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「あっ、そういやあんたの名前まだ聞いてなかったな」
「えっ?」
「名前くらいあるだろ?」
「そりゃ生きてますから……」
「名前は?」
「霧島加奈です」
「そっか、なら加奈。さっさと運転しろ。道案内は俺がする」
早々に下の名前で呼ぶ明人に加奈はなんとも言えない複雑な気分だった。
この調子で住み込み介護など出来るのだろうか……話のキャッチボールはほとんど機能してない。医者は完治するのは一か月かかると言っていた。一か月も耐えられるのだろうかと思ってしまう。
明人の高級車に乗り込んだ加奈は、教習所以来の車に緊張した。どうやって動かすのか、どれをどうすればいいのかなど、ブツブツ言いながら復習していると、明人が隣からいろいろと教えてくれた。
ようやく車を発進させ、一般道に出た瞬間に加奈はビクビクとした。スポーツカーなのに法定速度以下のトロトロ運転。周りの車はスイスイと通り抜け、それだけでも恐ろしいのだが、隣にいる被害者は「車間距離を開けろ」だの「前を見ろ」だのとあれこれ言って来た。明人からの威圧と慣れない運転、そしてこの高級車を傷つけたらという恐怖で、加奈はどうやって明人の住むマンションまでたどり着いたのかまったく覚えていなかった。
さすがは外資系……金だけはあると見た。明人のマンションは高級マンションの建ち並ぶ場所にあり、外観もおしゃれでエントランスだけでも広々とした空間だ。
「ほら、さっさと来い」
ぐったりと疲れ果てている加奈の事などおかまいなしに部屋のロックを解除して中に入った。明人の部屋は三十階建てマンションの二十五階で、1LDKと独身男性にはちょうどいい部屋だった。だが部屋の広さは加奈の予想よりも広い。ワンルーム住まいの加奈の部屋がこのリビングにすっぽり入る。玄関も広く、長い廊下の奥がリビングとダイニングがあり、玄関から入ってすぐある右の部屋が明人の寝室。その反対側がトイレやバスとなっている。
「さすが……お仕事に似合うお部屋ですね」
「これくらい普通だろ?むしろ二人で暮らす分には狭いと思うけど?」
十分ではないかと思った。
リビングにはガラステーブルと大型のテレビ、黒革のソファに観葉植物と、シックな内装で、明人のセンスの良さがうかがえた。
「っと、あった」
ごそごそと何かを探し出した明人は、見つけた保険証を加奈に渡す。
「とりあえずこれよろしくな」
「わかりました。なら私も一旦荷物取りに帰ります」
介護の事は腹を括った。たかだか一か月の辛抱だ!と心の中で呟いた加奈は、明人に夕飯の事を聞いてみた。
「そういえば……南条さん。夕食はどうしますか?」
「必要最低限の調理器具はあるから適当に作ってくれ」
適当に……作る……?
その言葉に加奈は一瞬首を傾げて考えた。これはお前が作れと言われているのではないかと……
「あぁでも、食材とかは多分ないから」
食材がないのに作れと?加奈はキッチンにある大きな冷蔵庫の中を開いてみてガクッとなった。立派な冷蔵庫にもったいないくらいの隅っこにあるのは、ミネラルウォーターやお酒、チーズなどのつまみ類だけだった。
(大きい冷蔵庫なのに……もったいない!)
空きスペースばかりが目立つ冷蔵庫を閉め、病院、自宅の他に、スーパーでの買い物も追加された。
「それじゃあ行って参ります……」
「どうせなら車使えば?」
「結構です!」
もう運転はこりごりだ!加奈はロック解除の暗証番号を明人から聞いた後、逃げるかのように走って病院に向かった。あまり見てはいけないと思ったが、持たされた保険証を見て、明人は二十八の年上だと言う事がわかった。
「えっ?」
「名前くらいあるだろ?」
「そりゃ生きてますから……」
「名前は?」
「霧島加奈です」
「そっか、なら加奈。さっさと運転しろ。道案内は俺がする」
早々に下の名前で呼ぶ明人に加奈はなんとも言えない複雑な気分だった。
この調子で住み込み介護など出来るのだろうか……話のキャッチボールはほとんど機能してない。医者は完治するのは一か月かかると言っていた。一か月も耐えられるのだろうかと思ってしまう。
明人の高級車に乗り込んだ加奈は、教習所以来の車に緊張した。どうやって動かすのか、どれをどうすればいいのかなど、ブツブツ言いながら復習していると、明人が隣からいろいろと教えてくれた。
ようやく車を発進させ、一般道に出た瞬間に加奈はビクビクとした。スポーツカーなのに法定速度以下のトロトロ運転。周りの車はスイスイと通り抜け、それだけでも恐ろしいのだが、隣にいる被害者は「車間距離を開けろ」だの「前を見ろ」だのとあれこれ言って来た。明人からの威圧と慣れない運転、そしてこの高級車を傷つけたらという恐怖で、加奈はどうやって明人の住むマンションまでたどり着いたのかまったく覚えていなかった。
さすがは外資系……金だけはあると見た。明人のマンションは高級マンションの建ち並ぶ場所にあり、外観もおしゃれでエントランスだけでも広々とした空間だ。
「ほら、さっさと来い」
ぐったりと疲れ果てている加奈の事などおかまいなしに部屋のロックを解除して中に入った。明人の部屋は三十階建てマンションの二十五階で、1LDKと独身男性にはちょうどいい部屋だった。だが部屋の広さは加奈の予想よりも広い。ワンルーム住まいの加奈の部屋がこのリビングにすっぽり入る。玄関も広く、長い廊下の奥がリビングとダイニングがあり、玄関から入ってすぐある右の部屋が明人の寝室。その反対側がトイレやバスとなっている。
「さすが……お仕事に似合うお部屋ですね」
「これくらい普通だろ?むしろ二人で暮らす分には狭いと思うけど?」
十分ではないかと思った。
リビングにはガラステーブルと大型のテレビ、黒革のソファに観葉植物と、シックな内装で、明人のセンスの良さがうかがえた。
「っと、あった」
ごそごそと何かを探し出した明人は、見つけた保険証を加奈に渡す。
「とりあえずこれよろしくな」
「わかりました。なら私も一旦荷物取りに帰ります」
介護の事は腹を括った。たかだか一か月の辛抱だ!と心の中で呟いた加奈は、明人に夕飯の事を聞いてみた。
「そういえば……南条さん。夕食はどうしますか?」
「必要最低限の調理器具はあるから適当に作ってくれ」
適当に……作る……?
その言葉に加奈は一瞬首を傾げて考えた。これはお前が作れと言われているのではないかと……
「あぁでも、食材とかは多分ないから」
食材がないのに作れと?加奈はキッチンにある大きな冷蔵庫の中を開いてみてガクッとなった。立派な冷蔵庫にもったいないくらいの隅っこにあるのは、ミネラルウォーターやお酒、チーズなどのつまみ類だけだった。
(大きい冷蔵庫なのに……もったいない!)
空きスペースばかりが目立つ冷蔵庫を閉め、病院、自宅の他に、スーパーでの買い物も追加された。
「それじゃあ行って参ります……」
「どうせなら車使えば?」
「結構です!」
もう運転はこりごりだ!加奈はロック解除の暗証番号を明人から聞いた後、逃げるかのように走って病院に向かった。あまり見てはいけないと思ったが、持たされた保険証を見て、明人は二十八の年上だと言う事がわかった。
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