74 / 83
レインボーローズ
1-2
しおりを挟む※※※
「マスター!! 最終段階に、移行する準備が、整いました!!」
「よしっ!! ……皆、この争いを、最後にしよう。セラフィ、頼んだぞ」
レインボーローズの、マスターの言葉に、セラフィは、頷いて、外へと出て行った。
※※※
「お姉ちゃん!!」
リィノさんの言葉に、僕たちは、一斉に、炎の方向を見た。
炎の中から、チィ、そして、エミリィさんたちを、乗せた龍が、飛び出してくる。
そのまま、チィと龍は、リィノさんの元へと、降り立ち、僕たちも、急いで、側へと飛んだ。周りは、レインボーローズのロボットが、守ってくれている。
「お姉ちゃん!! お姉ちゃん!!」
リィノさんが、這いつくばって、エミリィさんの側に行き、エミリィさんの、手を握って、叫び続ける。
「リィノ……大丈夫……?」
「お姉ちゃん……!!」
エミリィさんが、優しく笑って、リィノさんに、手を伸ばした。リィノさんが、その手に、すがりつくように、エミリィさんを、抱きしめる。
「お姉ちゃん、ごめんなさい!! ごめんなさい!! 私、ちゃんと思い出したのに。みんなが、お姉ちゃんが、私に、手を伸ばしてくれていたこと。それなのに……。それなのにね、私の中から、怒りが消えないの。憎しみが、消えないの。みんなを、大好きな気持ちがね、黒いもやみたいなものに、覆われて、全部、全部、壊したくなっちゃうの」
泣きながら訴える、リィノさんに、皆が、耳を傾ける。
「人族の、実験の影響ですね。当時、何が行われたのか、何を使われたのか、記録が一切残っていませんので、根本的な対処は、難しいと思われます」
チィの言葉に、リィノさんが、泣きながら、頷いた。
「私、力が戻ったら、また、全部壊しちゃう。壊したくないのに。本当はみんな、大好きで、愛おしいものなのに。私、嫌だ。だから、だからお願い。私を、この場で殺して?」
「……嫌。私、あなたを、殺したくない」
エミリィさんが、リィノさんを、抱きしめた。その目からは、涙が溢れている。
「あなたを殺す覚悟は、できていたのに。あなたの胸を、突き刺したのに。それなのに、私はまだ、あなたと生きる未来を、諦めきれないの。……弱くて、ごめんね」
エミリィさんの言葉に、僕も、ルカも、みんなも、涙を流していた。
今のリィノさんは、弱っているから、本音が言えるし、みんなへの愛が伝えられる。だけれど、力が戻って、感情が、破壊の心に、飲み込まれてしまうと、それが、制御できなくなる。人族の行った、実験のせいで。
「フール、最終段階に移るぞ!!」
レインボーローズのロボットから、突然、男の人の、大きな声が、聞こえた。ここに援軍に来てくれたとき、マスターと呼ばれていた人の、声だ。
フールさんが、涙を拭う。
「はい。マスター。みんな、レインボーローズの、準備が整った。この戦争を終わらせる。最後は、この争いを始めた、人族の手で。成功するか分からないけれど、見守ろう」
フールさんの言葉に、僕たちは、何も言えない。だけれど、それぞれ、色んな決意と、想いを胸に、しっかりと頷いた。
0
あなたにおすすめの小説
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる