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帰宅する人形
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しおりを挟む「あのね、ちょっと、松子ちゃんと一緒に来て!!」
そう言って、音羽は、無理矢理二人を大学の中にある一室に連れて行く。
「ここ! 私たちのサークルなの! 被服サークルなんだけどね。人形をモデルに、コンテストとか、展示会に出ているのよ。今ね、次のコンテストの為に、和服を制作しようと思ってデザイン案を出していたんだけれど……。いつも使っている洋風のドールちゃんはね、きらびやかな和服は似合うんだけれど……。素朴で、それでいて凜としたたたずまいで、でも可愛さも入った、正に和!! って感じが似合う子がいないか探していたの。だから、良ければ、松子ちゃんをモデルにさせてくれないかな!?」
たたみかける音羽に、虎之助はついていけていない。
「俺にはよく分からんが、松子が良いなら」
「これが、デザイン画!!」
そこに描いてあったデザイン画を見て、松子の目が、輝いた。
《虎之助、私、この服着たいわ》
「む。そうか。この服が着たいらしいぞ」
「やったぁ!! 松子ちゃんって、ほんと、和風なのに可愛くて! イマジネーションめっちゃ沸くの! っていうか、虎之助くん。松子ちゃん、せっかく可愛いんだから、もっとお手入れしてあげなきゃ。連れてきてくれたら、いつでもお手入れしてあげるから」
そう言って、音羽は、人形用のブラシ、そして人形用の手入れ道具を使って、松子を綺麗にする。松子は、恥ずかしそうに微笑んでいたのだった。
数週間後。とある場所で、人形にそれぞれのグループがデザインした服を着せた、展示会が開催された。服の作り手にとって大事な展示会の為、様々なサークルが参加している。
その中で、一際人の目を引いていたのが、松子だった。綺麗に髪を結い、着物をきっちりと着て、静かに座っている。周りには、梅の花がモチーフに飾られていた。他の洋風のドールと違ったその風貌が、多くの人の足を止め、感動させたのだ。
そこへ、安明と陽一が、好子とかりんを連れて、会場にやってきた。
二人は、今回のことの顛末を、好子とかりんに伝えていた。もちろん、松子の気持ちも。
松子を見た好子は、泣き出した。昔、大好きだった人形。娘に渡すほど、大好きだった人形。母との思い出の人形。
かりんも、松子をじっと見つめていた。周りに自慢できる物を持てるようになって、友達が羨ましく思ってくれる中、松子が古くさく感じた。こんな古くさいものを持っていると、笑われるんじゃないか、そもそも、今の私には必要ない。そう思ってしまった。今の松子は、こんなにも輝いている。私は、一体今まで、何を見ていたのだろうかと。
これが、最後のお別れだ。
「……ごめんね。大好きだったよ。……今まで、ありがとう」
《私もよ、かりん。大好きよ、ずっとずっと。……バイバイ》
松子の声は聞こえなかったが、あたたかい想いを感じた二人は、会場を後にした。
安明と陽一が、静かに笑う中、虎之助は、きらびやかな人形には興味がなさそうに、静かに空気椅子をしていたのだった。
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