この世界で生きていく

Emi 松原

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はじめての感覚

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 二人を見送って、家に入った僕たちは、その光景に、とてもはしゃいでいた。
 チィだけは、いつも通りだ。
「わぁ、このベッド、凄く可愛いわね! 本棚もあるし、机も椅子もあって、なんでもそろってる! ロキ、こっちも見て!」
 嬉しそうにはしゃぐ、ルカと一緒に、僕も楽しくなりながら、僕たち二人には、十分な広さの家を、満喫する。
 満喫した後は、寝る準備をして、お互いのベッドに腰掛けた。
「今日は、とても楽しかったわ。こんなに楽しかったの、私、はじめて。ノルさんの料理も、とても美味しかったわね。私たち、料理を作った経験がないから、食事は、ノルさんのところで、お世話になることになりそうね」
「そうだね。あの薬草、また食べたいなぁ」
「せっかく、台所や、調理道具が揃っているんだから、いずれ、私も、何か作れるようになりたいわ」
 僕の言葉に、ルカが、嬉しそうに笑いながら、答えてくれる。
「ロキ、ロキは、苦みがとても嫌いなはずです。それなのに、あなたの、食べたいという気持ちに、嘘はありません。苦手なものは、無理に克服する必要ないですよ」
 チィの言葉に、僕は驚いた。
「えっ!? 僕は、苦手だから、克服しようと思って、また、食べたいと思ったわけじゃないよ? あの薬草、確かに苦かったけれど、なんだろう、一緒にあった、おかずと組み合わせたら、とても美味しかったし、ノルさんが言ったように、くせになる感じがしたんだ。だから、また食べたいと思ったんだよ?」
「あの薬草には、強い苦みがある。それを、苦みが嫌いなロキが、美味しく食べる理由はないかと」
「チィちゃん。それも、人の感覚というものだと思うわ。理論だけでは分からない、自分の感覚よ。だって、私は、甘いものが、あまり好きではないはずなのに、デザートが、とても美味しく感じたわ。別の果物も、食べてみたいもの」
「感覚ですか。それも、私には分からないものです」
 チィの言葉に、ルカが、少し笑った。
「私、もっと色んな感覚や、感情を知りたいわ。ギア王国を出て、沢山、今までに感じたことのない感覚や、感情を知って、今、凄く、嬉しいの」
「感覚や感情は、良いものだけとは限りません。感受性が強くなると、それだけ、苦しみも、悲しみも、大きく感じることになるのです」
「それを、感じることができるからこそ、知ることができることも、あると思うわ」
「それは、生活していくことに、必要のないものです」
「ええ、生活には必要ないわ。でも、深く生きる為には、必要なことだと思うの」
「深く生きる……?」
 いつもの、チィと、ルカの、たわいのない言い合いだったけれど、僕は、ルカの言葉が気になって、思わず、会話に割って入った。
「えぇ、私ね、今日この国に来て、色んな人に会って、そう感じたの。ギア王国では、感じたことのない、感覚。それぞれが、自分らしく、とても深く生きているなって、心の中で、感じたの」
「私には、理解できません。それに、自分らしくと言えば、聞こえは良いですが、ギア王国では、それを、良しとしません。人はいがみ合い、憎しみ合います。犯罪も増えます。現に、エミリィさんは、私たちの、案内役兼世話役になることを、快く思っていません。この国では、十分に注意するべきです。ルカ、あなたには、それを考える能力が、あるはずです」
「……もう寝ましょう。明日、魔法のことを聞くのが、楽しみね」
 ルカは、チィに何も答えず、僕に笑いかけると、布団の中に入って、向こうを向いてしまった。
 僕も、布団に入って、横になる。
 深く、生きる……。
 ルカの言った言葉が、頭から離れなかった。
「ねぇ……。ロキは、今日、何を感じた?」
 ルカが、ベッドの中から、静かに、僕に聞いた。
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