異世界に転生して冒険者始めました

さくら

文字の大きさ
18 / 23

18 再び道具屋へ

しおりを挟む
「さてと、真面目な話をするか」
じゃあ、今までは真面目じゃなかったんですね!
からかって遊んでたんですか?それとも、僕の事を観察していた?
とにかく、やっと話が進むよ。
「モツについてはさっき言ったな。他には兎族の町ガーラにて生産されているニラ、隣国マドランの名産物のゴボウ、エルフの街シンシアの清らかな水で作っているもやし、迷いの森に住んでいるミランダの味噌を集めてきて欲しい」
「結構各地に散らばってますね。しかも、美味しいけど入手困難な食材ばかりだな……」
ラルフさんが顎を手で触りながら、考え込んでいる。
「確かに場所的には、ドランを中心に東西南北に別れていて距離があり、隣国の名産等もありますけど、ドラゴンの内臓以外にも問題があるんですか?」
この街から出たことなくて、獣人やエルフの街等も本でしか見たことがなかった僕には、ラルフさんがそこまで悩んでいる理由が分からなかった。
「アル君は街から出たことはないよな?まず、獣人は種族によって住んでいる場所が違うんだが、その中でも、ガーラは兎族が住んでいるんだ。兎族は警戒心が強くて、特に肉食系の種族では町に入ることも無理だろうな」
「兎族!ギルドの受け付けにも兎族のお姉さんがいたよ!!」
茶髪で綺麗系のお姉さんを頭の中に浮かべた。
「そういえば、いたような気がするが……、顔は覚えていないな。あそこの受付は毎日違う人が居るんだよな」
「僕は初めて話した獣人が、兎族のお姉さんだから覚えてるよ。お姉さんに頼んだらガーラ産のニラ取りに行けないかな?」
「ん~、アル君一人だったら大丈夫だと思うけど、俺は狼族だから町には入れないかもな……。アル君だけ行かせるのは心配だし……」
「大丈夫!僕には頼もしい守護獣が三匹もついているもん!」
僕は一人でも行ける!とラルフさんを見る。
「でも、もし何かあったら……」
「僕と守護獣達を信じて!何かあったら、必ずラルフさんを呼ぶから!」
胸の前で手を組み、ラルフさんを見上げてお願いする。

「は~」
ラルフさんは暫く考えてから、大きく息を吐いた。
「アル君も立派な冒険者なんだよな(可愛くて離れるのは心配だけど)。もし、俺が一緒に行けなかったら守護獣達と頑張ってニラをゲットしてきてくれ。何かあったら直ぐに連絡できるように、マジックイヤーを買っておくか」
前半は僕に、後半は独り言のように話す。
「ありがとう!僕、頑張るから!!」
嬉し過ぎて、隣に座るラルフさんに抱き付いてしまった。
そんな僕の行動に一瞬驚いた顔をしたけど、直ぐに優しい笑顔になり僕を抱き返してくれた。
「話は纏まったな?では、準備が出来次第出発してくれ。そうだな、期限は半年だ。お前達の健闘を祈る」
王様はそう言うと、一人で城内に戻って行った。
東屋に残された僕とラルフさんは、ポットに残っていたお茶を全て飲み干してから王城を出た。


王城を出てから、真っ直ぐゴスロリ店主のいる道具屋にやって来ました。
そして僕はクレアさんに抱き締められている最中です。
「アルベルト様ったらお久しぶりです~。あ~、この華奢な身体と可愛いお顔、癒されるわ~」
物凄く興奮しているクレアさんの抱き締める力が強くなる。
「おい、クレア!アル君から離れろ!!アル君は俺の番だぞ」
「あら~、Sランク冒険者のラルフさんとは思えないほどの心の狭さよね~。こんな人の番だなんて可哀想~」
「クレア!いい加減にしろ!!」
抱き締められているから、僕からラルフさんの顔は見てないけれど、それでもイライラしている口調とピリピリしている雰囲気が伝わってくる。
「クレアさん、離して。買い物が出来ないよ」
僕はクレアさんから離れようと、腕の中でもがく。
「ま~、お客様なのにごめんなさいね~。あまりにも可愛らしすぎて~。ふふっ、ラルフさんにお返しするわね~」
クレアさんの腕から解放されると、今度はラルフさんの腕の中におり、ラルフさんがクレアさんを睨んでいる。
「ラルフさんも、僕はまだ番になってないから離して!」
「アル君~……」
情けない声で僕の名前を呼び、頭の上にある耳や、お尻についている尻尾がシュンとなって申し訳ない気持ちになるが、ここで否定しておかないと僕はなし崩しにラルフさんの番になってしまう。
まあ、ラルフさんは好きなんだけど、僕の好きとラルフさんの好きの意味が違う。
ラルフさんは僕の事を『愛してる』って言ってくれるけど、僕的には優しい親戚のお兄ちゃんであって恋人?未満。
何回かされているキスは……嫌いじゃない。
僕の心は複雑だよ。



僕に頬擦りしてから離れたラルフさんは、クレアさんにからかわれながらも、道具屋に来た目的のマジックイヤーを購入しようとしていた。
マジックイヤーは、見た目はシンプルなピアスなんだけど、離れた場所にいても話が出来てしまうという便利な道具。
今回は僕とラルフさんの二人だから、二個セットの物を購入したけど、最大十人まで共有できるんだって。
「あっ!ラルフさん僕の分は自分で払うよ!」
普段なら、僕以外の家族の誰かが支払いをしてくれていたけど、今日は「必要な時に使いなさい」って
父様からお金を持たされていたのを思い出した。
「ああ、気にしないでくれ。アル君の分も俺に買わせてくれ」
「でも……」
「いいじゃない~。愛する人に買ってあげたい男心を分かってあげて~。それに、ラルフさんはSランクの冒険者だから、お金なんて腐るほどあるわよ~」
ラルフさんは、クレアさんの言葉に頷いている。

確かに、お金はあるだろうけど……。

「ん~。ラルフさんがそれでいいなら……。お願いします」
「気にするな。俺はアル君の役に立てて嬉しいからな」
満面の笑顔のラルフさんが目の前にいます。
「アルベルト様~。ラルフさんにお礼がしたくなったら、抱き締めるとか頬にキスで十分よ~。唇にキスでもいいけど、その後は自己責任よ~」
小声で僕にだけ聞こえるように耳元で話をされ、顔が赤くなったのは仕方がないことだろう。
「クレアさん、何言ってるの!」
「ま~、照れちゃって可愛い~。やっぱり食べちゃいたいくらいよ~」
「アル君はやらんからな!」
「言ってみただけよ~。こんな怖いSクラス冒険者から奪おうなんて考えてないわよ~。あっ、でもラルフさんが嫌になったら、何時でも私の所に来ていいわよ~。お姉さんが可愛がってあ・げ・る」
ウィンク付きで投げキッスをされ誘われたけど、心からご遠慮します。
僕は首を左右に振って断った。
「残念だったなクレア。じゃあ、また何か入り用な時は宜しく頼む。アル君、次はギルドに行ってクエストの登録を完了させるぞ」
「そうですね。じゃあ、クレアさんありがとう」
「お二人共に何時でも気軽にいらして下さいね~。ありがとうございました~」
店を出た僕達に挨拶をして、クレアさんは店内に戻って行った。

あのキャラでなければ、きっと良い人なんだけどな。残念な女性だ。
しかし、この世界の人の力は、獣人よりはかなり劣るが、それでも僕より強い気がする。
僕はギルドに向かいながら、クレアさんの言動を思い出していた。



ラルフさんと話をしながら歩いていると、ギルドには直ぐに着いた。
ギルドの入り口の扉は相変わらず開けることが出来ないので、ラルフさんに開けてもらい、クエスト受け付けカウンターに向かうが、今日は珍しくカウンターが全て使用中で、順番待ちをしている人もいる。
全員冒険者なのかは分からないが、こんなにギルドに人がいるのは初めて見た。
「ん?これは少し時間がかかりそうだな」
「皆、冒険者?」
周りを見渡すと、顔や身体にに傷がある者、大きな剣や盾、槍や弓矢を持った人等様々だ。
「全員というわけではないが、ほとんどは冒険者だな。多いのはBランクとCランクの奴等だ」
「そうなんだ。皆強そうに見えるけど……。知ってたけど、Sランクのラルフさんは凄い人だったんだね。そんな人に僕なんかと冒険に行ってもらって良かったのかな?」
今更ながら、隣にいるこの国で最強と言っても過言ではないラルフさんと、冒険するのが申し訳なく思った。
なにせ、僕は本当に弱いから……。
「アル君!俺は君と冒険がしたいんだ。それに君には頼もしい守護獣達がいるだろう?」
「そうだけど。足手まといにしかならないし、迷惑じゃない?」
「迷惑なんてことはないさ。俺はアル君と冒険がしたいし、俺の事を知って番になって欲しいんだ。アル君との冒険は俺が自分で決めた事だから、何も心配する必要はないさ。それに、アル君を他の奴に近付けたくないからな!」
ラルフさんが、頭をガシガシ撫でながら、ニカッと笑った。
「ありがとうラルフさん。僕、頑張るよ」
「ああ。だが、怪我とかしないように気を付けてくれよ。アル君に何かあったら、正気でいられるか分からないからな」
「分かった。気を付けます」
傍から見たらバカップルな二人の会話を、偶然近くで聞いてしまった冒険者は、青い顔や赤い顔をしながら、顔や目線を逸らした。
そんな冒険者に気付くことなく、僕達は列の最後尾に並んで順番を待つことにした。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

黒豹拾いました

おーか
BL
森で暮らし始めたオレは、ボロボロになった子猫を拾った。逞しく育ったその子は、どうやら黒豹の獣人だったようだ。 大人になって独り立ちしていくんだなぁ、と父親のような気持ちで送り出そうとしたのだが… 「大好きだよ。だから、俺の側にずっと居てくれるよね?」 そう迫ってくる。おかしいな…? 育て方間違ったか…。でも、美形に育ったし、可愛い息子だ。拒否も出来ないままに流される。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...