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 それから数日は、普通の日常を送っていたエリサ。あれからマルディアスに会う事もなければ、エリサ自身が徹底して会わない様にしているのもあり、これまでと同じ毎日を送っていた。だが毅然として花束は贈られてくる。もうやめて欲しいと言ったのにも関わらず。
「今日も見事な薔薇ですね」
「そ、そうね……」
「いつものように活けておきますね」
 サーシャはいつしか花束を活ける事を楽しみにしていたが、エリサはその薔薇の花束を見るのも嫌だった。見る度にマルディアスの事も、あの日のキスの事も思い出してしまうからだ。
 そんな思いを抱いていたある日、珍しくディアナが園の方へと顔を覗かせた。
「こんにちわ。元気にしていたかしら?」
「ディアナさん!」
 事務仕事をしている途中、部屋にやって来たディアナをエリサは快く向かい入れた。
「しばらくぶりだったかしら?元気にやっている?」
「おかげ様で。事務仕事と園の子供の面倒、屋敷に戻ってからの子育ては大変な所もありますが、楽しくやってますよ」
「そう、それはよかったわ」
 エリサはディアナの前に紅茶と持ってきていた焼き菓子を差し出す。エリサも仕事の手を止めてディアナの向かいに座った。
「それにしても今日は何かあったんですか?」
「んー……何かという特別な事はないんだけど、実は今度市民市場の周辺で祭りがあるの。それに一緒に行かないかと思って」
「お祭り?」
「そう。私達一般市民にとっては毎年ある五穀豊穣とかの祭りの一つなんだけどね。わりと面白いイベントとかあるから、息抜きにどうかと思って」
「面白そうですね。是非参加させて下さい」
 一般市民と貴族達の生活圏は違う。貴族達がパーティを好むのに対し、一般市民は神に祈りを捧げる儀式を祭りとして表す。いつも賑わう市場がまた違った形でに賑わい、他国からの品々が並ぶなど市民にとって一大イベントのようなものだ。
 もちろん貴族社会にいたエリサには祭りは無縁だ。むしろ神への祈りと言えば大聖堂に引きこもって祈りを捧げるのが主だったので、ディアナの話を聞いて楽しそうだと思った。
「それにしても……玄関に置いてある薔薇。あれすごく見事ね」
「そ、そうですね……」
「あんまり見た事のない品種っぽいけど、あれはエリサさんの家で育てているものなの?」
 何気ない質問だった。だがその答えに戸惑っているエリサを見て、「エリサさん?」とディアナは首を傾げて訪ねる。
「何か訳ありって感じね」
「ま、まぁ……」
「話せる範囲でいいけど、もしよかったら話を聞かせて」
 ディアナはエリサとマルディアスの事を知っている。ならば話しても問題はないだろう。そう思ったエリサはマルディアスとの突然の再会。それから贈られて来る薔薇の花束の事を話した。
「じ、実は……」
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