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加奈達の会社御一行様がホテルに着いたのは午後三時だった。長旅で疲れ果てた加奈は、加奈のいる部屋にやって来た詩織に事情を詳しく聞いた。
どうやら詩織と小峰が付き合っている事はすでに明人は知っている様子で、それを伝いいろいろと情報を聞き出したらしい。加奈達の止まるホテルから加奈の部屋に至るまで……小峰自身も「やりすぎだろ?」と明人に言ったらしいが、「彼氏からのサプライズだ」とわけのわからない事を言ってあれこれ情報収集していたそうだ。
諸事情に皆様を巻き込んで申し訳ございませんと、明人に代わって明人の会社の人達全員に菓子折り付きで謝りたかった。
とは言え、元々社員旅行案は上がっていたそうだ。だが場所は未定のままでずるずると来ていたところに加奈が話のもあって、あれよあれよと場所も日時も早々に決まった。つまり……同じホテルに明人達の会社も社員旅行で来ているのだ。
入口に書かれてある御一行様の看板に、見慣れた会社の名前があるのを見た上司達は嫌そうな顔をしたが、上司以上に嫌な顔を見せたのは他でもない。川田だった。爽やかとは裏腹の顔で川田は「何で……」と愚痴を溢していた。その溢したい気持ちは加奈も同じだった。だが向こうは夕方近くに到着するようで、まだこのホテルには来ていない。
「あぁ!なんか最悪なんだけど!」
そこまでするのか?いや、明人だからそこまでする。しかも明人は幹事なのだから、決定権は明人にある。ここは明人の独断会場なのだ。そしてその明人の横暴に振り回される社員の皆様、本当にご愁傷様ですと心から思った。
もちろん歓迎していない面々はいるが、女子社員からは大好評だ。あの南条明人と同じ屋根の下で過ごせるのだ。直す化粧にも気合が入る。明人だけでなく上の会社は何故か粒ぞろいで、明人が無理でもと女子社員の鼻息はとても粗い。中には「霧島さんの事だから南条さんに言って、同じ日取りってお願いしたんじゃない?」と陰口を叩かれるが、叩かれる言われはないし、加奈にとっては寝耳に水。むしろ大魔王の襲来に困り果てていた。
「霧島さんちょっといいですか?」
コンコンとドアをノックする音と、川田の声が聞こえたので、重たい身体をずるずる引きずりながらドアを開けた。
「ちょっと打ち合わせしたいんですけど、いいですか?」
「うん、わかった」
「それと……今日の事件って」
「聞かないで!むしろ私もさっき知ったんだから!」
騒動となっている明人の会社とのブッキングを当然ながら訪ねてきた川田だが、加奈は知らないとちゃんと言った。
「そうですか。にしても、南条さんって常軌を逸してるって言うか……これじゃストーカーじゃ……」
「川田君。残念だけど、その非難的言葉を連ねてもあいつには無効果だから……」
「そうなんですか?でもこれって立派なストー……んぐ!」
川田が言葉を発しようとした時、川田の口は何者かに塞がれた。その何者かを見た加奈は青ざめるより怒りの方が先に込み上げた。
どうやら詩織と小峰が付き合っている事はすでに明人は知っている様子で、それを伝いいろいろと情報を聞き出したらしい。加奈達の止まるホテルから加奈の部屋に至るまで……小峰自身も「やりすぎだろ?」と明人に言ったらしいが、「彼氏からのサプライズだ」とわけのわからない事を言ってあれこれ情報収集していたそうだ。
諸事情に皆様を巻き込んで申し訳ございませんと、明人に代わって明人の会社の人達全員に菓子折り付きで謝りたかった。
とは言え、元々社員旅行案は上がっていたそうだ。だが場所は未定のままでずるずると来ていたところに加奈が話のもあって、あれよあれよと場所も日時も早々に決まった。つまり……同じホテルに明人達の会社も社員旅行で来ているのだ。
入口に書かれてある御一行様の看板に、見慣れた会社の名前があるのを見た上司達は嫌そうな顔をしたが、上司以上に嫌な顔を見せたのは他でもない。川田だった。爽やかとは裏腹の顔で川田は「何で……」と愚痴を溢していた。その溢したい気持ちは加奈も同じだった。だが向こうは夕方近くに到着するようで、まだこのホテルには来ていない。
「あぁ!なんか最悪なんだけど!」
そこまでするのか?いや、明人だからそこまでする。しかも明人は幹事なのだから、決定権は明人にある。ここは明人の独断会場なのだ。そしてその明人の横暴に振り回される社員の皆様、本当にご愁傷様ですと心から思った。
もちろん歓迎していない面々はいるが、女子社員からは大好評だ。あの南条明人と同じ屋根の下で過ごせるのだ。直す化粧にも気合が入る。明人だけでなく上の会社は何故か粒ぞろいで、明人が無理でもと女子社員の鼻息はとても粗い。中には「霧島さんの事だから南条さんに言って、同じ日取りってお願いしたんじゃない?」と陰口を叩かれるが、叩かれる言われはないし、加奈にとっては寝耳に水。むしろ大魔王の襲来に困り果てていた。
「霧島さんちょっといいですか?」
コンコンとドアをノックする音と、川田の声が聞こえたので、重たい身体をずるずる引きずりながらドアを開けた。
「ちょっと打ち合わせしたいんですけど、いいですか?」
「うん、わかった」
「それと……今日の事件って」
「聞かないで!むしろ私もさっき知ったんだから!」
騒動となっている明人の会社とのブッキングを当然ながら訪ねてきた川田だが、加奈は知らないとちゃんと言った。
「そうですか。にしても、南条さんって常軌を逸してるって言うか……これじゃストーカーじゃ……」
「川田君。残念だけど、その非難的言葉を連ねてもあいつには無効果だから……」
「そうなんですか?でもこれって立派なストー……んぐ!」
川田が言葉を発しようとした時、川田の口は何者かに塞がれた。その何者かを見た加奈は青ざめるより怒りの方が先に込み上げた。
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