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捨てられた白蛇
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《それでね、新しい衣装も可愛くて素敵だったわ。そうそう、今日は、音羽の後輩って子がいたんだけれど。その子、白蛇様を後ろにつけていたわ。あんまり良い感じじゃなかったけれど》
「へぇー。白蛇様ねぇ……」
いつものように筋トレをする虎之助を見ながら、楽しそうに松子が言った言葉に、陽一が興味を示したように返した。
「白蛇様ってさ、色んな説があるけれど、基本はお金関係が多かったりするんだよね。財布に皮を入れれば良いとかさ。でも、良い感じじゃなかったっていうのは気になるなぁ。虎ちゃんが踏み込まなかったのなら、そこまでじゃないのかもしれないけれど」
「虎ちゃん経由で入ってくる案件は、色んな意味で大きいからちょっとね」
陽一の言葉に、安明が苦笑した。
※※※
「虎之助さんって人、なんだか不思議だったなぁ……」
耕也は部屋で一人つぶやきながら布団に入った。
虎之助が差し出したプロテインが、なぜか頭から離れない。あれは……なんだったのだろう。あれに近いものを、自分は知っているはず。それなのに、思い出せない。何か、とても大切なものだったはずなのに。
その日も、全く同じ夢。同じ感覚。次の日も、またその次の日も。
授業にも、バイトにも影響が出始めた。
寝るのが、怖い。白いものを見ると、蛇が連想されて、怖い。怖い。怖い。
「……くん!! 耕也くん!!」
音羽の言葉に、耕也は我に返った。
「ねぇ、大丈夫? 最近、様子がおかしいよ」
「せ、先輩……俺、どうしたら良いんでしょう……」
付き合いの長い音羽の前だっただろうか、部室に音羽以外誰もいなかったからだろうか。
耕也は、今まで押さえていた何かが外れたように大粒の涙を流した。
そして音羽に促されるまま、これまでの経緯を、全て話していく。音羽は、ずっと黙って頷きながら聞いていた。
「ねぇ……。虎之助くんに相談してみる? 虎之助くんがどういう反応をするかはわからないけれど、もしかしたら、《キカイ》の方達の力も借りられるかもしれないし」
音羽の言葉に、耕也は、静かに頷いた。虎之助のことは、正直、よくわからなかった。でも、初めて会っただけで、蛇という言葉を出していた。だから、信頼できるはずだ。
音羽が、スマホを操作して、虎之助に電話をかける。
「もしもし? 虎之助くん? 今日、バイトかな。うん、今から、部室に来てくれたら嬉しいんだけれど。うん、うん。分かった、ありがとう。待ってるね」
音羽は電話を切ると、耕也に微笑みかけた。
「今日は、遅い時間のバイトだから、来れるって。松子ちゃんのことだと勘違いしてたけれどね」
耕也は、その笑顔を見て、少し安心して頷いた。
※※※
「そんな感じで、生活にも支障が出てて……」
《完全に、白蛇様の影響ね。ねぇ、この子、良い子だし、助けてあげたら?》
「む? 一緒に筋トレでもするか?」
《もおー、違うわ! 陽一と安明を呼んでちょうだい!》
「む……。音羽。松子が、ヨーくんとやっすんを呼べと言うんだが、どうすれば良い。ここに呼べば良いのか?」
虎之助の言葉に、音羽が頷く。
「うん。ここはサークルの部室だから、他の大学の人が入っても大丈夫だと思う」
耕也は、虎之助の言っていることがあまり理解できなかったが、音羽が、《キカイ》のメンバーの人が来てくれると、耳元で教えてくれた。
「で、やっぱり来ちゃったって感じだよね。虎ちゃんからたまーに来る、大型案件」
安明が、音羽に出してもらったお茶を飲みながら、苦笑する。
「俺じゃないぞ。松子だぞ」
珍しく、虎之助が反論した。
「じゃあ、松子ちゃん案件だね」
陽一が笑って言ったが、その目は、耕也の後ろをじっと見つめている。この案件がどれほど重いものなのか一番理解しているのが、陽一なのだ。
「じゃあ、本題に入りますね」
安明がそう言うと、依頼者に向ける用の、仏スマイルになる。
「単刀直入に言いますと、あなたの後ろに、白蛇様がついています。それも、かなり神格の高い方だと。その白蛇様が……」
安明は、そこまで言うと、陽一を見た。陽一が頷く。
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