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側で寄り添う
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しおりを挟む側で寄り添う
ついに、その日がやってきた。
朝、僕とルカが、朝の支度をしている時、スタウロが、ゴンゴンと、扉を叩いてきた。
外に出た、僕とルカは、すぐに変わった光景に気がついた。
スモ爺が、いなくなっていたのだ。
龍は、自らの死を悟ったとき、うろこを、自ら選んだ者に託す。そして、自分の死に場所を決めて、そこへ行くと、改めて、ライキさんから教えられていた。
「……スタウロ……」
どうして良いか分からず、スタウロを見ると、スタウロが、背中に乗るようにと、体を倒してくれる。
「……連れて行ってくれるの?」
僕の言葉に、スタウロが、小さく鳴いた。
そんな僕の前に、チィが立つ。だけれど、チィが何か言う前に、僕は、言葉を発していた。
「チィ、ここまで来たんだ。もう、何も言わないで」
チィの隣を通り抜けて、スタウロに乗る。チィが何か言う前に、僕が意見を言うのは、はじめてだった。後ろから、チィの声が聞こえる。だけれど、僕は、チィの声を、無視した。何を言っているのかも、聞こえていなかった。僕の頭には、スモ爺の元に行かなきゃという、そんな気持ちしか、なかったのだ。
スタウロが連れて行ってくれたのは、僕がはじめて、スモ爺に乗せてもらったときに、スモ爺が覗いていた、あの洞窟だった。
スタウロが、先導して、中に入る。僕は、暗闇も気にせず、その後を追って、洞窟の中に入った。すると、チィが、足下を、ライトで照らしてくれた。チィは、諦めたのだろうか。何も言わず、後ろから、ついてきている。
スタウロも、僕を気にしてくれながら、洞窟の奥へと入った。そこには、スモ爺がいて、いつものように、体を丸めて、入ってきた、僕を見ていた。
「スモ爺……」
呟いた僕に、スモ爺は、小さく鳴いて、答えてくれる。
スタウロが、何か鳴いた。スモ爺は、何も答えなかったけれど、どこか、安心したように、目を閉じた。
何か言わなきゃ。そう思ったけれど、何も言えない。いや、言うべきではないと、感じた。僕たちの間に、もう、言葉はいらない。
「ふっ……うっ……」
涙が、勝手に溢れてくる。
僕は、死、というものに、はじめて触れた。それなのに、怖いという感情は、全くなかった。そのくらい、スモ爺が、穏やかに、旅立っていったから。
泣いている僕に、スタウロが、すり寄ってきた。
「スタウロ……」
顔を上げて、スタウロを見ると、スタウロが、顔で、向こうを見ろ、というように、振り返る。それにつられて、振り返った僕が見たのは、ルカ、エミリィさん、ライキさん、ノルさん、キラさんが、膝をついて、祈っている姿。ヴィーヴル王国で、自分の気持ちを表すときに使う、祈りの姿勢だ。
スモ爺のことを、大好きだったのは、愛していたのは、僕だけじゃない。ここに来られなかった、ギルドの人や、街の人も、みんなが、スモ爺を愛していた。
僕も、ゆっくりと、膝をついて、スモ爺の為に、祈った。言葉では表せない、悲しみ、苦しみ、そして、感謝の気持ちを込めて。
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