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テオ
しおりを挟む「それはダメポロ。汚いポロ」
「ちょっと、何? あたしの唾は汚い? ちゃんとミントの歯は噛んでいるわよ!」
「あたたた」とジュリエッタとポロットが言い合っている間に、打たれた頭を押さえているテオに、エヴリンが非難を混ぜた説明をした。
「バカ! 大勘違いして。この人達は偶然森の中であった人。バロード様の治療を受けに来た人達よ」
「え!」テオが目を大きくする。
彼はがばっと起き、そのまま半泣きで頭を下げた。
「申し訳ありません! 完全に俺の間違いでした迷惑を掛けて、何て謝っていいか」
「本当よ、いきなり斬りかかるなんて、トウヤやあたしじゃなかったら大変なことになっていたわ」
論争の末ポロットをぶん殴って黙らせたジュリエッタが厳しく責める。
「済みません」
肩を落とすテオに橙夜は何故か好感が持てた。彼の人懐っこそうな小さな目と下がり気味の眉が悪人には見えない。
「まあまあジュリエッタ。怪我人は出なかったんだし、それに彼は最初から僕を狙っていたようだから」
「そうなんです! その人がどこかあいつに似ていて」
「テオ!」エヴリンが顔を真っ赤にして咎めた。
「いや、その、あの」テオは下を向き、己の失態を恥じている。
「ほら、だからもういいだろ?」
橙夜はテオの肩を叩く。
「彼も反省しているし」
「ま、襲われた当人がそう言うならね」
ジュリエッタが肩をすくめ。場がようやく収まる。
エヴリンは丁寧に謝罪すると、リリルの村への案内を再開した。
「アイオーン、ちょっと」橙夜は出番の全くないエルフに囁く。
「なぁに?」
「気になることがあるんだ、少しエヴリンと話して気を逸らして」
「はぁぃ」
アイオーンは早足で彼女に近づくと、「最近のぉ男の子はぁ……」と少し寒気を覚える話題でエヴリンと盛り上がる。
橙夜は頭を垂れ最後尾についているテオに囁いた。
「どうして僕を襲ったんだい? バロードに関係あること?」
テオの目に光と怒りが蘇り、きっと頭を上げる。
「ああ、高名な錬金術師か医者か何か知らないが、あいつは、バロードは最低だ!」
テオの声が怒りにうねり、橙夜は頷いた。
彼にも分かった。先程の攻撃には明らかに殺気と憎しみがあった。テオは本気で橙夜を殺そうとしていた。
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