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慣れ
しおりを挟むジュリエッタが腰のレイピアの柄を握るので、慌てたアイオーンとリノットが抑えた。
……そう言う所なんだよなあ……。
橙夜の嘆きに構わず、ドワーフは床に頭を伏せた。
「ともかくこの面子ならもう負けん、どうかわしに力を貸してくれ! 頼む」
「うーん」
ジュリエッタは腕を組み直して考えようとするが、今度は橙夜が先んじた。
「分かりました! お手伝いしましょう」
イデムは涙に濡れた目を上げた。
「え、ちょっと……」
意外な展開に、ジュリエッタが橙夜を小屋の隅に連れて行く。
「勝手に決めないでよ! リーダーはあたしよ」
「でもさ、可哀相だろ? あのイデムってドワーフ」
「あのねえ、あんたはこの世界のモンスターについて何も知らないでしょ? ケレイブ・ドルは意外に厄介なの」
「ジュリエッタ、俺はさ、今まで色んな人に助けられたからこの世界で生きて行けているんだ、と思っている。だから困っている人を見たら助けたい……もしかして、それが最も早くあの赤いエルフに近づく道かも知れない」
「心意気は認めるけど……さすがにお人好しすぎだし無茶じゃない?」
珍しくあのジュリエッタが弱気だ。
「……それに、ここからドルケルの山に行くなら……コルギットを迂回すると考えると……ナサバ沼の近くを通る……あそこには……あれやこれやが……きゃううううう」
両肩を抱いて身震いするジュリエッタに、橙夜は息を落とす。
「わかった、なら君は待っていてくれ……しかし残念だなあ……あのジュリエッタの剣の援護が無いのかぁ。ジュリエッタの剣はすごいのになぁ」
「当たり前よっ!」
いきなり彼女は叫び、小屋の人々の注目が集まる。
「私の強さは知っての通りよ! 私抜きで冒険? そんなの無謀も良い所、任せなさい!
私の剣はいつもあんたを守るわ! うふふふ、腕が鳴るわ」
何だかジュリエッタが分かってきた。
「さあみんな準備よ! 冒険者は冒険してこそだから! 困っている人を見捨てるなんて論外よ!」
張り切るジュリエッタに死んだ目の橙夜が続いた。
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