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重なる思い
しおりを挟む二人はしばし見つめ合った。緊張がガラスのように張りつめている。が、徐々に、固く結んだ紐が解けて行くように、それは緩む。
二人の唇は自然と近づいた。
「あっ! 私ミント噛んでない! ちょっと待って!」澄香は今更身を引こうとしたが、橙夜は構わず力一杯抱き寄せてキスをした。
二人の吐息と心は混ざり合った。
若さはそれで満足しなかった。橙夜の手が澄香の服の胸部の中に滑る。
が、澄香のぼんやりとした目が大きくなり、彼の頭を掴んでねじる。
「あれ……」
「…………」橙夜も澄香の言わんとしている事が分かった。
寝室を遮る布の天蓋に数人の人影がはっきりと見て取れた。
いつの間にか盗み聞きされていたようだ。
橙夜は目頭を揉むと、該当するだろう人物の為にわざと驚いて見せた。
「あ! 蛇だ!」
「きゃわー! へ、へび? どうして家の中にっ!」
人影の一人が騒ぐ。
「…………違うの」担がれたと悟ったジュリエッタが言い訳と共に天蓋をかき分ける。
「ええっと……あたしも疲れたから……その……少し、眠ろうと……そう、決して息を殺して推移を観察していた訳じゃないからね! 勘違いしないで」
対して続いて姿を現したアイオーンは直球だった。
「トウヤ君、スミカちゃんと仲良くなったのぉ? ならぁ私とも仲良くぅなろぅ。私ぃ、ハーフエルフが欲しぃ」
「アイオーン!」ジュリエッタが飛び上がる。
「ずるい! じゃなくて……ええと、はしたないわよ」
揉める二人の横で、ハーフリングが毒ずく。
「ち、見逃したか。人間の交尾を見たかったのに」
「ポロット兄さん、ポロを忘れているわよ……わすれているリノ!」
……こいつらやっぱりキャラづけでポロとかリノとかくっつけてたのか!
騒ぎは続いたが、橙夜と澄香の目は冷えた。
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