この世界で生きていく

Emi 松原

文字の大きさ
53 / 83
襲撃と真実と帰還

1-3

しおりを挟む


「前国王はね、知能の高い人族が、全ての種族の頂点に立つという考えの元、研究という名の、非人道的な実験をはじめたのよ。人族が、より強く、より寿命が長くなるように。龍人族にも、精霊族にも、龍にも、死者が沢山出たわ。それでも、まだ、戦争にならなかったのは、人族が、多くの人質をとっていたから」
 僕も、ルカも、何も言えない。キラさんと、ノルさんも、エミリィさんを、止めることはない。それが、真実だと物語っていた。
「そんな時に、前国王は、龍人族と、精霊族の、とあるハーフの双子に目を付けた。しかも、二つの種族の能力を、強く受け継いでいることが、子供ながらに分かるくらい、強い個体だったから。すぐに、前国王は、この双子を捕らえた。そして、龍人族と、精霊族の力を強化すると共に、そこに、人族の知能を組み込んで、前国王の思いのままに動く、全ての種族の力が入った、最強の、兵器を作ろうとしたのよ」
「そ……んな……」
 ショックを受けた、ルカの声に、エミリィさんは、一瞬ルカを見たけれど、そのまま、話を続ける。
「だけれど、前国王の計画は、失敗に終わった。双子の一人は、身体強化、魔力強化はされたものの、その辛さに、心を閉ざした。もう一人は、その心を閉ざした、自分の片割れを見て、強化されすぎた身体と魔力、そして心が、暴走した。その暴走に、我を忘れて、破壊の限りをつくした。誰の声も届かず。片割れの声すら届かず」
「まさか、そのもう一人の方が……絵本に出てくる、破壊神……?」
 ルカの言葉に、エミリィさんが、その通りだというように、頷いた。
「その破壊神は、種族も、場所も関係なく、自分で自分を、制御できず、苦しみながら、破壊を続けた。強化された身体、魔力のせいで、誰にも止めることはできなかった。龍人族と、精霊族は、自分たちの種族と……破壊神を守るために、信頼できる、人族の研究者と、協力して、一つの宝玉を作ったの。龍人族が、採取した魔石に、精霊族が、魔力を流して、人族がプログラムを組んだ、あんた達の言う、全知全能の宝玉……。破壊神を、封印させる為の、宝玉を」
「破壊神とは、前国王の指示によって、非人道的な実験を受けた、龍人族と、精霊族のハーフである、双子の一人。そして、その子を止めるためには、種族同士が、協力しなければならなかった。その子を封印する為にできたものが、私たちの言う、全知全能の宝玉ということですね」
 チィの言葉に、エミリィさんは、また、頷いて答える。
「その、破壊神と呼ばれているのが、龍人族と、精霊族の、ハーフである、双子の姉妹の妹。エミリィの、実の妹、リィノだ」
 ノルさんの言葉に、僕とルカは、言葉を失った。じゃあ、さっき、辛さで、心を閉ざしたと言っていたのは……エミリィさん……?
「リィノの封印に成功した後、龍人族と、精霊族は、その信頼できる、人族の研究者たちの手を借りて、前国王から逃れるために、ここへ逃げて、新しい国をつくった。それが、この、ヴィーヴル王国だよ。そして、前国王は、寿命でこの世を去り、現国王が、現在のギア王国の形をつくった。その間、ずっと、狙っていたんだよ。龍人族の、魔石を採取する能力。精霊族の治癒と、寿命。それを手にして、人族の王が、全ての種族の、頂点に立つことを。龍人族と、精霊族を相手にするには、リィノを使うことが一番だからね。リィノの封印をといて、ここを襲わせて、また、封印する為に、宝玉を探しているんだろう」
「ここまでは、理解できました。ですが、ロキとルカが、この国に送られた理由が、見当たりません」
 キラさんの言葉に、ショックを受ける、僕とルカをよそに、チィは、いつも通りだった。チィが、僕のことよりも、会話を優先しているのは、全知全能の宝玉について、分かったからだろう。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

令嬢失格な私なので

あんど もあ
ファンタジー
貴族の令息令嬢が学ぶ王都学園。 そこのカースト最下位と思われている寮生の中でも、最も令嬢らしからぬディアナ。 しかしその正体は……。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。 しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。 郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。  そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。 そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。 アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。 そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~

しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。 それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること! 8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。 どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ! 「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」  かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。 しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。 「今度こそ、私が世界を救って見せる!」 失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!   剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。 イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。 小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。

処理中です...