ロリータ少女と戦姫

Emi 松原

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ロリータ少女と戦姫

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謀反の時。生きる決意、散る決意。

 突然、部屋に向かって勢いよく走る音が聞こえてきた。
 即座に、美弥姫が私を屏風の後ろに隠した。
 何が起きたの!?
 多くの家臣の人が、部屋に流れるように入ってくる。

「繁蔵様!!謀反です!!城が焼かれています!!」

 私は息を飲んだ。ついに・・・・ついに・・・・・・!
 なんとかばれないように、こっそりと部屋を見る。
 驚いたことに、繁蔵様は落ち着いていた。
 どうして!?
 早く、みんな逃げないと!!
 家臣の人たちもみんな慌てていた。

「こうなったら、腹を切るしか・・・・!」
 そう言って、短剣を取り出す人もいた。
 私は怖くて震えていた。
 そんなどよめきの中で、繁蔵様がはっきりとした大声で話し始めた。

「皆、腹は切らなくて良い。この事態を招いたのは、全て私の責任だ。今、火消しにあたっているものにもこのことを伝えてほしい。私は、多くの良い家臣に恵まれた。後悔はない。喜んで、ここで死のう。だが、お前たちには生きてほしい。どこへ行っても、どんな生き方をしても良い。生きてくれ。」

 皆静まり返った。誰も、すぐには動かなかった。
「桜野城はなくなっても、この想いは永遠だ。・・・・聞こえなかったのか!私の命令だ!皆すぐに逃げるのだ!そして、生きるのだ!!」
 泣いている家臣さんもいた。

 そして、一人、また一人と部屋を後にしていく。
「聖花、何をしている。お前も早く逃げろ!」
「わたくしはあなた様の乳母でございます!ここで共に・・・!」
「馬鹿者!お前がいなくなったら、残された家臣たちは途方に暮れてしまうだろう。私の想いのために死ぬことは許さぬ!そこの者!!」
 今までに聞いたことのない怖い口調で、繁蔵様が一人の家臣を呼び止めた。
「力づくで、聖花を連れていけ!!」
「繁蔵様!!」
 聖花さんは泣き叫んでいた。
 家臣さんは、目を伏せて、聖花さんを抱え上げて走り出した。
「繁蔵様!!繁蔵様!!しげぞぉぉぉぉ!!!」
 聖花さんの泣き叫ぶ大きな声が、遠ざかっていった。
 私は美弥姫だけになったことを確認すると飛び出した。
「早く!繁蔵様も逃げないと!!」

「・・・・私は、逃げるわけにはいかないのだ。志乃、ありがとう。私の人生を鮮やかなものにしてくれて・・・さらばだ。」
 繁蔵様が微笑んだ。

 でも・・・でも・・・今なら逃げられるのに!
 そんな私の腕を、美弥姫が強くつかんだ。
「志乃姫、お前の帰る時間だ!」
 そう言うと、無理やり走り出した。
 抵抗できずに、私も走る。
 美弥姫が、繁蔵様を見た。
「少しの間席を外します。」
 美弥姫はそう言うと、私を連れて走って天狗岩へ向かった。

 天狗岩からは、城が燃えているのが見えた。
 私は涙がこぼれてきた。
 謀反で焼け落ちることは分かっていた。 
 だけど・・・繁蔵様が・・・・・・!
 私だけ安全な場所に帰るなんて!!

「美弥!これはいったい・・・!」
 正道さんが飛び出してきた。
「謀反だ。我が桜野城はここまでだ。繁蔵様が城に残っている。私は、志乃姫をここへ連れてきたまで。私も城に戻る。」
 美弥姫は平然と言った。
 正道さんの顔色が変わったのが分かった。

 そして、正道さんは美弥姫に手を差し出した。
「この手をとれ!そして、俺の妻となれ!そうすれば、お前は梅田城で生きていける。お前の戦の才能は皆知っている。誰も反対するまい!!」
 正道さんの言葉に、私も泣きながらうなずいた。
 美弥姫まで死ぬなんて耐えられない!生きられるなら、生きてほしい!

「・・・私は、桜野城正室の戦姫、奇抜で異端児の美弥だ。我が頭首繁蔵様のために生き、繁蔵様のために死ぬ。これは本望だ。」

 そんな・・・・・!!嫌だ!嫌だよ・・・・!!
 だけど美弥姫の目は真剣で・・・・。

「志乃姫が帰るところを見届けたかったが、私には時間がない。ここへ連れてこられてよかった。志乃姫、ここでお別れだ。お前と過ごした日々は本当に楽しかった。私の人生の中で、繁蔵様と出会えたことの次に嬉しいことだった。さらば。どうか、達者で。・・・・正道・・・・・・わが友よ、志乃姫のことを頼んだぞ。」

 そう言うと、美弥姫は私たちに向かって笑い、後ろを向いてお城に帰ろうとした。
 私は追いかけようとしたけれど、なぜか足が動かなかった。
 正道さんは、手をおろしていた。

「待って!美弥姫!!死んじゃ嫌!!お願い!行かないで!!お願い・・・・!!正道さんと生きて・・・・!!」
 私は、今までの人生で出したことのないような大声を出して泣き叫んだ。
 だけど、美弥姫は止まらない。

 カラン・・・カラン・・・・・

 天狗の音がした。
 私は帰るんだ。

「美弥姫・・・・・・!!」
 どうしたら・・・どうしたら・・・・!もうすぐ美弥姫は見えなくなってしまう。
 私は、泣きながら、最後の声を振り絞って、大声で叫んだ。

「みやひめぇぇ!!!私たち、友達だよぉぉ!!ずっと、ずっと友達だよぉぉ!!!今まで本当にありがとぉぉぉ----!!大好きだよぉぉ!!!!!」

 美弥姫が、振り返った。
 後ろの火で、顔が見える。
 その顔は、笑っていた。そして、私に大きく手をあげると、美弥姫は城の方へと消えて行った。
 最後の桜の花びらが、宙を舞った。

 そして、私も突然眠くなって、目が重たくなった。
 私は正道さんを見た。
「正道さん・・・本当にありがとうございました・・・。」
 私の言葉に、正道さんは黙ってうなずいた。
 正道さんも泣いているようだった。
「林之助さん・・・いるんですか・・・?」
 意識が段々と遠くなる中、私は林之助さんを呼んだ。
 すると、どこからともなく林之助さんが現れた。
「命を助けてもらって、本当にありがとうございました・・・・。」
 林之助さんも、無言でうなずいた。
 最後まで、林之助さんの正体は分からなかったな・・・・。
「林之助さんって・・・忍者なんですか・・・・・?」
 意識を失う直前、私はそんな間抜けなことを聞いた。
 林之助さんは何も言わなかったけれど、初めて少しだけ微笑んだ気がした。
 そして私の目の前は真っ暗になった。

「戻ってきたのか、美弥。」
 繁蔵は部屋のいつもの場所に座っていた。
 目の前に美弥が座る。
 部屋の外では、パチパチと音をたてて城が燃えていた。
「しばし席を外すと申し上げたはずです。」
 美弥が微笑んだ。
「・・・正道と生きる道もあっただろう。なぜ、戻ってきたのだ・・・。」
 繁蔵の声は震えていた。
「・・・私が生涯お慕いし、お仕えするのは繁蔵様、あなた様だけです。繁蔵様に愛された日々は、私の宝。共に生き、共に散るのが私の役目です。」
 美弥姫は微笑んだまま言った。
「そうか・・・・。なんとも短い人生だったな。だが、私には美弥、お前がいてくれた。私に幸せを与えてくれたのはお前だ。・・・ありがとう。」
 繁蔵が美弥を抱き寄せて、きつく抱きしめた。
「もし・・・生まれ変わることができたのならば、必ずまたお前を探し出そう。そして、戦のない世で、共に生きよう。」
「はい。楽しみにしております。」

 二人は炎に包まれていった。
 そして、桜野城は焼け落ちたのだった。

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