十年目の恋情

まぁ

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 へぇ……と適当に相槌を打ったが、伊織がこの学校に来ている理由は納得した。
 美少年な上に運動も出来て頭もいいって……どこの漫画キャラだよって一人心の中でツッコみを入れた。
 しばらくすると制服に着替えた伊織がやって来たので、一緒に帰る事にした。
「中沢先生さよなら」
「おう!浩二、くれぐれも俺の大切な生徒を襲うなよ」
「お前こそ数少ない女子生徒に手を出して捕まるなよ」
 軽口を叩きつつ中沢と別れた俺と伊織は、校舎裏にある駐車場にやって来た。この車は結婚した時に買ったやつで、こっちに戻ってくる際にも必要だからと持ってきた。
 片田舎でもある地元の足は基本的に車だ。これがないとバスでも電車でも三十分は待たないといけない。
 車に乗り込み、エンジンをかけ家に戻る事にしたが、途中伊織が家に来る事を思い出したので、コンビニに行って菓子やら飲み物を買う。
「この辺もコンビニ増えたな」
「そうかな?でもたしかにコウちゃんがいた時よりは増えたかもね」
 ニコリと笑う伊織が眩しい。これが若さなのかとも思ったが、コンビニにいた女子高生達もヒソヒソと呟き、時には色めいた声まで上げていたので、若さとは別に、王子様成分も入っているんだなと思った。
「お前って、ホント絵に描いたような王子様なんだな」
「何が?」
「さっきから女子高生お前見てきゃあきゃあ言ってるぞ」
「ふーん……」
 あまりにも薄い反応。年頃の男子なのに女子に興味もないのかと思ってしまった。それか王子様はお目が高いのかもしれない。
「お前彼女とかいないの?」
「今はいないよ」
 今はって事はそこそこはいたんだよな。
「コウちゃんは?」
「俺はいない。結婚してたけど離婚したし、それ以降は作る気もなくて……」
「離婚したのは母さんから聞いてるから知ってる。それに高校時代、相当他校の女子に手を出してたのも……」
「なっ、なんでその話って……中沢か!あいつ」
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