エルドリア王戦記~いつも俺の物を横取りする幼馴染が、俺の好きな人に告白しようとしている時に異世界に三人とも飛ばされちゃった。

イチカ

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旅路

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 ジュリエッタは張り切るが、出発は次の日になった。

 夜間の遠出が憚られたからだ。

 夜は怪物達も強くなるし、動物も危険だと言う。

 昼に目を盗んで澄香と逢瀬を重ねていた橙夜は安堵したが、ふと疑問が浮かぶ。

 ……蒲生さん、まさか知っていた……計算していた……そんな分けないか。 

 とにかくジュリエッタの小屋で一晩泊まることとなったイデムは、橙夜とポロットの部屋で寝た。

 だから橙夜とポロットは殆ど寝ていない。

 イデムの鼾が凄かった。

 次の日、目がちかちかするほどの晴天だったが、橙夜とポロットはずっしりとした疲労の中にいた。

「うんっ! 出発よ!」

 一悶着。

「いつもいつもお姉ちゃんばかりずるいずるいずるいっ!」
「何でリノットもお留守番ばかりリノ? レンジャーの腕なら兄さんと変わらないリノ!」
「わんわんわんうー」

 いつも留守番組のマーゴット、リノット、さらにタロまで反抗してきた。

 仕方ない。

 マーゴットを戦いに連れて行く訳にはいかず、彼女の護衛としてタロがいる。

 シャドードッグだけでは手が足りないかも知れないから、もう一人起き必要もあった。

「リノットはきっとトーヤより強いリノ!」

 さらっと橙夜の矜持を傷つけるリノットだが、アイオーンと澄香の説得により、何とか矛を収めた。

 いつものジュリエッタの「うるさーい!」はもう通じなかった。

「全く、どうしてマーゴットははあんなに……」

 経緯故にジュリエッタは機嫌が悪い。ぶつぶつと妹の悪口を呟き続けている。

 敢えて無視してイデムの背後に続くと、森の木々の間の歩きにくいまではない草地を進んだ。

 眠気が吹き飛ぶ。

 気持ちの良いほど青い空と、元の世界では嗅げない濃密な草木の匂い、マイナスイオンの塊を摂取しているような綺麗な空気が橙夜を包み、自然と肉体が軽くなる。

「良いところだね」

 弾んだ声にイデムの口元も綻ぶ。 

「じゃろ? 本来は魔物なんぞ出ない平和な道じゃ」
「うん? ならなんで出るんですか?」
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