52 / 83
襲撃と真実と帰還
1-2
しおりを挟むほどなくして、ロボットたちは、全て、二人の手によって、破壊された。
「お疲れ様。流石、腕は鈍っていないようだね」
僕たちの前に、降りてきた、エミリィさんとライキさんに向かって、キラさんが、笑顔で、頷きながら言った。
「……で? これは、ついに、ってこと?」
エミリィさんの、何か含みを持たせた言い方に、キラさんは、笑顔を消すと、重々しく頷く。そして、そのまま、ライキさんを見た。
「そろそろ、フールが、国境を抜ける予定だ。ライキ、迎えをたのむよ」
キラさんの言葉に、ライキさんは頷くと、エミリィさんと顔を見合わせて、龍に飛び乗ると、空に舞った。その姿を、黙って見守る、エミリィさんたち。
「フールさん……? 一体、どういうことですか……?」
ルカの言葉に、僕も、つられて頷く。
「その前に、チィ。君には、ギア王国から、なんて情報が入っているんだい? 答えによっては、君をこのまま、自由にしておく訳にはいかない」
ノルさんの言葉に、緊張が走る。
「分かりません。襲撃を確認してから、何度も、メインコントロールに、繋ごうとしていますが、全知全能の宝玉の情報以外、全てに答えられないと、遮断されています。襲撃についても、ロキたちの今後についても、何も指示が出ていません」
「そうか。君に嘘がつけると思えないから、信じるよ。さて……。二人には、どういうことか、説明しないとね。ギア王国が、ここに攻めてくるのは、時間の問題だったんだ。それは、君たちが、ここに来ると、決まる前から」
「ギア王国は、ここに攻め込むと決めていながら、ロキとルカを、外交員という名の、留学生として、ここに来させたということですか。それは、全知全能の宝玉に、関係あるということですね」
キラさんの言葉に、チィが続ける。キラさんは、黙って頷いた。
「全てを話すことは、簡単だ。だけれど、それをしてしまうと、ロキくんと、ルカちゃんは、今までに感じたことのない、苦しみを味わうだろうな」
「それでも、知りたいです」
ノルさんの言葉に、ルカが、すぐに返した。きっと、ルカは、ずっと知りたかったのだろう。僕たちが、ここに来た、本当の理由を。
「……マスター室へ行こう」
ルカを見て、何かの覚悟を決めたような、キラさんに促されて、僕たちは、マスター室へと向かった。
マスター室で、僕とルカ、キラさん、ノルさん、そしてエミリィさんが座る。チィだけは、いつものように、僕の隣に立っていた。
「順番に話すね。僕たちがまだ、ギア王国と、ヴィーヴル王国にわかれる前。ギア王国では、今の国王ではなくて、前国王だった。前国王は、その昔、どの種族にも、素晴らしいところがあり、高め合えると、ギア王国を発展させていった」
話し始めた、キラさんの言葉を、僕たちは、黙って聞く。
「……それが、いつからだろう。前国王は、人族に対して、劣等感を抱きはじめたんだ。龍の加護を受けている、龍人族の身体能力に、人族は、かなわない。自然の加護を受けている、精霊族に、治癒や、魔法の能力も、寿命も、人族は、かなわない。人族が、持つと言われている、異世界人からの知能。それは、目には見えにくいからね。そして、その劣等感と、優れた知能が合わさり、前国王は、非人道的な行為を、はじめたんだ」
キラさんは、一旦言葉を切ると、僕たちを見た。僕たちのために、言葉を選んでくれているのが、伝わってくる。でも、そんなキラさんに、しびれを切らしたように、エミリィさんが、口を開いた。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる