龍神様はチョコレートがお好き

Emi 松原

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龍神様はチョコレートがお好き

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終結~愛される者~

「母さん、母さんは、初詣、何を、お願いするの?」
 俺は、子供の頃の、俺の声が聞こえて、ゆっくりと、目を開けた。
 ここは・・・・。
 俺は、学校ではなく、神社にいた。
 多くの人が、すれ違い、屋台が、立ち並ぶ。
 そんな中、小さな俺と・・・母さんが、いた。
「優矢。初詣はね、お願いするものじゃ、ないのよ。」
 久しぶりに聞く、母さんの声。
 俺は、思わず、見入っていた。
「え・・・?でも、みんな、お願いしてるよ。」
「えぇ。でもね、本来はね、神様に、挨拶をして、感謝をするのよ。」
「感謝?」
「そう。感謝。いつも、見守ってくれて、ありがとうって。無事に、過ごさせてくれて、ありがとうって。」
「ふーん。」
 俺は、興味が、なさそうだ。
「ねぇ、母さん、おみくじ!!」
 母さんは、笑顔で、俺に、おみくじを、引かせている。
「あー。大吉じゃ、ないや。」
 残念そうに、俺が言った。
「優矢、おみくじは、神様からの、お言葉よ。見て。ここを、見るのよ。」
 母さんが、指をさす。
「ときくれば・・・枯木とみえし・・・やまかげの・・・さくらも花の・・・さきにおいつつ・・・。」
「そう。今は、冬のように、枯れ木だけれど、これから、春が来て、花が咲くって意味よ。」
「冬の後には、春が来るのは、当たり前だよ。」
「そう。冬は、必ず、春になるの。明けない、夜はないし、止まない、雨も、ないのよ。だから、冬は、冬に、感謝して、雨には、草木を育ててくれる、感謝をするのよ。」
「よく、分からないよ。」
「ふふふ・・・。神様はね、いつも、私たちを、見守ってくれる、存在なのよ。」
 母さんが、笑う。
 母さん・・・。
 今なら、母さんの言ってること、なんとなく、分かるよ。
 母さんは、神社が、大好きだったね。
 いつも、感謝していたね。
 俺は・・・。
 神社に住まわせてもらっているのに、一度も、挨拶の、お参りも、しなかった。
 魂取りに、狙われて、守ってもらった後も、感謝しに、行かなかった。
「じゃあ、神様に、お願いをしたら、いけないの?」
 初詣の列に、並びながら、俺が聞いた。
「そんなこと、ないわよ。だけどね、神様に、願いを叶えてもらうには、いつも、誠の心をもって、清く正しい、お願いをするのよ。そうすれば、必ず、神様は、答えてくださるから。」
「今日の母さん、難しいよ。」
 俺は、そう言うと、屋台の方に、夢中になっている。
 母さん・・・・。
「母さん!!」
 俺は、母さんに向かって、叫んだ。
 母さんが、俺の方を、見た。
「優矢、信じて。神様は、あなたを、見捨てたりはしない。もし、お願い事が、叶わなくても、それは、その経験が、春になるために、必要だから。そして、本当に、誰かの為に、祈るときには、真っすぐに、声を出して、お願いをするのよ。そうすれば、必ず、神様は、聞いてくださっているから。」
 母さんが、消えていく。
 待って、母さん!
 俺、まだ、母さんに・・・・!!

「はっ・・・!!」
 俺は、目を開けた。
 今のは・・・夢・・・?
 俺は、隣を見た。
 明さんが、倒れていて、俺を、睨んでいる。
「なんで・・・・!止めたのよ・・・・・・!!」
 でも、今の俺は、明さんに、睨まれても、ひるまなかった。
「だって、明さんが死んで、守られたって、嬉しくないから!!俺は、明さんと、絵里さんと、幸多さんと・・・皆が、大切な、人だから!!」
 俺は、そう叫ぶと、周りを、見渡した。
 皆、倒れていた。
 恒夫さんと、明さんのおじいさんも、あやかしを相手にするのに、手がいっぱいだ。
 MAKOTOの高笑いが、響き渡る。
「愚かですね。私たちに勝利する、ほんの少しの希望を、自ら、無にしたのですから。さぁ、遊びは、終わりです!」
 俺は・・・・。
 絵里さんの、言葉を、思い出す。
 自分自身を、信じて・・・・。
 母さんの、言葉を、思い出す。
 真っすぐに、声を、出して・・・・。
 俺は、ゆっくりと、立ち上がった。
 そして、叫んだ。

「神様!!俺を、大切な、仲間たちと、出会わせてくれて、本当に、ありがとうございます!俺、皆と、出会えたことに、本当に、感謝しています!魂取りに、狙われたことも!それで、皆が、どれだけ頼りになる人か、知りました!呪いの時は、絵里さんの為に、何かしたいと、思いました!そして・・・騙されたときは、絵里さんの、皆の、暖かさが、どれだけ有り難いものか、知りました!全部、必要な、経験でした!!だから・・・。どうか、お願いします!!俺の、大事な仲間を、守ってください!!お願いします!俺を、守ってくれる、皆を、守ってください!!」

 涙が、こぼれてきた。
 その瞬間、町を囲む、篤森山が、光りはじめた。
 皆が、驚いて、その光景を、見つめる。
 山が、川が、空が、光輝いている。
 そして・・・・。
 五つの神社が、ある場所から、光の、柱が、吹き上がった。
 鬼、桜、犬、狐・・・そして、龍。
 それらが、俺たちに、向かってきた。
 何が、起こって・・・・。
 その光は、それぞれの、加護を持つ皆に、飛び込んでいく。
 皆が、光る。
 俺は、驚いて、その光景を、見ていた。
「この力・・・。」
 明さんが、つぶやいた。
「優矢さん!早く、こちらへ!!」
 絵里さんの、叫ぶ声を聞いて、俺は、慌てて、絵里さんの傍に、戻る。
 光は、とめどなく溢れ、皆の中に、入っていっている。
「・・・・これは・・・・。自然神様達の、力・・・。」
 明さんのおじいさんが、驚きを、隠せない様子で、言った。
「・・・みんな!!みんなで、決めるよ!!」
 明さんが、光をまじまじと見た後、何かを決意するように、叫んだ。
 皆が、明さんの元に、集まる。
「我、龍神の加護を、受けるものなり!龍神よ。この町を、この世界を、守るために、どうか、力を、貸したまえ!」
「我、龍神の加護を受け、龍神の姫を、守る者なり!!龍神よ。龍神の姫を、守るために、どうか、力を、貸したまえ!」
「我、鬼神の加護を、受けるものなり!鬼神よ。我らが愛する者達を、守るために、力を、貸したまえ!!」
「我、犬神の加護を、受けるものなり!犬神よ。我らが、帰る場所を、守るために、力を、貸したまえ!」
「我、稲荷の加護を、受けるものなり!稲荷よ。美しい、この風景を、守るために、力を、貸したまえ!」
「我、縁結びの、桜の加護を、受けるものなり!!桜よ、どうか、悪縁を断ち切るために、力を、貸したまえ!!」
 一斉に、皆が、叫んだ。
 皆が、光輝いた。
 その光は、どんどん、どんどん、どんどん、大きくなっていって・・・・。
 俺たちは、光に、包まれた。
 俺は、とっさに、絵里さんを、抱きしめた。
 暖かくて、優しい光が、俺達を、包み込んだ。
「これは・・・・・・・・!!くそぉぉぉぉぉぉ!!」
 MAKOTOの、叫び声が、聞こえた。
 そして、俺は・・・。光の中に、母さんを、見た。
「母さん!!」
 俺は、ありったけの声で、叫んだ。
 母さんは、微笑んでいた。
 そして、母さんの、唇が、動いた。
「優矢、忘れないで。冬は、冬に感謝して、雨には、雨に、感謝することを。そして、必ず、春が来て、雨は、止むことを。」
「うん・・・分かった・・・。」
 俺は、そう答えながら、意識を、失った。

 優しい雨が、俺の頬に、当たっていた。
 俺・・・。
 ゆっくりと、目を開ける。
 あやかしは、消えていた。
 俺は、隣で倒れていた、絵里さんを、必死で、揺すった。
 絵里さんが、目を開ける。
「優矢さん・・・。」
 絵里さんが、つぶやいた。
 俺は、ホッとした。
 皆を見ると、次々と、立ち上がる。
 MAKOTOも、キラ研の人も、いない。
 どうやら、戦いは、終わったようだった・・・・。
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