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捨てられた白蛇
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しおりを挟む捨てられた白蛇
「ここ、どこだ? また、あの夢か?」
畑中 耕也は、見知らぬ森の中に立っていた。ここが夢の中だと分かるのは、ここ最近、幾度となくこの夢を見るからだろう。
森の中は薄暗く、方向感覚も全くない。夢の中のはずなのに寒くて、辺り一面から視線を感じ、押しつけられるような、潰されそうな恐怖に襲われる。そこから逃げようと、とにかく走るのだが、全く風景は変わらない。
夢から覚める直前には、何者かに追われ、必死で逃げている。もう少しで捕まってしまう。その瞬間に、いつも一瞬見えるのは、幼い頃の自分が、何かに手を合わせている姿。
「やっぱり、夢だったか……」
耕也は、寝汗を拭って時計を見た。時刻は夜中の三時過ぎ。
春から大学生となり、初めての一人暮らしを始めたせいか、ストレスが溜まっているのだろうか。そう思い、水を飲みに台所へと向かう。
蛇口をひねると、ぬるり、と何かがシンクに落ちた。
「ひっ……!!」
そこには、とても蛇口から出てきたとは思えない、大きくて長い、白蛇がうねっていて、その頭がこちらを向いた。
「うあっ……」
声を出したいのに、声が出ない。
その瞬間、耕也はスマホの着信音で飛び起きた。今のも、夢だったのだ。
スマホの画面に映る、《母》の文字に、耕也はため息をついた。だが、出ない訳にもいかない。
「もしもし……」
「耕也? ねぇ、今月からの仕送りなんだけれどね、なくても良いかしら? あなたはバイトもしているし、お婆ちゃんからの遺産もあるから、大丈夫でしょ?」
「ちょっ……。流石になしって……。授業料だって、生活費だって……」
「だって、お母さん達の生活も大変なのよ。新作のバックも出たし、新しいランチのお店にも行きたいんだもの。お父さんだって、今度のオークションは外せない品があるって言うんだもの」
「そんな……」
「良いじゃない。お婆ちゃんが、遺産はあなたに全て残したじゃない」
「それは……。大学の入学金と授業料、一人暮らしの初期費用で……」
「そういうことだから、よろしくね!」
一方的に、通話が切られた。
耕也は、夢の内容を忘れて、ため息をついた。
いつからだろう。両親が、あんなにも浪費をするようになったのは。そういえば、父方の祖父も、浪費が激しい人だった。逆に、祖母は堅実な人で、見事に家計のやりくりをこなしていた。
祖父が死に、しばらくして、祖母が死んだ。その葬儀の日、弁護士がやってきて、祖母が家を除く遺産の全てを俺に相続すると決めていたと伝えられたのだ。家は、父に相続されて、両親が住んでいる。
その遺産がなければ、俺は大学に入学できなかったかもしれない。諸々の費用に使わせてもらい、後はなるべく自分の力でと思い、奨学金をもらい、アルバイトを頑張ってきた。
それなのに、両親がこれだ。最近は電話が来たと思えば金の話で、今後授業も増えるのに、大学に通えるのかすら不安になってくる。
気持ちを切り替えようと、冷蔵庫に向かったとき、台所のシンクに目が行く。
白蛇……。
夢で見ると金運の吉夢とされているらしいが……。
この状況で金運なんか、どうやっても上がるわけがない。
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