龍神様はチョコレートがお好き

Emi 松原

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龍神様はチョコレートがお好き

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修行する六人~俺がするべきこと~

 車が、光龍神社の、裏口前に止まった。
 車から降りると、辺りは、もう、暗くなっていて、少し、肌寒い。
 ポーは、好きなだけ、チョコレートを食べた後、俺の肩で、眠ってしまった。
「では、皆さん、また明日、お会いしましょう。」
 絵里さんを、乗せた車が、遠ざかる。一気に、心細くなった。
「・・・修行、俺の所の、道場でやるから。師範には、メールで連絡しといたから、先に行っといて。俺たちは、準備して、行くから。」
 幸多さんに、そっけなく、言われた。
 明さん、志乃さん、美桜さんは、光龍神社の中に、入って行った。
 残った三人が、道場の方に歩き出したから、俺も、慌てて、追いかけた。
 三人は、準備の為に、道場の二階に、上がってしまった。
 俺は、一人で、道場に足を踏み入れた。そこには、師範が、一人で立って、待っていた。
「あぁ。優矢くん、おかえり。みんなの、修行を、見るみたいだね。幸多から、聞いたよ。」
 師範の言葉に、黙って、うなずく俺。
「学校は、どうだったかな。あの子たちは、なんというか・・・自由だから、嫌な想いは、しなかったかい。」
「はい・・・。帰りに、志乃さんから、色々と、説明も、してもらいました。」
「そうか。それは、良かった。明が、実際に、危機に直面しないと、分からないからと、説明するのを、拒んでいたからね。間違いではないが、知っておかなくては、いけないことだ。志乃は、相変わらず、しっかりしているな。」
 また、黙って、うなずく俺。
 人の気配を感じて、振り返ると、袴に着替えた、六人が、立っていた。
黄色、緑・・・・それぞれ、教えられていた色の、袴を着ている。
明さんは、髪を、上の方で結んでいる。ポニーテールってやつだ。
全員、車にいたときと、目が違う。真剣な目をしていて、緊張が走る。
六人は、無言で、俺と、師範の前で、並んで正座をした。
座った方が、いいのかな・・・?
 俺は、助けを求めるように、師範を見た。
 だけど、師範は、六人を見つめている。

「そろったようだな。今日は、優矢くんがいる。お前たちの、今日までの、修行の成果を見る、またとない機会だ。全員、戦闘態勢に入れ。説明は、その後だ。」
 師範の言葉に、六人が、立ち上がった。
 そして俺は、驚くものを見た。全員が、一斉に叫ぶ。

「我、龍神の加護を、受けるものなり。その加護をもって、ここに、その眼を開眼し、この手に、守りを与えたまえ。龍神眼、開眼!」
「我、龍神の加護を受け、龍神の姫を、守るものなり。その使命をもって、ここに、その眼を開眼し、この手に、守りを与えたまえ。龍神眼、開眼!」
「我、鬼神の加護を、受けるものなり。その加護をもって、ここに、その眼を開眼し、この手に、守りを与えたまえ。鬼神眼、開眼!」
「我、犬神の加護を、受けるものなり。その加護をもって、ここに、その眼を開眼し、この手に、守りを与えたまえ。犬神眼、開眼!」
「我、稲荷の加護を、受けるものなり。その加護をもって、ここに、その眼を開眼し、この手に、守りを与えたまえ。稲荷眼、開眼!」
「我、人との縁を結ぶ、桜の加護を、受けるものなり。その加護をもって、ここに、その眼を開眼し、この手に、守りを与えたまえ。桜眼、開眼!」

 俺は、絶句した。
 全員の、瞳の色が変わった。明さんの瞳は、黄色く輝き、幸多さんの瞳は・・・片方ずつ違う。左が赤色で、右が黄色く、輝いている。
 他の五人も、同じように、袴の色と同じ瞳の色になり、光輝いていた。
 そして、全員を、一瞬、光が包んだかと思ったら、全員が・・・武器のようなものを、持っていた。
 俺は、順番に、その姿を見た。

 明さんは、背丈より長い、槍のようなものを、持っていた。大きな刃の部分には、龍が描かれているようだ。
 幸多さんの腰には、武士のように、刀がついている。鞘の部分に、龍が掘られているようだ。
 志乃さんの目の前に、分厚い本が・・・浮いている!!??黒い本の表紙には、「鬼」という文字。本が、勝手に、ペラペラと、めくれていく。
 達成さんは、両手に、メリケンサックのようなものを、握っていて、そこから、三本の刃が、伸びている。
 成二さんの、腰の周りには、片手に乗るくらいの大きさの、水晶のような玉が、いくつも、ぶらさがっていた。
 美桜さんは・・・背丈より高い、木の棒の上に、大きな、光る玉が浮かんでいて、そこから、植物のツルのようなものが、伸びている。
なんなんだ・・・。この光景・・・・。こんな、漫画のような、ゲームのような・・・。現実では、ありえない光景だ。
「ポー!ポー!」
 ポーが、俺の肩で、叫びながら、ぐるぐるまわっている。
 師範が、俺の方を向くと、一枚の、お札のようなものを、出した。
「龍神様、申し訳ありません。少し、お休みください。」
 そう言うと、お札を、ポーに当てた。おとなしくなって、途端に、眠り始める、ポー。
 師範が、俺から、六人に、向き直る。
「今日の、修行内容を説明する。時々、絵里さんを、守りながら、あやかしを倒すという、修行をしているが、その応用だ。まず、今の、優矢くんには、何の守りも、ついていない。その意味、分かるな。その上、いつもより、数段、あやかしの強さを上げる。これは、優矢くんが、引き寄せてしまうものを、想定してだ。以上。」
 六人が、うなずいた。
 これから・・・何が始まるんだ・・・?
「優矢くん、道場の、真ん中に、立ってくれるかい?」
 この空気で、俺に、従う以外の、選択肢は、なかった。
 黙って、道場の中心に向かって、歩く。

「あの・・・この辺りで、いいでしょうか・・・。」
 俺が、立ち止まって、振り返ると、師範は、うなずいた。
「では・・・・修行、始め!」
 師範は、そう言った途端、俺の方に向かって、何枚もの、お札を投げた。
 そのお札は、俺を取り囲むように、飛んできて・・・・姿を、それぞれに変えていく。
 なんだ、なんだなんだなんだ・・・・・!!
 なんなんだよ、これ・・・・!!
 俺は、黒い塊・・・巨大な、鬼のような・・・もう、何か、分からないものたちに、取り囲まれていた。
 怖い・・・・・!
「あ・・・・あ・・・・」
 声も出ない。足も動かない。
「優矢さん!そこを、なるべく、動かないで!美桜、隙を見て、優矢さんをこっちに!私は後ろから、援護する!」
 志乃さんの、大きな声。
 反射的に、志乃さんの方を向く。
 俺の目には、俺の方に向かって、走ってくる、明さん・・・幸多さん・・・達成さんに、成二さん・・・・。志乃さんが、走る四人の後ろで、手を、本にかざしている。美桜さんは、その場から、動いていないけれど、光の玉が、俺に、向けられていた。
 巨大な、鬼の手が、四方八方から、俺に迫る。
 でも、怖くて、動けない・・・・!
 志乃さんが、本の上から、俺に向かって、手をスライドするように、勢いよく振った。本から、お札が、何枚も飛んでくる。
 その瞬間、俺に迫っていた、手が止まる。
 何が起きたか、分からない。だけど、俺の周りを、走ってきていた四人が、囲んでいた。
 俺の目の前には、明さん。刃が黄色く光っている。そのまま、巨大な鬼に、飛びかかっていく。
 目の前にいた、鬼が、切り付けられた。片腕をなくした鬼が、明さんに向かう。
「チッ・・・・。」
 着地した明さんが、舌打ちをする。
「志乃!こいつらの動きを、一瞬でいいから止めて!達成、二人でやるよ!」
 明さんが、叫んだ瞬間、またお札が、紙吹雪のように飛んできた。
 達成さんが、視界に入った。達成さんの刃は、青く光っている。
 そのまま、明さんと、同時に飛んだ。二人は、クロスするように、鬼に飛びかかった。
 鬼の向こうで、二人が、着地した瞬間、目の前の鬼が、霧のように消えた。
 俺は、後ろに、恐怖を感じて、反射的に、振り返った。
 お札が、何枚もついた鬼が、俺に、手を伸ばしている。無理矢理、力ずくで、動いているようだ。
 強い光が放たれて、俺は、一瞬、目をつぶった。目を開けると、少し離れたところに・・・・俺が・・・・・?
 その俺が、ニヤリと、笑った。
 鬼たちの手が、もう一人の、俺に、伸びている・・・・。
「成二、ナイスですぅ!」
「うわぁ!」
 美桜さんの声が、聞こえると同時に、俺の体に、痛みが走った。そのまま、俺は勝手に、強い力で引きずられて、何が何だか、分からないうちに、尻餅をついた。
 俺の目の前には・・・・志乃さん・・・?俺の体には、美桜さんの持っていたものから伸びていた、ツタのようなものが、巻き付いていた。
 ツタが、離れる。
「優矢さんは、無事!一気に決めるよ!」
 志乃さんが、本に手をかざす。
「弱体化!」
 志乃さんが叫んで、手をスライドさせると、また、お札が舞った。
「皆さんとの、ご縁、感謝して、ここに、繋ぎますぅ!」
 後ろから、美桜さんの声がして、俺の周りを、ツタが飛んでいき、鬼に、絡みついた。
 そのツタの上に、明さんと、達成さんが、飛び乗ると、二人は踊るように、鬼に向かって飛んだ。
 一気に、鬼が、二体消える。そして・・・その先には、やっぱり俺がいる・・・・。
 鬼は、あと、三体。三体の鬼には、ツタが巻き付いていたけれど、引きちぎられる。
 二体の鬼が、両側から、明さんに、迫った。
 もう一体の鬼は、もう一人の、俺に、迫っている。
 明さんが、下から槍を振り上げると、鬼が、一刀両断された。でも、後ろから、もう一体の鬼が・・・!
 そう思った瞬間、赤い光が見えた。明さんの後ろに、幸多さんが、着地する。明さんに、迫っていた鬼は、消えていた。
 それと同時に、もう一人の俺に、迫っていた鬼も、消えた。達成さんだ。

「終了!」

 師範の、声が響く。
 終わった・・・・のか・・・・?
 もう一人の俺が、光を放った。光が消えたとき、そこには、成二さんが、立っていた。
 師範が、いつの間にか、俺の隣に、立っている。
 六人は、最初と同じように、並んで、師範の前に、正座した。武器は、消えていて、目も、普通の、黒い目に、戻っている。全員、息を切らしていた。
「さて・・・まず、美桜。」
 師範が、美桜さんを見た。その声は、とても冷静で、怖い。
「はい。」
 師範が、俺の方を向いて、近づくと、袖を、めくり上げた。そこには、ツルの跡が、くっきりと、残っていた。今、見たもの、全部、事実なんだ・・・。
「力の強さの、コントロールが、できておらん。人間を縛るときの力を、強めてどうする。この傷、その目に、しかと、焼き付けるがいい。」
「はい。精進します。」
 美桜さんが、頭を下げた。
「達成。」
 師範が、俺の袖をおろして、立ち上がると、達成さんを見た。
「はい。」
「力と、スピードの、バランスがとれておらん。お前は、接近戦でこそ、力を発揮する。力を上げたときに、スピードが落ちては、意味がない。」
「はい。精進します。」
 美桜さんと同じように、達成さんも、頭を下げた。
 達成さんは、あんなに、鬼を倒していたのに・・・。全く、褒めないんだ・・・。
 それに、この、静かな怖さ・・・。
 幸多さんの、無言の怖さは、遺伝だったのか・・・・。
 俺は、そんな、どうでもいいことが、頭をよぎっていた。
「志乃。」
「はい。」
「弱体化が、弱い。後方に、まわるのであれば、もっと弱体化の力を、強くしないと、あの程度では、支援でも、なんでもない。」
「はい。精進します。」
 志乃さんも、頭を下げる。
「成二。」
「はい。」
「身代わりの、詰めが甘い。ただ、光を大きくするだけでは、意味がない。相手が、単純なあやかしだから、通用したようなもの。」
「はい。精進します。」
 成二さんが、頭を下げた。
「明。」
「はい。」
「相手の力を、瞬時に、見極めることができなくて、どうする。人数がいたから、最初の、お前のミスを、カバーできたが、単独の時じゃ、その一瞬が、命取りだ。」
「はい。精進します。」
 明さんが、素直に、頭を下げている・・・・・。
「幸多。」
「はい。」
「全ての、動きが、なっていない。あんな動きじゃ、巫女様どころか、人一人、守ることも、できん。」
「はい。精進します。」
 幸多さんも、頭を下げた。
「総評。今のお前たちは、あやかしこそ、相手にできるかもしれないが、能力者相手じゃ、必ず隙をつかれる。いつでも、全員が、そろっているわけではない。精進を怠るな。以上。」
「ありがとうございました。」
 六人が、一斉に言うと、頭を下げた。
 どうやら、これで、今日は、終わりのようだ。
 なんだか、ものすごく、時間が、経った気がする・・・・。
 肩の上では、ポーが、呑気に、大きなあくびをしていた。

 六人が、道場から出て行って、俺と師範は、二人きりになった。
 たった今、見たことが、全て、夢に感じる。突然、異世界に、放り込まれたようだ。
 だけど、俺は、どこか冷静だった。
 ずっと、俺のことを、苦しめてきたものが、やっと、どういうものなのかが、分かった。
「どうだったかな?」
 師範が、元の、優しい声で、俺に言った。
「・・・正直、怖くて、何も・・・・。自分を、苦しめていたものが、なんなのかは、少し、分かった気がするんですが、これからどうしたら・・・。」
 俺の言葉に、師範が、うなずいた。
「優矢くん、君のことは、明を中心とした、先ほどの者たちが、必ず守る。もちろん、私や、明の祖父もだ。だけど、いつまでも、全員が一緒に、いられるわけではない。それは、分かるね?」
 俺は、黙って、うなずく。
「だから、私と、明の祖父は、考えた。優矢くんが、自分で、自分の身を守れるようになる、方法を。だが、どんな方法が良いのか、答えはまだ、出ていない。少し時間をかけてでも、優矢くんの様子を見ながら、その方法を、考えていきたいと思う。」
「・・・・・はい。」
「最初は、驚いたが、その龍神様の子供も、きっと、君を守る、守護神となってくれるはずだ。そして、明たちは、今が一番、力が強い時期。私と、明の祖父は決意したんだ。特殊な能力を、人々を操るための、道具にしようとしている組織・・・優矢くんや、絵里さん、そして、明たちを、狙うものを、明たちが、高校生の間に、壊滅させると。」
「えっ・・・・。」
 俺は、言葉を失った。それじゃ、あの絵本に書いてあったことが、現代で、起ころうとしているのか?
「理解するのは、難しいだろう。時間をかけよう。組織の壊滅は、明たちの、役目だ。君は、自衛の方法を、我々と一緒に、考えていこう。」
「・・・・・・。」
 俺は、黙って、下を向くことしか、できなかった。
 だって・・・俺には、大きすぎる、問題だ。どうしろというんだ・・・。
 だけど、今日、鬼に狙われたとき、自分は、本当に、狙われる存在なんだと、感じた。
 俺は・・・今は、流れに、身を任すしかないんだ・・・。

 その夜、俺は、布団に入っても、ずっと、あの不思議な修行の光景が、浮かんでいた。
 また、眠れない日を、過ごした。

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