ダークロッドを打ち破れ

Emi 松原

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ダークロッドを打ち破れ

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~再会・双葉学で園の生活~

 ついに双葉学園への編入の日がやってきた。
 荷物は,引越屋さんが届けてくれるらしくて,俺はそのまま学校へ向かった。
 そして緊張しながら職員室の扉を開ける。
「初めまして,今日から編入します。ソウタと申します。」
 そう言って俺は職員室に入っていった。すると,
「俺とは,初めましてじゃないけどな。」
 とても懐かしい,ユウさんの声がした。
「ユウさん・・・・・!?」
 俺は驚いて声を上げた。
 俺の目の前に立っているのは間違えなく,大人になったユウさんだった。
「何で俺がここにいるかって思っているだろ?それは俺がこの学園の生徒会長だから。あとお前に会っておきたかったから。」
 軽い口調でユウさんが言った。
「お前アマキと同じクラスだから。帰りも一緒に帰ってきて。」
 同じ口調で,ユウさんが言った。
「ユウさん・・・俺の家は・・・?」
「ん?俺達の家だけど,何か問題ある?一人で住むよりいいだろ?どーせオヤジは帰ってこねーし,部屋は余ってるし。」
 さらっとユウさんは衝撃的な言葉を言った。
 いやいやいや,衝撃的すぎますよ,ユウさん。
 ユウさんと暮らすということは,アマキとも一つ屋根の下に暮らすということでありまして・・・・。
 いや,嬉しいんですけど・・・・。
「たぁだぁしぃ・・・。」
 ユウさんの声が突然変わって殺意のこもったものになる。
「アマキに手出したらそのときは・・・・・な?」
 にっこりと笑って怖いことを言うユウさんに,俺は慌ててうなずいた。
 そう,この兄妹,かなりのブラコン・シスコンなのだ。
 ま,幼い頃親戚の家で,二人,肩身の狭い思いしてきたから,しょうがないんだろうけどね。
 ちなみにユウさんとアマキはバトル犬を連れている。戦闘などで一緒に戦うパートナーだ。ユウさんの連れているのは茶色い色をした名前はチョコ。昔はほんの子犬だったのに,立派なバトル犬に成長していた。
 あと動物のパートナーは犬だけじゃない。バトルバードや,バトルモンキーなんてのもいる。
 そして俺はユウさんにあいさつをして,担任の先生に連れられ教室へと向かった。
 アマキと同じクラスなのはうれしい。でも,やっぱり緊張する・・・・・。
【ガラガラ】
 教室のドアが開かれ,俺は担任に連れられ一年二組の教室へ入った。
「はーい,みなさん,今日は転校生を紹介します。」
 その途端,クラス中がリアルスコープで俺を見た。
 リアルスコープっていうのは,右耳に装着していて折り畳み式で,ボタン一つでメガネのように装着できる。そこには,個人の体力・魔法力・知能・瞬発力・協調性などありとあらゆるパーソナリティーが映し出される。
 猛獣と戦うときは,猛獣の体力・情報なども映し出される代物だ。
 俺はなんだか査定されてる気分になった。
 俺は物理攻撃能力と協調性には自信があるんだけど,ほかは・・・・な。
 その時
「ソウタ!?」
 教室の後ろから懐かしい声がした。アマキの声だ。
 俺はその声の方を見た。
 アマキはリアルスコープを立ち上げてはおらず,立ち上がり驚いた表情で俺を見つめていた。
 そして,ふっと笑顔になった。
「ソウタ,約束守ったんだろうな?」
 アマキが俺に向けて言った。
 教室中が俺とアマキを交互に見ていて,恥ずかしかった俺は黙ってうなずいた。
 するとアマキがニヤリと笑った。
「そいつの名前はソウタ。あたいの親友だ。物理攻撃能力者で,敏腕スナイパー。そして,あたいのチームに入れる。チームは普通四人で構成されるけど,あたいのチームはまだ三人だ。どっかを五人にする必要もないし,あたいらが三人だけでいる必要もない。誰も,文句ないな!?」
 アマキは二本のロッドを持って,文句がある奴はかかってこいと言わんばかりに言った。
 先生も,その迫力に押されていて,
「そ,そうね,ちょうどアマキさんのグループに入ってもらおうと思っていたから。じゃあ,アマキさんのグループの席に着いて。」
 俺は言われたとおり,指定された席に着いた。
 そしてアマキを見ると,アマキは俺にウインクした。
 俺は心臓バコバコだったんだけど,それに笑顔でかえした。
「今日の一時間目はグループミーティングです。二時間目は実践バトル講座,三時間目は魔法学です。ではグループミーティングからはじめて下さい。」
 先生の声でグループミーティングがはじまった。
 俺はリアルスコープを装着して,新しい仲間を見た。
 アマキの事は知っている。肩くらいの赤い髪の毛を無造作にたらしていて,動きやすいパンツスタイル。そして二本のロッド。
 魔法攻撃能力・体力がずば抜けて高く,判断能力も高い。
 そして成長したピンクのバトル犬,イチを連れていた。
 イチが俺に近づいてきて,久しぶりというように俺の手をなめる。
「さっきも言ったけど,ソウタはあたいの親友だ。あたいのことは分かってる。だから副リーダーのカイキから自己紹介だ。」
 アマキが言った。
 するとカイキと呼ばれた男の人がこちらを向いた。そこで俺は度肝を抜かれた。
 なんと,カイキが着ているのは袴なのだ。そして青い短髪の髪をしている。
「名はカイキと申します。物理攻撃者で,刀を扱うものでございます。ちなみに俺の服装に驚かれているようですが,これが武士の正装です。以後,よろしくお願い申し上げます。」
 カイキが言った。
 俺はカイキのパーソナリティーを見た。
 物理攻撃能力がかなり高くて,瞬発力・素早さがずば抜けて高い。でも協調性が平均を下まわっているのには少し気になった。なんたって仲間を大切にする,アマキのチームの副リーダーなんだから・・・。
 そしてもう一人を見た。ヒールロッドを持っている,回復型能力者だ。銀色の綺麗な髪の毛は長く伸びていて,アマキとは対照的にスカートをはいている。
「名前はフユミ。回復型能力者と物理攻撃能力者。」
 フユミが言った。
 フユミのパーソナリティーを見ると,回復魔法能力がずば抜けて高い。アマキに匹敵するほどだ。そして平均以上の物理攻撃能力。でも協調性は・・・やっぱり平均を下まわっていた。
「ねぇ,ソウタは,注射って好き?」
 突然フユミに聞かれた。
「いや・・・そりゃ好きではないけど・・・。」
 するとフユミがニヤリと笑った。
「私,注射型回復能力しか使わないから。」
 フユミが言った。
 回復能力にも色々と種類があるが,注射型は一番高度な魔法で,素早く回復出来る分痛みを伴う。俺はフユミの腰を見た。なんとそこには何本かのムチがぶら下がっていた。
「ソウタ殿は今感じたと思いますが,フユミはかなりのドSです。ですからなるべく回復魔法を使わせないようにすることをお勧めします。」
 カイキが言った。そしてカイキが続ける。
「ソウタ殿は,物理攻撃能力と協調性がかなり優れていますね。尊敬します。私とフユミは協調性に欠けています。そのため,中等部一年生の時グループ決めをしたとき皆が私たち二人が余り物になると考えていました。その時は二人とも協調性のかけらもありませんでしたから。やはりはじめてチームを組むときは,協調性の高い人をリーダーに選ばれた人はほしがるものです。しかしアマキ殿は,迷わず私たちをとりました。そして,最後の一人は後々来るからと,とりませんでした。今日,その意味がわかりました。最後の一人は,貴方だったのですね。」
 カイキが俺に向かっていった。礼儀正しい人だなぁと思いながらも,俺は驚いて,アマキを見た。
 アマキは相変わらずリアルスコープをつけていない。
「苦労したんだぜ,こいつらの協調性ここまで上げるの。でも真の協調性はパロメーターでは計れない。その意味は次のバトル授業で分かるぜ。あと,あたいはソウタを待っていた。約束を守ってくれるって信じてたから。大分時間がかかったな。」
 アマキが笑って言った。
「いや,実技はよかったんだけど勉強が・・・・。」
 俺が口ごもると,
「じゃあ今日からあたいと一緒に兄貴に勉強見てもらおうぜ。兄貴,教えかたうまいから。」
 アマキが笑って言ってくれた。
 アマキは短気だけど仲間意識が高くて面倒見が良い。それがアマキが好かれる理由だ。
 そして俺は三人に向けて言った。
「ソウタです。スナイパーで,後方支援者です。よろしくおねがいします。」
 俺がそう言うと,
「後方支援,ほしかったんだ。フユミが前線で戦っちまうからよ。あ,あと名前は全員呼び捨てでいいから。」
 アマキが少しあきれたように言った。
「どう猛な猛獣をムチで叩く。これほど楽しいことはないわ。」
 フユミが言った。
 この人・・・ちょっと怖い・・・。
「ま,なんにせよ,これでクローバーチームがやっと四つ葉のクローバーになったわけだ。」
 アマキが言った。このチーム名は,『クローバー』らしい。
 アマキのチームに入れてこんなに嬉しいことはない。初日から,ハイテンションだぜ!
 なーんて思っていた。
 そして色んな事を話していたら,チャイムが鳴った。
 すると
【ズドドドドドドドド,ガラガラ】
「アッマキちゃーん!!」
 ものすごい走る音と共に教室に入ってきたのは,まぎれもないユウさんとチョコだった。
「兄貴!!」
 アマキが笑顔になる。
 そして抱き合う二人。なんだ,この感動的な再会シーンは・・・・。
 ま,この二人がじゃれあうのも見慣れてるんだけどね。ちなみにチョコとイチも兄妹で,なかよくじゃれている。犬が飼い主に似るのは本当だ。
 そして俺はあることに驚いた。教室の女子をはじめ,他のクラスの女子,しかも高学年の女子までもがユウさんを見に来ているのだ。
「ユウシくん,こっち向いてー!」
 なんて声まで聞こえてくる。
 ユウさんはカッコイイし強いし優しい。しかも生徒会長。もてるのは当然だけどここまでとは・・・。
 俺は気を取り直して教室の後ろの掲示板を見た。
 そこには,バトル成績優秀チームと成績優秀者の高い人の順位が張り出されていた。
 それを見て俺はさらに驚いた。
 クローバーチームが,バトル成績でトップなのだ。
 そして成績優秀者のトップはアマキ,二位はカイキ。(フユミは載っていなかった)
 俺,もっと頑張らなくちゃ。そう自然と思った。
 そしてチャイムが鳴る三分くらい前。
【ガラガラ】
「ユウシ,やっぱりここにいたのね。さぁもう授業だから帰るわよ。少しはアマキちゃんの迷惑を考えなさい。」
 そう言いながら,髪が赤茶色で背が高い女の人が入ってきた。ヒールロッドを持っている。回復型魔法者だ。
「アカネ!!俺はアマキに迷惑なんかかけてない。アマキに悪い虫がつかないよう見張っているだけだ!!」
 ユウさんが堂々と答える。
 そして俺を見た。
「ソウタ,こいつは俺の親友で同じチームのアカネ。見ての通り回復型魔法者。アカネ,こっちがさっき話してたアマキの親友のソウタ。」
 ユウさんに紹介されて,俺はぺこりと頭を下げた。
「ソウタくんね?よろしく。こいつと一緒に住むんでしょ?何か相談事があったら,いつでも聞くから。」
 アカネさんはそう笑って言った。良い人そうだ。ユウさんが親友と言うだけある。
「さ,帰るわよ。」
「アマキィィ,兄ちゃんはいつでもお前を思っているぞぉぉ~。あとついでに晩飯の材料の調達ができたらしといてくれ~。」
 そんなことを言いながら,ユウさんはアカネさんに引きずられていった。
 その時,アマキが少し複雑な表情を見せたのを,俺は見逃さなかった。
 二時間目はバトル授業だ。
 この授業は実践型。バトルルーム入ると,次々と猛獣が現れる。
 倒していくにつれ猛獣のレベルも上がって,全員が戦闘不能になるまで行われる。
 戦闘不能になっても,バトルルームのスイッチが切られたら回復するから不思議なものだ。
 俺は少し緊張しながらバトルルームに入った。
「ソウタ,緊張しなくても大丈夫。お前は,最高の後方支援者だから。」
 アマキに突然そう言われて,別の意味で緊張した。
 バトルルームに入ると,早速猛獣が出てきた。クサッキーという植物系猛獣数体だ。
「中心で爆破。」
 アマキの短い指示に,カイキとフユミがうなずいた。
「ソウタ,クサッキーをバトルルームの中心に集めてくれ。」
 アマキが解釈してくれた。
 俺は黙ってうなずくと,散乱銃をとりだした。
 対象者に当たると爆破するタイプだ。
 それをクサッキーの頭の部分をかすらせ爆破させる。するとクサッキーは驚いて真ん中によっていく。
 カイキも刀で似たようなことをして,クサッキーを真ん中に集めている。
 そして真ん中に集まったところで,フユミが長いムチをとりだし全員のクサッキーを縛り上げた。
 そしてアマキがファイヤーロッドを向ける。
「クサッキー全員指定。ファイヤーボンバー!!」
【ドカカァァァン】
 クサッキー全員が爆破された。
 そうか,最初の指示はそういうことだったのか。
 ちなみにアマキが使った魔法は攻撃魔法の中でも一番レベルの高い爆破魔法。人に対しては使ってはいけない,危険魔法にも指定されている。でもアマキの魔法能力は,普通の魔法を使ったときくらいにしか減っていなかった。さすがアマキ。
 次に出てきたのは火炎馬と飛行モリ。地面型と,飛行型だ。
「右上半分カイキ。左上半分ソウタ。地面型あたいら二人。」
 相変わらずアマキの短い指示。
 でも俺は,その意味がなんとなく理解できた。俺は右上を飛んでいる飛行モリの撃破をしろという意味。
 俺はまた持つ銃を切り替えて,飛行モリの急所をリアルスコープで見極める。そしてそこに向かって一撃。また一撃。
 アマキ達は火炎馬を楽々と退治しているし,カイキは飛び上がって飛行モリを撃破している。
 そしてこのバトルもすぐに終わった。
 バトルのレベルはどんどん上がっていく。
 そこで俺は気がついたことがあった。
 カイキとフユミは,アマキの最初の作戦を聞いてその通りに自由に動いてる。
 状況が変わればそれに対応するし,フユミは絶妙なタイミングで回復魔法を繰り出している。
 協調性はグループで声を掛け合うことで上がっていく。でも確かに,このグルームには協調があった。
 アマキが言った,真の協調性はパロメーターでは計れない。その意味が分かった。
 そして俺も,アマキの短い指示が理解できるようになっていた。
 気がついたら,俺達のグループはパーフェクトまでいっていた。これってすごいことだよ,ほんとに。
 でもアマキ達には普通みたいだった。
 三時間目は魔法学。机にすわってする普通の授業・・・なんだけど・・・やばい。チンプンカンプンだ・・・。これは本当にユウさんを頼るしかない。
 それで昼休憩。
【ズドドドドドドドド,ガラガラ】
「アマキちゃーん,一緒にお昼食べましょー!!あとついでにソウタも。」
 ユウさんが教室に飛び込んできた。もちろん,大勢の女子を引き連れて。
 てか,俺はついでですか。別にいいんですけど・・・・。
「兄貴!!さ,ソウタ,屋上に行こうぜ!!」
 アマキに促されて,俺とアマキとユウさんは屋上に行った。
 屋上では,アカネさんが待っていた。
「ほい,ソウタの弁当。」
 そう言ってユウさんは当たり前のように俺に弁当をくれた。
 ちょっと,いやかなり嬉しい。
 屋上には,俺達以外誰も居なかった。これなら気軽に話せる。
 アマキが,一緒に勉強を見てくれるように頼んでくれて,俺は,今日の魔法学の悲惨さをユウさんに伝えた。
 そしたらユウさんは大爆笑。
「ユウシ!!そこ笑うとこじゃないでしょ!!」
 アカネさんの喝が飛ぶ。
 楽しい一時だった。そして俺はずっと気になっていたことをアマキに聞いてみた。
「なぁ,アマキ,なんでリアルスコープつかわねーの?」
 そう,アマキはバトル中もリアルスコープをつけていなかった。
「ん?あたいがこれをつけるのは,あたいが本気になったときだけだぜ。」
 そう答えが返ってきた。
 ユウさんとアカネさんはなにやらまたもめている・・・というかじゃれている。
 そんな様子を見て,アマキはまた複雑な表情を見せた。
 俺はそんな表情見たくない。だから,奥の手・・・ってほどではないけど,アマキが好きなことをすることにした。
「はい,アマキ,あーん。」
 そう言って卵焼きを差し出す俺。
 途端にアマキは笑顔になって「あーん」と俺の手から卵焼きを食べる。
 そして二人で顔を見合わせて笑顔になる。
 親友の俺だけが知っているアマキの性格。アマキは,お嬢様扱いされたりするのが好きなんだ。
 でもその瞬間,俺はとてつもないユウさんの殺気を感じた。
「ソータくーん,なーにしてるのかなー?」
 やばい,ユウさん本気だ。俺,死ぬかも・・・・。
 そう思った瞬間,アカネさんの蹴りがユウさんに入った。
「二人の邪魔しない!!」
 アカネさんの一喝。おみごと。感謝します,アカネさん。
 こうして楽しかった昼休みも終わった。
 午後からの授業は薬草学だったり,攻撃術だったり,あんまり面白いものはなかった。
 こうして俺の学園生活一日目が終了した。
 そして放課後。
「さて,帰るか。あ,その前に軽くソウタに地理を説明しておかないとな。」
 そうアマキが言った。
 そして四人で校門を出る。
「ここから右の道を進んだら,猛獣が出ない地域を通って住宅地まで帰れる。でも,少し時間がかかっちまう。だからあたいらは,ここから真っ直ぐ進んだ道の森を通る。猛獣危険区域だ。食料もとれるし,小遣いかせぎができることもある。それと無意味な殺生はあたいが許さない。威嚇したら逃げるレベルの猛獣ばかりだから,逃がすこともある。帰るときも,チームで一緒だ。あ,登校するときは猛獣が出ない地域を通るけどな。」
 アマキが説明してくれた。
「さ,帰るか!!」
 アマキのかけ声で,俺達は歩き始めた。
 森の道は薄暗くて,少し不気味だった。
 でもどんどん進んでいくアマキ達。
 そしてもう少しで森を抜けるというところで,
 突然猛獣が目の前に飛び出した。
 ツノツノブタ三匹だ。
「あ,ごちそうがでてきた。」
 アマキの言葉。
「あれ,今日の晩飯。」
 アマキの一言で全員が動き出す。
 俺は殺傷能力は少し劣るけど,スピードが速くて突き抜けるタイプの銃をかまえた。
 弾が中に残っていたら,調理しにくいから。
 そして一匹のツノツノブタに向かって急所を何カ所か貫く。
 一匹のツノツノブタが倒れた。
 カイキは素早くツノツノブタに接近すると,「はっ!!」とかけ声を上げてツノツノブタを一刀両断にしていた。
「ウォーターボンバー!!」
 アマキの声。
 一瞬でツノツノブタが倒れる。
「よっしゃ!!今日はごちそうだな。」
 ツノツノブタを麻の袋に入れながら,アマキが言った。
 そして思い出したように,ツノツノブタのツノを取る。
「これ,カイキとフユミで分けてくれ。ちょっとは金になるだろ。」
 そう言ってツノを投げた。そうツノツノブタのツノは売れるのだ。もちろん食料品としても売れるんだけどね。
 そして俺とアマキはアマキの家(今日から俺の家でもあるんだけど)に帰っていった。
 
 帰ってしばらくすると,ユウさんが帰ってきた。
「アマキちゃーん,遅くなってごめんな。生徒会の仕事が長引いてさ。アカネがちゃんと仕事が終わるまで返してくれないんだよ。」
 ユウさんが言った。
 ユウさんの手には野菜と花。
「たぶんアマキちゃんはお肉を調達してくれると思ったからさ,ハナハナとクサクサから取ってきた。」
 ユウさんが言った。ユウさんには,なんでもお見通しだ。
 そして夕食作りをはじめるユウさん。その間,ずっとアカネさんの愚痴を言っている。
 アマキを見ると,また複雑そうな顔をしていた。
 あとで,理由を聞いてみよう。俺は,アマキが本音を言うとっておきの方法を知っている。
 今日は鍋にするようだ。良いにおいが漂ってくる。
「よし,あとは煮込むだけ。この間に仕事の当番を決めとくか。」
 ユウさんが言った。そうですよね,一緒に住むからには,俺も働かなきゃ!!
「まず俺,掃除・洗濯・風呂掃除・ご飯作り,弁当作りを毎日。」
 ・・・ってあれ?それって全部の家事じゃないですか?
「アマキちゃん,自分の部屋の掃除,俺を癒す役,俺を和ませる役。俺を元気づける役。」
 なんですか!!その役割は!!
「最後にソウタ,これが一番重要だ。」
 ユウさんが真剣な顔をして言った。
「ソウタは,自分の部屋の掃除と,アマキちゃんが寂しくないように相手してあげる役。」
 ユウさんが言った。
「俺,生徒会長だし,何かと仕事頼まれて早く帰れないときが多いんだよ。だからアマキちゃんの相手役は重要。たぁだぁしぃ。」
 ただしから殺気がこもる。
「手を出したら・・・・・な?」
 ユウさんの言葉に,俺は黙ってぶんぶんと首を立てに振った。そして納得したようすのユウさん。
 俺は正直嬉しかった。アマキの相手なら,言われなくてもいくらでもしますよ。
 そんな話をしていたら,鍋ができあがった。
 三人で鍋をつつく。
 俺は,一人暮らしを覚悟していたからなんだかとても安心した。
 ユウさんと,アマキに守られているようで。
 でも,俺は決めたんだ。今度は俺が,アマキを守るって。
「じゃ,夕食終わり。勉強は八時からな。それまではくつろいでていいぞ。」
 ユウさんの言葉に,俺とアマキはそれぞれ自分の部屋へ行った。
 俺は少し荷物を整理すると,時計を見た。勉強まで,あと三十分。
 アマキに,本音を聞きにいこう。
 そう思って,俺は部屋から出るとアマキの部屋をノックした。
「はい?」
 アマキの声だ。
「アマキお嬢様,じいやです。入ってもよろしいですか?」
 俺はそう言った。これ,アマキの好きなお嬢様ごっこ。他の人が居るときには絶対にやらないし,そぶりも見せないけど,俺だけが知ってるアマキの好きな遊び。
 そしてこの遊びをしている時は,アマキは本音を言う事が多い。
「いいわよじいや。入ってちょうだい。」
 ノリノリの,アマキの声が聞こえてきた。俺は扉を開けた。
 アマキの部屋に入るのははじめてだ。中はピンクで統一されていて,女の子らしい可愛い部屋だった。学校からのアマキからは考えられない。
「それで,じい,なんの用?」
 アマキが言った。
「お嬢様,今日貴女は,お兄様とアカネ様のことで何か悩んでいらっしゃいますね?じいの目はごまかせませんぞ。」
 俺が言った。
 アマキは少し驚いた目になったが,すぐに話し始めた。
「お兄様は,アカネさんが好きなのではないのかしら。そして,アカネさんもお兄様のことが好きなのではないのかしら。もしそうなら,私は二人の邪魔をしていることになっているのではないかと思って・・・。」
 アマキが言った。アマキ,そんなこと考えていたんだ。
「アマキお嬢様が邪魔なんて,ありえませんよ。お兄様は,お嬢様を一番に心配し可愛がっておられます。お兄様にとってはそれが自分の役割であり,それが支えなのです。それにくよくよ悩むなんてお嬢様らしくありませんよ。お嬢様,いつものように単刀直入に聞いてみたらいかがですか?」
 俺はアマキに言った。すると,一気にアマキの緊張した顔がとけた。
「じい,ありがとう。なんだかスッキリしたわ。」
 そう言って俺に抱きついてくるアマキ。俺はそれを受け止めながら,
「いけません,お嬢様。」
 なーんて口では言っていたんだけど・・・・・・・。
【ズドドドドドドド,バタン】
「お二人さん,そろそろお勉強のお時間でございますよ。」
 殺意のこもったユウさんの声が言った。
 慌てて離れる俺達。でも,顔を見合わせてちょっと笑い合った。
 それだけでも,俺は幸せ。たとえアマキには親友としか思われてなくても・・・。
 
ユウさんの勉強の教え方はめちゃくちゃうまくて,今日チンプンカンプンだったところも,ものの三十分で理解できた。
 俺はこの際だから,子供の時からずっと気になっていたことを聞こうと思った。
「ユウさん,ユウさんの持ってるロッドって,雷と風ですよね?で,アマキが火と水。でもこれって,相性悪い組み合わせじゃないですか?雷と水・風と火を持った方がより強くなるんじゃないんですか?」
 俺の質問にユウさんは頭をかいた。
「ま,理由は色々あるんだけど・・・。オヤジから,相性の悪いロッドを使いこなせたら全てのロッドを使いこなせるって教えられたってのもあるし,俺達喧嘩っぱやいだろ?だから学校でバトルになったら,シャレにならないダメージを与えても困るし。でも,俺達二人が本気になったときはロッドを交換するよ。」
 ユウさんが言った。二人が本気になったとき・・・。
 あ,そうそう,今話しに出てきた学校でのバトル。これは,いわゆる喧嘩にあたる。
 自分の武器を相手に向けたらバトルの申し込み。武器を向け返したらそれを受けるという意味。武器を捨てたら,戦闘放棄,つまり負けを意味する。個人バトルもあるし,チームバトルもある。人数やルールは自由。その場に立ち会う誰かが,違反はないか審判となる。
 そんな感じかな。
 でもこの時は,アマキとユウさんの本気を見るなんて思いもしなかったんだ・・・。

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かさい さとし
児童書・童話
少年トウヤは、鬼に姉を殺された。 その夜、彼は復讐を誓う。 だが―― 彼自身もまた、鬼だった。 鬼王の血を引きながら、角を持たず生まれた“異端”。 鬼の里を捨て、人間界へ逃れたトウヤは、鬼を狩る者として生きる。 鬼でありながら鬼を斬る少年。 その正体が知られれば、討伐されるのは彼の方だ。 それでも彼は刀を振るう。 姉を奪った鬼を、この手で滅ぼすために。 鬼を狩る者たちの中に、鬼がひとり。 やがて彼は知ることになる。 この復讐の果てに―― 自分が“最後の鬼”になる運命を。 ※毎日12時頃投稿

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