王様のいいなり!

まぁ

文字の大きさ
1 / 69

1

しおりを挟む
 最悪だ……
 つい出てしまいそうになる言葉を何とか飲み込んだ加奈。
 まさか自分が加害者になるとは思いもしなかっただけに、この事態は人生最大のピンチとも言えるだろう。
 相手が相手なだけに、加奈は自分の立ち振る舞いなどに酷く困ってしまった。
 霧島加奈にとって最大にして最悪な日常の始まりだった……


 事が出来事はほんの二時間前……
 自宅のあるアパートから徒歩十分圏内にある加奈の勤め先は、五十階建てビルの三十階にある。その他の階には他の会社が入っており、四十階から最上階までは三社の外資系会社が占拠している。また、十階フロアにはカフェやそば・うどんなど各種店舗が入っており、お昼時になると各階の会社が集まる。一種の交流スペースのような感じだ。
 中でもカフェは加奈のお気に入りで、よく利用させてもらっている。ここのカフェにはオープンテラスもあり、春になるととても居心地がいい。
 大学卒業後して早三年。まだまだ仕事にムラがありながらも充実した毎日を送っている。今日も午前の業務を終え、昼食時にこのカフェにやって来た。加奈のお気に入りはサンドイッチとカフェオレで、それをテラス席で食べた。
 だが今日はいつもよりもゆっくりとした時間を過ごしたようで、時計を見ると十二時五十分。午後の業務が始まるまで後十分だ。
(やばっ!化粧直す時間ない!)
 慌てた加奈は、持ってきていた雑誌を片手にエレベータの方へと急いだ。このビルにはエレベータが数機ある。今からエレベータに乗って職場のある三十階に行ったとしても五分で行けるだろう。そう踏んだのだが、そういう日に限ってどのエレベータもなかなか十階に来ない。
「あぁもう……最悪!」
 待っていたら時間を過ぎると思った加奈は、滅多に使わない階段を上って行くことにした。運がよければ途中で乗れる。そう思ってダッシュした。
 このビルには世の中の禁煙傾向もあり、喫煙所を積極的に設けていない。なので大体五階置きくらいに非常階段の側で喫煙者は皆喫煙をしている。
(臭い服に着くっ!)
 十五階辺りで一つ目の喫煙所にて昼食後の喫煙サラリーマンと遭遇。どこの会社の人達なのかはさっぱりわからないが、皆パリッとした品のいいスーツを着ている。首から下げられたパスケースに赤と黒のクロスが見えた。
(あぁ……外資の人達か……)
 上層階にある外資系三社の内、ちょっと名の知れた会社の人達だ。見分け方はパスケースに赤と黒のクロスが入っている事。とはいえそんな悠長な事を思っていられるほど加奈には時間がなかった。少し余所見をしてしまったが、階段を勢いよく駆け上がる加奈は、ドンッと思いっきり何かにぶつかった。
「すみま……って、うわぁ!」
 足元がもつれ、身体が宙に浮く感じがした。
 やばいっ!
 そう思ったのも刹那。このまま階段から落ちる事は免れないと覚悟した。案の定、凄まじい電撃が背中の方からビリビリと来た。
「おっ、おい!南条!大丈夫か?」
 喫煙していたサラリーマン達がここぞとばかりに声をかけるが、それはどれも南条と呼ばれる相手に対してた。自分の名前は霧島で……しかも自分の事を心配してくれてないのか?そう思っていた加奈は、ふと階段から落ちた時の衝撃がさほどない事に気が付く。
 おかしい……
 何かがおかしいと思った瞬間、自分の下で男の唸るような声が聞こえてきた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

処理中です...