【ライト官能】新しい義母さんに誘惑されて困ってます〜妖女たちに魅入られた僕の3,290日〜

向坂倫

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第三章 新しい家族

1 スイートルームデート

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「お疲れさまでしたー」 

 肩かけポーチのストラップにいくつもの荷造りテープをぶら下げた女性ADが、明るく大きな声でまわりに何度も頭を下げ放送の終了を告げた。僕ぐらいの歳だろうか? 胸でっけえ! けっこういい女なんじゃない、なんて、パツパツのポロシャツの胸をガン見していたら、

「光くぅーん」とむこうから大きな声がする。

 目の前には、テレビで見慣れた金色を基調にした、ど派手なセットが広がっていて、その真ん中あたりのカウンター椅子に腰かけ、小麦色に日焼けした母さんが太陽のように笑っている。

 今は日曜のお昼前。人気バラエティー番組の生放送が終わったところだ。本番中、息を詰めるように定位置に貼りついていた人々が、縦横にいき交い始めた。

 放送開始前に名刺を交わしたフロアディレクターが、僕の顔を覚えていてくれたらしく、こっちこっちと、気を利かせて母さんの横で手招きをした。バックヤードに立っていた僕はそれに応じて、テレビカメラの脇をすり抜けてセット中央に進んだ。

 黒ノースリーブのハイネックカットソー、膝にダメージの入ったスキニーなホワイトデニム、頭にはハットまで被って、文化人枠らしくないどこかのセレブマダム風な出で立ちの母さん。

 共演の女性タレントがふたり、そんな母さんを取り囲む。

「沙夜さぁん、きれいに日焼けしちゃって、日サロですかあ?」

 と、なんとかレイラって名前の人気モデルが、おっとりと話しかける。思ってたより小柄だし、顔がとにかくちいせー。

「仕事でインド。言ってなかったっけ?」と母さんが答えると、

 もうひとり、名前は忘れたけど主演映画の番宣にきていた新進女優が、

「あ、情熱、観させて頂きました。フィールドワークの様子も拝見させて頂いて、なんか感動って感じで……」と、頭を下げる。

 こっちは思ってた以上に美人でびっくり!

「はずかしいなあ、いくらなんでもあれは盛り過ぎよねっ。自分でも笑っちゃった」

 と、白い歯を見せて照れる母さん。

「お仕事にしてはきれいに焼け過ぎてません? 服の焼け痕もない感じ」

 カラフルなジェルネイルの指を母さんのカットソーの袖口に突っ込んで、中を覗き込むレイラ。

「仕事中は完全防備。仕事上がってから、毎日夕方に少しずつ、宿舎の屋上のシャワースペースで真っ裸になって焼いたの。日焼け止め塗って下焼きもちゃんとしたし、乳首にバナナの輪切りを載せたりしてね」

「ぷぷっ」と新進女優が吹き出し、

「うそだあ! 沙夜ちゃんおもしろーい」とレイラが笑う。

 そこに、さっきまで司会を務めていたお笑い芸人のひとりが声をかけてくる。

「ラギサヤ、昼メシは?」

「ありがとうございます。きょうは息子がきてるので……」

「あ、そうだった、そうだった」

 と僕に向かって微笑みつつ肩をポンと叩いて去っていく。そして母さんの前に立つ僕の存在にようやく気づいたふたり。

「息子さんって、沙夜さんおいくつ?」と、咄嗟に口を滑らした新進女優に、レイラがすかさず耳打ちをする。

 そんなふたりに僕は頭を下げた。

「母がいつもお世話になっています」

 平静を装いながらも、内心はドキドキだ。なにしろ、その顔をテレビで見ない日はないくらいのカリスマモデルと、このあいだまで毎週楽しみにして観ていたドラマのヒロインが目の前にいるのだから。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 ホテルまでは、母さんのマネージャーさんが送ってくれた。

「なあにさっきは。ADの女の子ジロジロ見てたでしょ。変わんないね光くんって。あとさ、やたらと名刺交換するもんじゃないわ。最近はグラビアのお誘いが引っ切りなしで困ってんの。連絡先売られてあなたの会社にまで、お母さんを説得してください、なんて電話かかってきたらどうするのよ」

 それを聞いていた運転中のマネージャーさんが口を挟む。

「さすがにみなさんそんなこと。でも……桜木先生、やっぱムリですかねえ?」

「ダメよ! わたしアイドルじゃないし、わたしの体は愛する夫と、……家族だけのものなんですぅ」

 と、後部座席に並んで座った僕の股間にそおっと手を伸ばす。

 その手の感触を楽しみながら、何食わぬ顔で僕も話に加わる。

「いくら女性誌だからって、魅惑の手ブラヌードなんて披露するんだもの、当然の結果ですよね、ナギさん」

「僕もあそこまでやっていただけるとは思ってもみなくて。ははっ、まあ、すごい反響でうれしい悲鳴ですけども……」

「そりゃナギちゃんはうれしいかも知れないけど、わたしはあくまでも研究者なんですから、いつまでも色モノ扱いしないでもらいたいわ。きょうだってさ、すっごく胸の開いた真っ赤なドレスが用意されてて、思わず私服で出ちゃったわよ」

「先生をそこまで疑心暗鬼にさせてしまった責任はすべてわたしにあろうかと。衣装の件は承知しました。以後気をつけないと、ですかねえ」

 そう言ってナギさんは運転に戻り、車内は静かになった。

 大通りに出るといくつもの桜の木が目に飛び込んできた。満開の桜、か。母さんと出会った頃のことが脳裏に蘇る。

 僕はあの年のお盆過ぎ、あっけなくAO入試で関西の美術系大学に合格した。その直前の夏休み前半には、受験前の大事な時期にもかかわらず、母さんの命により二週間、ニューヨークへ放り出された。母さんの『いい子』な方の後輩の部屋にシェアさせてもらって、マンハッタンやブルックリンじゅうを自転車で駆け回り、美術館に何度も通った。そしてその記録をブックにまとめて入試の面談に持参した。春から始めた実技の進捗が芳しくなかったことを気にした母さんの采配が功を奏し、僕は大学に合格できたのだと、今でもそう思ってる。

 それからも、「大学も受かったしあんた暇でしょ。年末、ふたりで一緒に海外にいかない?」と僕のペニスを弄びながらの、母さんの夢のような甘い誘いにうかうか乗ってしまい、高校最後の冬休みには、下っ端の助手として南インドで大いにこき使われた。

 そして、母さんとのあれこれは、そのあとも続いた。親父は相変わらず出がちだし、母さんも僕たちの醸す『ただならぬ親密な空気』づくりに余念がなかった。

 洗面所で歯を磨く僕にうしろから密着して耳元で囁く母さん。その脇を風呂上がりの親父が、「いつもいつもお熱いことで」と通り過ぎる、みたいな、異常な家族の情景が頻繁に繰り返されたのだ。

 男子校出身にもかかわらずそんな僕の性的成熟が手伝ったのか、大学ではそこそこモテた。どこで聞きつけたのか僕の海外経験につられて、女子たちが寄ってきた。

「桜木くんって、ほかの子となんか違うよね」

「ねえ、光くんのこと、ピカって呼んでいい?」

「やあだぁもう、ダメっ、ピカったらえっちぃ……」

 しかしそんな幸せは長くは続かない。

「じぶん、舐めてんか。きしょいねん」とクラブに通い詰める自称ビッチの大阪女子に、ラブホのベッドの上で罵倒され、

「あんたの理想のひとに、わたしは到底なられへんと思うしぃ」と、二年半つき合った清純派京都女子からは、夕暮れの三条大橋の上で、はんなりと別れを告げられた。

 もう女子はいい! 僕には絶品Gカップの超絶かわいい母さんがいるのだ! それに男はやっぱ仕事だよね。仕事で好きなことをしようではないか。

 なにかと流行を後追いしがちなリアルクローズの世界にあって、ほかとはひと味違う独創的で華のある服を東京から世に送り出している、そんなあこがれのアパレルメーカーに、幸いにも就職できた。

 リクルートスーツが居並ぶ中、私服で面接に臨んだのがよかったのか、面接官とばかな話を交わせたのがよかったのか、とにかく僕は、初めて母さんと会ったあの日、母さんが指針を示してくれた、ファッションの世界に一歩、踏み出すことになった。そして話題に事欠かないそんな幾多の経験をさせてくれた母さんに、僕は感謝した。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 ホテルの車止めでナギさんと別れロビーラウンジ横をふたりで歩いていると、ひとに干渉しない都会の地でありながら、それでも多くのひとの目が自然と集まり始めた。

「あっ、ラギサヤ!」と小学生くらいの女の子が声を上げると、母さんが微笑んで小さく手を振って応える。

 二年前、地方局の働く女性特番で母さんのことが取り上げられたのがすべての始まりだった。美人過ぎる文化人類学者の噂はネットを中心に瞬く間に広がり、週刊誌やスポーツ新聞への露出を経て、人気毒舌タレントが司会のバラエティー番組にゲストで呼ばれることとなった。

 知的美人の第一印象とは真逆な天然キャラでもって、のらりくらりと司会を翻弄するユーモラスな場面が話題となって、一気に火がついた。

 一年前にはプロ野球の始球式で初マウンドにも立った。

「ズルせずちゃんとマウンドから投げたいし、ワンバンなんてかっこ悪いことできないから、今練習中なのよ」と電話で僕に朗らかに語っていた母さんだったが、果たして本番では、とても運動音痴の素人とは思えない見事なフォームでキャッチャーのミットに速球を決めた。母さんのマウンドでの勇姿とボールを受けたキャッチャーの驚く顔が、幾度となくテレビに流された。あとから聞いたところによると、死んだ僕の祖母と仲のよかった、実家の近所に住む元プロ野球選手のじいさんが、つきっきりでコーチをしてくれたらしい。さすがばあちゃん、ナイスフォローである。

 桜木沙夜、略してラギサヤ。

 母さんは今、日本全国老弱男女に知られる有名タレントの顔を持つ文化人類学者であり、数年間の研究成果が報われて、准教授の地位にある。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 エレベータから降りて、毛足の長い絨毯の感触に少しばかり心が騒ぐ。

 通路ですれ違いざまのホテルスタッフが、
「おかえりなさいませ」と丁寧に頭を下げた。

「母さん、すっかり常連さんだね」

 初めて足を踏み入れた高級ホテルの最上階の雰囲気にあらがうように、僕は軽口をたたいた。

 となりを歩く母さんが、なんだか遠くに感じられた。

 そんな僕の気持ちを察したのかどうかわからないが、

「ハルちゃんとのこと、今でも思い出すのよ」
 と、七年前のあの日のことを懐かしそうに話し始める母さん。

「もう、笑っちゃうよな。あれ、まだ愛用してんの?」

「してるわよ。他の三名はシリコンが劣化してお亡くなりになったから、今はあの子だけ。ははっ、ばかなこと言わせないで」

「今やハルもふたりの子持ちだもんね。時間が経つのは早いよ。そう、先週ハルと唯さんから『ツーマムズで仲よくやってます』って写真添えてメールがきてた。ハル、前にも増して美人になっててびっくりした。また転送しておくよ」

 そうしてるうちに部屋に着いた。

 母さんがカードキーを取り出してかざし、

 僕が重めのドアを開ける。

 目の前は明るく広いスイートルームのリビング。

 ドアが閉まるとすぐさま、母さんは鞄とハットを投げ出して僕に纏わりついた。

「ずっと待ち遠しかったんだぁ」

「ラギサヤさん、まあ落ち着いて」

 瞬く間に上半身裸にされて、僕の乳首に吸いつく。

 社会人になって二年、仕事帰りのジム通いで得た僕の胸板を、舌を出しっ放しのまま頬ずりするラギサヤ。時折乳首に触れる舌裏の艶めかしい感触が心地いい。

「光くぅん、いい感じに逞しくなっちゃって、素敵よ」

「僕もどう? 焼けてるでしょ?」

「そうかしら、わたしの勝ちかも」

「なんだよ、ふたりでバカンスいってきたって話にするんじゃなかった? そのために先週から日サロに通ってせっせと焼いたのに」

「ごめんごめん。レイラちゃん見てたら嘘つけなくなっちゃった。あなたと目も合わせずにうつむいちゃってさ。かわいいの。……とりあえず、光くんを睨みつけるような子じゃ、なかったんだよね」

「ラギサヤさん? 火遊びが過ぎますよ。週刊誌にスクープされたりしたらどうするの?」

「あのね、家族ネタと同姓ネタは、滅多にスクープされないんだよ。オキちゃんがそう言ってたもん」

「司会の? あのひと僕の肩叩いて、なんか意味深な顔してたよ。母さんの口の固さは認めるけど、態度でダダ漏れなんじゃなあ……」

「うるさい! うるさい!」

 そう言いながらも、僕のベルトを外してジッパーを下ろしているラギサヤ。

「しつこくて困ってたけど、現状維持かな。あの子も家庭環境が複雑だからね。ほとぼりが冷めるまで、寄り添ってあげようかな」

「芸能界の淫乱避難所ってか。頭が下がります、ラギサヤ先生。なんなら僕も交えて、ここで3Pとか? 僕も口は固いよ」

「ばあか! 光くんだから相談したのに、変に茶化さないでくれる」

 あたたかい母さんの口の中。ラギサヤが僕のペニスを咥えてる。

「ごきゅっ、ごきゅっ……」
 いつもの喉奥責めが気持ちいい。

「母さん、わざと音立ててない?」

「ごわあっ、はぁ、……お蕎麦啜るのとおんなじ。この方が美味しいんだから」

「母さんも服脱いで? 僕も待ちきれない」

「じゃ」と言ってラギサヤは立ち上がり、ストリッパーがするように、自分で黒ノースリーブの胸を揉みながら腰をくねらせた。

「ねえ、気づかない? このお洋服」

「え? あ、やっぱりそれうちの? 胸ばっか目がいっちゃてたからさ……」

「あなたそれでも社員? 企画室なんでしょ! きのう、代官山のショップまでいって買ってきたの。あとでブランド名書いてSNSにアップしてあげるから、今のうちに写真撮って」

 と、スマホを投げてよこす。

「こんどからテレビ出演の時にはおたくの商品を着て宣伝してあげるから、便宜取りはからうのよ。わかった?」

「本来なら弊社からお願いしなければいけないところ、誠にありがとうございます。すぐにプレスに伝えて、こちらから先生の携帯にご連絡いたしますので、なにとぞよろしくお願いいたします」

 と、Vサインを送るラギサヤに向かって、笑い混じりに真っ裸でシャッターを切る僕。親心を振りまきながら腰をひねる母さんは、やっぱりかわいい。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 ひとが二、三人乗ってもびくともしなさそうな重厚なチークのテーブル上で、全裸のラギサヤが体をのけぞらせる。

 テーブル脇にしゃがんで、ラギサヤの裂け目に沿ったヒダを丹念に舐め上げたのち、ちょうど今、愛らしい肉の粒に舌先をつぶすように押し当てたところだ。

「ああん、ねえねえ光っ、もっとニョロニョロして」

 ほんの一時間ほど前、時事問題でメインコメンテーターのおっさんをまさかの理詰めで言い負かせていたラギサヤが今、僕の舌先に身を預け「ニョロニョロして」なんて言いながら、体を震わせている。

「あん、気持ちっいいっ! 早くぅ、舌っ、舌ねじ込んじゃってぇ」

 相変わらず注文の多いラギサヤに応えて、僕は淫口に舌を沈め、そこばっかりを執拗に舐め回すどこかの親父みたいに、ことさら首を回しながら、ドリルのように舌を進ませる。甘じょっぱい蜜が溢れ出る。

「入ってる、ああ、逞しい触手が入ってるっ。ああんもう、最高!」

 顎のつけ根がだるい。もう限界と舌を抜くと、ラギサヤはちょっと残念そうに下目づかいに僕の顔を見た。

「母さんの言いつけ通りに、飲み干したコーヒーカップの底を毎日舐めて舌鍛えてるんだけどな」

「もう、けなげな子。うれしい。いつまでもかわいい光くんでいてよね」と、頭を撫でる。

 それに応えて肉粒をくるくると舌で転がすと、

「やああ、あん、溶けちゃいそう、ああ、溶けちゃうっ!」と軽く絶頂してしまったラギサヤ。

 ひくひくと震える内股の筋を舐め上げて悶絶させたところで、挿入する。

「母さん久しぶり。気持ちいいよ。なんか、ちょっと痩せた?」

「はああっ、そうねえ。今回はむこうでだいぶ絞ったからね。ダイエット生活?」

「こんどはどこいってたの?」

「ケラーラ州よ。民族衣装のサリーってあるでしょ。あの下に着る服に、どれくらい西洋文化が溶け込んでるかの調査。プリントTシャツとかね。……ああっ、深いっ」

「でも屋上でタンニングとか、優雅じゃん」

「はああっ、ああ……、日に焼けてる方が、打ち解けてもらえていいの。今回は訪問調査が、メインだから、大変だったんだから。そこに先生がコンサル会社から安請け合いして取ってきた、ソックスの統計まで突っ込まれて、死ぬかと思った。先生、鬼だわ。……くうっ」

「親父と会社起こすんでしょ。そのための地固めなんだから、しかたないよ」

「きょうはね。疲れ切ったそんな母さんを、いたわって欲しいわ」

「たっぷりと、さらに疲れさせてやろうか?」

「ああん、光っ、もっと、もっと。はあああ……」

 薄目の奥の色素薄めな瞳が揺れる。

 母さんの両腕をつかみ上げて、腋から横乳にシャープに流れるコリコリとした筋肉を、かぶりつくように舐める。

 絞られた体脂肪の低そうな褐色の体の上で、充分な容積を持った形のいい乳房がゆらゆらと揺れている。

 性欲をそそる横乳の曲線に沿って現れた絶妙な陰影目がけて、歓喜の舌先が伸びる。

「すぅってきいぃ。光くん、素敵ぃ」

「母さんも素敵だよ。ほんとすごく焼けてる。異国の王女さまって感じ! すごく新鮮!」

「ああん、やだ、うれしい。レゲエダンサーみたいって言わたら、どうしようかと思った、……あああん」

「誰かに言われた? いいじゃんそれも。なにこのウエスト? すごくキレッキレ」

 体を屈曲させて、腹筋がほんのり浮き上がったおへそまわりを舐めそやすと、母さんはさらに体をたわませた。

「この浮き出た肋骨のガタガタ、好きだな」

 つま弾くと楽器みたいに音が出そうな見事な肋骨のくぼみ。そこに指を這わせてから、細く締まった腰をつかんで、奥まで力強く、何度も突く。

「や、や、や、や……、ああん」

 頃合いを見計らって動きを止める。

「やん、もう少しだったのにぃー」

「背中痛くない? 冷たくない?」

「うん、大丈夫! 光くんやさしいー」
 と、すぐに立ち直る母さん。

「母さんばっかりずるいんだ。こんどは僕のリクエスト聞いて?」

「なあにぃ、あなたいつの間にかチ×ポに薄皮被っちゃったみたいに余裕じゃない。出会った頃みたいに何度もイケばいいのに」

「それ言わない。……あのさ、このあいだの雑誌みたいに、手ブラやってよ」

「えっ、こんな感じぃ?」

「日に焼けちゃってちょっと印象違うけど、まあいいか」

「なによぅ、持ち上げたり落としたり……」

 ふくれる母さんを横目に、手ブラで覆われたバストに顔を近づける。

「あの写真で、何回も抜いちゃった。この横乳の影がエロいんだよなあ」

「もう、カノジョもつくらないで、高校の頃とおんなじようなことしてるんだから、呆れちゃう」

「あの手ブラヌードで、日本中の、どれくらいの男たちが、チ×ポしごいたんだろ。母さん、そんなこと想像したことある?」

「そんなのしてませんっ!」

「じゃあ、今想像してみなよ。ああ、ラギサヤエロい。まじラギサヤ神。今夜のオカズはラギサヤ。見てるだけで精子漏れそう。ふふふふ」

 僕は挿入したままのペニスに力を込めた。

「はあああん。ばか」

「母さんってば。さあ、少しずつこの閉じた指、開いてみて?」

 指の隙間が少しずつ開いて、限界ヌードを越えたきれいなピンクの乳首が姿を現す。

 僕はその片方の乳首に唾液を垂らした。

 指の隙間に溜まった泡だつ唾液にまみれて輝く、かわいいコリコリ。

 それを舌先で転がしてみる。

「はっ、はっ、あああん。気持ちいい」

「じゃあ、もうひとつも。母さん右胸の方が感じるよね」

 同じく唾液を垂らして、もう片方も舐める。

「あっ、あっ、あああっ。ダメ、もっと……」

 母さんの両手をどけて、乳房をわしづかみにする。

 尖り出た先端を口に含んだ。すでにコリコリに勃起している。

「やあん、ニョロニョロ気持ちいいっ!」

「輪切りバナナの効果だね。乳首黒くなってない。微妙に肌と同化して、乳輪がわかんないね。ああ、うめえ」

 乳首をちゅうと吸い引っ張ると、体に貼りつき揺れていた容積のある乳房が、気持ちいいくらい尖って伸びる。

 リップ音が小気味よく部屋に響き、唾液がいくらでも分泌される。

「やだ、やだ、またイっちゃう。はあああっ!」

「追っかけもう一回、イっちゃいなよ!」

 腰をつかんで、さっきみたいに突きまくる。少し背伸びして、母さんの腰を持ち上げながら、深く深く。

 チークのテーブルの上で弓なりになる汗ばんだ母さんの体が、まるでブロンズの裸像みたいに美しい。

 ――そしてそのあとも、スイートルームの窓前で、目の前に広がる湾岸の眺望を楽しみながら、立ちバックで母さんを何度もイかせた。

「きょうは大丈夫なんだから、中に出して。いっぱいドクドク味わいたいわ」

 いつもの寄り目で、僕に頬を寄せて囁く母さん。

 柱につかまって喘ぐ母さんの体は、鍛え抜かれたポールダンサーみたいにセクシーで、抜かずの三発の新記録を達成したのだった。

 ああ、疲れた。でも満ち足りてる。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「光くんのために無理してこの部屋にしたんだからね。ふだんはビジネスホテルのセミダブルなんだよ」

「おかげさまで、いい思い出になりました」
 と、僕は母さんに口づける。

 ルームサービスを頼んで、あこがれの映画みたいにシャンパン片手に、全然乱れてないベッドの上で、僕はピザを囓る。

「そうそう、言い忘れてた。僕の会社、実家の近くに移転するんだよね」

「え、なんで? あんな田舎に引っ込んじゃっていいの?」
 と、極彩色のクリームタコスを頬張りながら、下戸の母さんが答える。

「前世紀末、ファッションシーンに革命をもたらした世界的有名ブランドは、人口八万、イタリア北部の小都市に本社があるんだよ、ってこれ社長の受け売り。移転してランニングコストが抑えられる分、社員には海外経験を積ませてやるってさ」

「そういや、縫製工場が家の近くだって言ってたもんね。そこにってこと?」

「先代の時代、あっちでOEMやってて、息子の代になって自社ブランド立ち上げて東京に打って出たわけだけど、社員も増えてくるし、そろそろってことらしい。うちの会社、僕も含めてけっこうあっち出身のひとが多いんだよね。ヘッドショップとプレスルームだけ残して本社はまるごと移転。旧工場をおしゃれにリノベした自社ビル工事ももう終わってて、四ヶ月後には引っ越しなんだ」

「なんか素敵そうね。で、どこ住むのよ?」

「そりゃ、うちでしょ」

「ダメダメ、研究室のある大学の旧棟がとうとう来年取り壊すって決まったの。古いのをいいことに部屋いくつも使って収まってた本がうちに戻ってくるんだから、光くんの部屋なんて跡形もなく消滅よ」

「なにそれ、僕の帰る家はないってわけ? 悲しいこと言わないでよ」

「心配しないの。わたしの実家があるじゃない。あそこに住みなさいよ」

「ええっ? あそこにぃ」 

 かび臭いおんぼろ屋敷。僕は綾と初めて会った、あの螺旋階段の情景を思い返した。

「あ! 今、綾のこと思い出したんでしょ」

 と、首を伸ばして僕の顔を覗き込む。

「鋭いなあ、母さん」

 二年前、綾が結婚してあの家を出たと聞いた。桜木家宛の今年の年賀状にあった、つくったような笑顔の綾となんだかしまらない小太りな亭主の顔が嫌でも目に浮かぶ。

 綾があんな男と。

「綾と光くん、つき合えばいいのに、って思ってたんだよ、わたし」

 母さんが僕の心を逆撫でしながら、しみじみと言う。

「しかたがないだろ。僕も大学と就職で地元からずっと離れてたし、綾の代打で僕がインドいった時も、見送りにもきてくれなかったし、なんだか避けられてるみたいだって思ってたんだけど」

「もう、ムキになっちゃって。……あなたが連絡してくるの、綾、待ってたんじゃないのかな。光くんのそんな女々しいところ、母さん嫌いだな」

 わかったようなこと、言うな。

 鼻白んでいる僕に、そっと母さんが囁いた。

「綾んところね、なんかうまくいってないらしいよ」

 なんだか不穏な目つき。

「もしかして僕を焚きつけてる? 不倫しなさいって親はいないよ、ふつう」

「そりゃそうなんだけど、そうかもしれないけど。……あの子の亭主もその母親もわたし嫌い。あちらのお父さまは先生もよく知ってる堅実なひとだからいいんだけど、あのふたりはね。披露宴の時もさ、そりゃ立派な披露宴だったけど、あちらのお母さま、綾のご両親を見下してるのみえみえで、それに母子して目が笑ってないの。そりゃお偉い資産家の妻と息子かもしんないけど。ああ、気持ち悪っ!」

 ぶるぶると首を振りながらクリームタコスに大口でかぶりつく母さん。

 僕は唇についたどぎついピンクのかけらを、指で拭った。

「このままだと綾は羽ばたけないよ。間違いなく優秀な研究者になれるのに、わかってるのに。……ああ、悔しい!」

 車で送ってもらったあの日、ハンドルに顎を預けて顔を歪ませていた綾の顔が目に浮かんだ。

「うん、わかった。あっちに戻ったら一回連絡とってみる。あとで番号教えてよ」

「なあに? 初恋の相手に今から久々に逢いにいくみたいな、甘酸っぱい顔しちゃってさ」

 これでも精一杯、神妙な顔で答えたつもりなのに、そんな僕を見てクスクスと笑い出す母さん。

「甘酸っぱいってどんな顔? なに言ってんのさ。はいはい、わかりましたよっ。ミッションでしょ。こんどは母さんからの」

「ミッション、か。懐かしい響き……」

 そう言って、うっとりとした顔を見せたあと、

「はははは、やだウケる」
 と、手を叩いて笑う。

 久しぶりにテレビの中のラギサヤじゃない、母さんの生のばか笑いを聞いた。
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