をアル君にアピールしないとな。
幸せな未来に向け、一歩前進した日になった。




ちなみに、兄二人は冒険と結婚の事を両親から事後報告で聞かされ怒ったそうだが、アル君の冒険したい気持ちと安全を最優先させ仕方なく納得したらしい。なにせ、俺のランクは最高位の『S』だからな。そこら辺の冒険者と冒険するよりは、かなり安全だろう。
結婚については、いまだに反対しているそうだが、両親から説得され、これまたアル君の気持ちを第一にし、俺の邪魔はしないように誓約書を書かせたとブラットフォード侯爵より手紙で報告を受け、一緒に誓約書が送られて来た。
そこまでしなくても……とは思うが、相手はアル君の事になると超過保護な兄達だ。万が一の時には有り難く使わせて貰おう。


さて、アル君が元気になったら直ぐにでも冒険に出発出来るように、しっかり準備をしなくてはな。

心から愛しているよアル君。だから、早く俺の伴侶になって幸せに暮らそう……。
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