エルドリア王戦記~いつも俺の物を横取りする幼馴染が、俺の好きな人に告白しようとしている時に異世界に三人とも飛ばされちゃった。

イチカ

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あの時

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「やあ、ぼくりょうへい、なかよくしよう」
「橙夜、ゲームしようぜ」
「また一緒のクラスだな、よかったぜ」
「部活決めたか橙夜?」
「同じ高校なんてすげーな」

 色々な声がこだます……そして最後に、

「てめえら、覚えてろよ……」剥き出しの憎しみと共に発せられた台詞。

 ……どうして亮平は……あの赤い髪のエルフは何を……どうやって生きてきたのか……。

 亮平を思うと橙夜の胸に嵐が生まれる。

 ……僕はどうすればいいんだ?

「……トウヤ君てばぁ」

 はっと彼は頭を上げる。いつの間にか目の前にエルフのアイオーンが立っていた。どうやら何度か話しかけていたようだ。

「ごめん、何?」

「スミカちゃんがぁ、よんでるぅ」

 橙夜は唇を閉じると、居間と寝室を分ける天蓋の中に入る。

 澄香はすこしぼんやりした目つきだが、顔色もさほど悪くなく、橙夜は安堵した。

「ごめんね……」澄香はいきなり謝る。

「何で謝るんだい?」
「何だか迷惑かけちゃった……女の子って不便よね」

「そんな事ないよ、澄香ちゃん。君は十分役に立っているよ。むしろ僕が能なしなんだ」

「うーん」と澄香の眉根が寄る。

「まず『ちゃん』はいいかな、それから橙夜君は能なしじゃないよ」

 橙夜は真っ赤になる。

「でも、亮平に適わなかったし、いつもみんなに助けられているし」

 ふるふると澄香は枕の上で首を振る。

「何言ってんの? みんなを助けているのは橙夜君だよ」

「……僕も『君』はいいや……澄香……さん」

「『さん』なら橙夜君のままにしますー。よわよわなんだから……考えてみてよ、この世界に来てから」

 澄香は掛け布団から手を出し、何本か指を立てる。

「まず私を助けてくれた、次に噛まれながらタロを助けた、ゴブリンだっけ? を殺しながらジュリエッタを、ポロットを、ジュリエッタに殴られながらマーゴットを、そしてエヴリンさんを助けようとした……橙夜君はずっと誰かを助けているのよ」

「だけど」橙夜は歯を食いしばる。

「亮平君のことはあなたのせいじゃない。彼はどうであれ自分でああなってしまったの…
…もしかしてずっとそうだったのかもしれないけど」

「亮平は……いい奴だったんだ」

 くすり、と澄香が笑みを漏らす。

「ほら、今だってあんな酷いことをした亮平君を庇っている……橙夜君はね、優しいんだよ、誰よりも」

 あんまり慰めにならなかった。この力が至上とされる世界で『優しさ』に意味があるのか。

「優しさは大事だよ」澄香は素早く彼の心を読んだ。

「そのお陰でみんな家族みたいになったじゃない。ジュリエッタとアイオーンとマーゴットちゃんとポロットとリノットとタロ……そして私と橙夜君……私も元の世界の家族が恋しいよ、でもね、それと同じくらいみんなといる時間は尊いよ」

 澄香はちょいちよいと手招きする。だから橙夜は枕元に移動した。

「橙夜君はみんなをまとめる力があるんだよ、バラバラだったみんなを家族にする。それはきっとどんな力より大切だと思う」

 彼女は遠い何かを見ている。

「……あの時、亮平君に日高高校で告白された時、私すっごく頭に来た。だって橙夜君もいたから」
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