59 / 91
59
しおりを挟む
相変わらず花束は施設に届く。毎日ではないが、不規則でいつ届くかはわからない。だが花には罪はないので、施設に有難く飾らせてもらっている。
施設の従業員二人もきっとエリサを慕うファンではないかと言って、事情を知らないので楽しそうに話す。
どうして今更と思うが、断る術もない。だが一つ変わった事、というより変えた事は、行き帰りの馬車はエデンワースから出してもらっている事だろうか。
これによりマルディアスと鉢合わせすることはなくなったが、時間をきっちり決められているので事務仕事を残ってやる事は出来ない。
屋敷ではなるべくミリアの相手をしたいので、少し業務が滞っているが、今し方は良好な運営をしている。
ここに来ている子供も、その親もいい人達で、仕事に関しては順風満帆だ。しかしふと気を抜くとマルディアスの事が頭を過ぎる。
これに関しては一年前からそうだが、あの夜出会った時以降、頻繁に思い出すのでいけない。
施設は土日祝日は休園だ。今日は久々の休みという事もあり、ミリアを連れて街の方へとやって来た。
「まぁま!れっ!れっ!」
「待ってミリア。ジェラートはまた今度にしよ」
「やー!」
ワゴン売りのジェラートを指差すミリア。どうやら食べたいのだろうが、お昼ご飯を食べた後だ。おまけに言うとお昼に食べたお子様ランチを完食した後、プリンまで食べている。よく食べる子な分、これ以上はダメだと言う。だがミリアは食べたい欲望を泣いて示す。
「やー!アイシュ!」
「ダメよ。お腹痛くなっちゃうよ。それでもいいの?」
「うー……」
お腹が痛くなるのは嫌なのだろう。ようやく諦めてくれたのでエリサはため息を一つ漏らす。
「あら?」
ミリアを抱き抱えようとした瞬間、背後から声をかけられた。
「貴女は確かマルディアスのお知り合いの方では?」
「えっ?」
振り返った先にはマルディアスの妻でもあるフェリシアがいた。フェリシアは子供を抱っこ紐で固定していた。そんなフェリシアの登場に心臓が嫌な音をたてる。
「えっと……フェリシアさん?」
「ええ、確かエリサさんでしたよね?」
ニコリと微笑むフェリシアは、今日は薄ピンクのボーラーハットに白いワンピーススタイルだ。
「あら、エリサさんもお子様がいらっしゃったのね」
「は、はい。前の夫との子供です」
「そう……」
ニコニコと微笑んでいるフェリシアだが、エリサとしては何故声をかけてきたのか不思議だった。
「今日は天気も良かったからお洋服を見に来たのですが、マルディアスは相変わらず仕事でして」
「はぁ……そうですか」
「こういう時、男手がないと大変ですわね」
ただの世間話をしたいだけなのか、或いは牽制か。このよくわからない空気に豪を煮やしたエリサはこの場から離れようとした。
「すみません。私も今日はこの子の買い物でして、これで失礼しますね」
当たり障りなくその場を後にしたエリサだが、心臓の鼓動は速いままだ。マルディアスといい、フェリシアといいよくわからない。一体エリサに何がしたいのか。
一方のフェリシアは去って行くエリサとミリアを見つめていた。
「あれがあの人の……目障りね」
先程までの笑みはどこへやら。その表情は無表情で氷のような冷たい目をしていた。
施設の従業員二人もきっとエリサを慕うファンではないかと言って、事情を知らないので楽しそうに話す。
どうして今更と思うが、断る術もない。だが一つ変わった事、というより変えた事は、行き帰りの馬車はエデンワースから出してもらっている事だろうか。
これによりマルディアスと鉢合わせすることはなくなったが、時間をきっちり決められているので事務仕事を残ってやる事は出来ない。
屋敷ではなるべくミリアの相手をしたいので、少し業務が滞っているが、今し方は良好な運営をしている。
ここに来ている子供も、その親もいい人達で、仕事に関しては順風満帆だ。しかしふと気を抜くとマルディアスの事が頭を過ぎる。
これに関しては一年前からそうだが、あの夜出会った時以降、頻繁に思い出すのでいけない。
施設は土日祝日は休園だ。今日は久々の休みという事もあり、ミリアを連れて街の方へとやって来た。
「まぁま!れっ!れっ!」
「待ってミリア。ジェラートはまた今度にしよ」
「やー!」
ワゴン売りのジェラートを指差すミリア。どうやら食べたいのだろうが、お昼ご飯を食べた後だ。おまけに言うとお昼に食べたお子様ランチを完食した後、プリンまで食べている。よく食べる子な分、これ以上はダメだと言う。だがミリアは食べたい欲望を泣いて示す。
「やー!アイシュ!」
「ダメよ。お腹痛くなっちゃうよ。それでもいいの?」
「うー……」
お腹が痛くなるのは嫌なのだろう。ようやく諦めてくれたのでエリサはため息を一つ漏らす。
「あら?」
ミリアを抱き抱えようとした瞬間、背後から声をかけられた。
「貴女は確かマルディアスのお知り合いの方では?」
「えっ?」
振り返った先にはマルディアスの妻でもあるフェリシアがいた。フェリシアは子供を抱っこ紐で固定していた。そんなフェリシアの登場に心臓が嫌な音をたてる。
「えっと……フェリシアさん?」
「ええ、確かエリサさんでしたよね?」
ニコリと微笑むフェリシアは、今日は薄ピンクのボーラーハットに白いワンピーススタイルだ。
「あら、エリサさんもお子様がいらっしゃったのね」
「は、はい。前の夫との子供です」
「そう……」
ニコニコと微笑んでいるフェリシアだが、エリサとしては何故声をかけてきたのか不思議だった。
「今日は天気も良かったからお洋服を見に来たのですが、マルディアスは相変わらず仕事でして」
「はぁ……そうですか」
「こういう時、男手がないと大変ですわね」
ただの世間話をしたいだけなのか、或いは牽制か。このよくわからない空気に豪を煮やしたエリサはこの場から離れようとした。
「すみません。私も今日はこの子の買い物でして、これで失礼しますね」
当たり障りなくその場を後にしたエリサだが、心臓の鼓動は速いままだ。マルディアスといい、フェリシアといいよくわからない。一体エリサに何がしたいのか。
一方のフェリシアは去って行くエリサとミリアを見つめていた。
「あれがあの人の……目障りね」
先程までの笑みはどこへやら。その表情は無表情で氷のような冷たい目をしていた。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
ナタリーの騎士 ~婚約者の彼女が突然聖女の力に目覚めました~
りつ
恋愛
リアンは幼馴染のナタリーに昔から淡い恋心を抱いていた。それは彼が成長して、王女殿下の護衛騎士となっても変わりはしなかった。両親や王女に反対されても、ナタリーと結婚したい、ずっと一緒にいたい……そう願い続けた彼の望みはようやく叶い、ナタリーと婚約することができた。あと少しで彼女は自分の妻となる。そう思っていたリアンだが、ある日ナタリーが王女に呼ばれ……
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
姉の婚約者と結婚しました。
黒蜜きな粉
恋愛
花嫁が結婚式の当日に逃亡した。
式場には両家の関係者だけではなく、すでに来賓がやってきている。
今さら式を中止にするとは言えない。
そうだ、花嫁の姉の代わりに妹を結婚させてしまえばいいじゃないか!
姉の代わりに辺境伯家に嫁がされることになったソフィア。
これも貴族として生まれてきた者の務めと割り切って嫁いだが、辺境伯はソフィアに興味を示さない。
それどころか指一本触れてこない。
「嫁いだ以上はなんとしても後継ぎを生まなければ!」
ソフィアは辺境伯に振りむいて貰おうと奮闘する。
2022/4/8
番外編完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる