暴君王子は恋を知る

まぁ

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 結局大人しく部屋で和史が来るのを待っていたアンリ。現地時間十九時ジャストに扉のチャイムが鳴った。
「お、遅い……」
「それは悪かったな。十八時まで仕事で、少し雑務があって遅くなった」
 ベージュのパンツにボーダーシャツ、その上にジャケットを羽織った和史がそこにいた。もうオーナーの顔は剥ぎ取られ、髪も下ろしニヒルな笑みを浮かべる悪い男の顔をしている。
「べ、別に待ってなかったけど、お腹は空いたからな。し、仕方なくディナーを共にしてやる」
 むっすりしながら言うアンリを見て和史はクスクスと笑った。
「何がおかしい!」
「いや、素直じゃないところもまた可愛いなと思っただけた」
「か、可愛い?可愛いというのは日本人のようなベビーフェイスなやつを言うんじゃないのか?」
 確かにアンリはイギリス人にしては甘い顔をしている。だが日本人と並べば背も高いしちゃんと鍛えているので筋肉も程よくある。どこが可愛いのかさっぱりわからない。
「ほら、早くしろ。腹が減ってるんだろ?」
 そう和史に言われ、文句を言いながらもアンリは和史と一緒にホテルの外へ出た。


 二人が向かったのは海沿いにあるシーフード専門店だった。ほとんどの店が観光客向けなのに比べ、ここは知る人ぞ知ると言った感じのこじんまりとした店だった。
 テラス席も二席ほどあり、二人は潮風の匂いと音を聞きながらテラスで食事をする事にした。
「なんでシーフード店なんだ?」
「サンディエゴと言えばシーフードだろ。苦手だったか?フィッシュアンドチップスの方が良かったか?」
「おい、イギリス人がみんなフィッシュアンドチップスが好きだと思うなよ。好きだけど……」
 言っている事と本音が同時に漏れ出るアンリに終始クスクスと笑っている和史に、アンリはブスっとしながら話しかける。
「な、なんでこんなとこまで来てるんだよ……」
「さっきも言ったが。仕事だってな」
「だからってタイミング良すぎるだろ!」
「そんなの知るか。俺にも俺の仕事がある。それともなんだ?俺とお前は運命の相手だったんだなって言って欲しいのか?」
「そ、そんなの求めてない!」
 ツンとした態度。相変わらず表情がコロコロ変わって面白い。
「後、なんでオレを食事に誘うんだよ……」
「いちいち確認取らないとわからないのか?そもそも恋をしたいと言ったのはお前の方だろ?」
「はぁ?だからってお前とじゃない!」
「そうか?お前のそのじゃじゃ馬的な性格は俺くらい包容力がないと彼氏は務まらないと思うがな」
「じゃ……誰がじゃじゃ馬だ!それにお前のどこに包容力が」
「包容力の固まりじゃないか。酔ったお前を介抱してる時点で」
 ああ言えばこう言う。口論したところで全て和史に論破される。だが不思議と本気で嫌と言うわけではない。
「お前って……」
「和史だ」
「はっ?」
「いい加減名前で呼べよ」
「何でお前なんかを!」
「ほらまた。今度お前と言ったらその分だけキスするぞ」
「な、なんだよそのベタな話!それにキ……スは好きなやつとするものだ」
 恥ずかしそうに言うアンリ。和史はそんなアンリに一瞬にして恋に落ちた事など本人にはわからないだろう。
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