王様のいいなり!

まぁ

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「……で、それでですね!」
「…………」
「加奈?」
「へっ?」
 ハッとした加奈が顔を上げた。すると心配そうに加奈を見る川田の顔がそこにあった。
「俺の話聞いてた?」
「ご、ごめん」
 正直聞いてなかった。茫然とし持っているグラスの酒は一滴たりと減っていない事に気が付いた加奈は、申し訳なさそうな顔をした。
「どうしたんです?なんだか心ここにあらずっていうか……」
「気にしないで!まだちょっと疲れてるだけだから…」
「そう?ならいいけど。なんだか心配だなぁ」
 いけないいけない!川田に気を使わせてしまった事に加奈は反省をした。
 こんな気持ちでいたら川田に迷惑だ。だが本来なら楽しい飲みも楽しさを感じられないのも事実だ。
「あぁ、そろそろ終電ですね。出ましょうか?」
「そうだね」
 申し訳ないと思いながら川田と店を出た加奈。
 川田は加奈に手を差し伸べてきたので、それを取り二人は手を繋いで駅まで歩いた。
 今日は会社から一駅先にある繁華街で飲んでいたのもあり、電車という時間の制約があるが、加奈にとっては正直安心できた。今日はこれ以上川田といたいと思わなかったのだ。
「ねぇ加奈」
「どうしたの?」
「えっと、今度の土日、時間あるんだったらどこか行かない?」
「えっ?」
 すっとんきょんな声を漏らした加奈は、目を見開いたまま川田を見ていた。だが川田はいつものように笑顔で加奈を見ていた。
「二人で旅行とかしたいなぁって思ったんだけどダメかな?」
「う、うん。いいよ……」
 二人で旅行と言われ、それが意味する事がわかった加奈は顔を赤くして俯いた。そんな加奈を見て「やった!」と喜んだ川田の声が聞こえる。
(断る理由、どこにもないし。だって付き合ってるんだもん)
 自分に言い聞かせるように頭の中で呟いた加奈。二人は夜道を加奈のアパートに向かい歩いていたので、その話が終わると丁度アパートの前に到着した。
「それじゃ場所とか俺決めますので!」
「わかった」
 川田はキョロキョロと周りを見渡し人のいない事を確認すると、加奈の唇にキスをした。
「じゃ、おやすみ」
「おやすみ」
 加奈は川田の姿が見えなくなるまで手を振った。見えなくなって自分の部屋に戻ると、大きなため息も漏れ、先ほどキスした唇にそっと手を置いた。
「……絶対におかしいと思うよね」
 柔らかく、そして温かい川田の唇の感覚が思い出せない。キスを受け入れたはずなのに、心はそこにない。こんな気持ち川田はわかっているだろう。とても申し訳なく感じてしまい、加奈は玄関で膝を崩し抱えた。
「馬鹿……私の馬鹿……」
 どうしてこんな時に明人の顔を思い浮かべるのか?どうして明人のキスと比べてしまうのか加奈にはわからなかった。
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