女子高校生は不良(バカ)が悶絶するまで肝臓を殴るのをやめない

未定

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スパーリング

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「そうよ? 問題ある?」

「そりゃあるが……
 おい! 誰かこいつとスパーリングできる奴はいるか?」

 男子部員達は誰も手を上げなかったが、やがて、部員達が罰ゲームを押しつけるようにしてとある部員の背中を押した。
 その子は男子部員だけど、髪も染めていないし、普通の生徒という感じ。

――なんか、いろいろとイビられてそう。パシリ感すごいというか……

 あたしは更衣室に行く……女子の更衣室が用意されている現実が、余計に怒りを感じさせた。
 着替えた後、マイグローブと頭部を守るヘッドギアをつけてリングに上がる。
 このジムに設置されたスパーリング用のリングは6.1m×6.1mと練習用リングとしては広いと思う。
 少なくても、あたしが師匠のところで使っていたリングよりも広く、その場に立っただけでちょっと嬉しかった。
 男子部員は先にリングに上がっており、既に戦闘体勢だ。
 とりあえず、師匠のいいつけ通り、戦ってくれる人にはおじぎ。

「それでは、お願いします」

「あ、はい、お願いします」

 困った感じで男子部員君も挨拶する。
 挨拶は大事って師匠が言ってたもん。

「急に礼儀正しくなったな……」

 先生がなんかぼやいているが、礼儀正しくて悪いのかよ。

「さやちゃん頑張って」

 牡丹ちゃんと椿ちゃんが、あたしのコーナーに寄ってきて。
 男子部員の4人程、相手のコーナーに寄った。
 ゴングが鳴らされ、グラブとグラブを合わせ、スパーリングという名の実戦が開始される。
 合わせた時点で分かったけど、かなり実力差がある。男子にしては小柄だし、体格差もそこまでない。
 あたしは、右構えオーソドックスアウトボクサー距離を保って戦う
 基本的にあたしの戦法は足と瞬発力を使ってのヒット&アウェイに徹し、接近戦による打ち合いは避けるというものだが、実力差があるなら話しは別。
 さっさと距離を詰めて、接近戦インファイトを行った。
 相手のパンチをかわしつつ、素早く連射の効く攻守において基本となるパンチ『左ジャブ』と腹部の攻撃である『ボディ』を打ち続けた。

「うぐっ……」

 相手がお腹を抑えて倒れてしまう。

――ふっふっふっ……あたしのボディは地獄の苦しみ……

 無論あたしは一発も貰ってない。

――よっわ! もう少しお腹、鍛えた方が良いよ。

「すごーい……」

 牡丹ちゃんがあたしを見て驚いている。
 椿ちゃんは、何も言わないけど、何処か嬉しそうだ。

「大丈夫?」

 あたしはいつまでも悶絶している真面目そうな男子部員君に声をかける。

「あ…はい、大丈夫です」

「戦ってくれてありがとう」

 あたしは手を差し伸べた。真面目な男子部員君は少し恥ずかしそうにその手をとる。
 起き上がらせるための手であり、同時に握手も兼ねる。
 あたしは、ぐっと握ると笑顔を作った。
 男の子は照れくさそうに視線を逸らした。

――この子は真面目君だな……

 当然、顧問の先生は仏頂面であたしを見ている。
 何か言いたそうだけど、言葉が出ない感じ。
 だけど、ここで矛を納めたら、頭に乗るタイプだと思うので、ここは挑発するしかない。

「これで終わりじゃないでしょう?
 誰でもいいからかかってきなさいよっ! 小桜 さやがお待ちかねよ?」

 あたしに挑発されて見ていた男子部員達の目つきが変わってくる。
 舐められたら終わりって雰囲気がいかにも不良バカっぽい。

「先輩、俺に行かせてください」

「テツっ! お前か……」

 別の男子部員のテツ君が先輩に断ってからリングに上がってきた。
 髪は茶髪で耳にはピアスをつけた穴がある、まあ中学の時は典型的な不良バカだったんだろう。
 まあでも、見た感じ、この子もあんまし強くはなさそう。
 でも、そこはそれ。

「お願いします!」

 ちゃんとスパーリングしてくれる人にはおじぎを――

「へっ!」

 鼻で笑いやがった。

――ふうん、さっきの真面目君と違って、挨拶なしか……

 よって、あたしはブチ殺して、ブチ殺して、ブチ殺す事に決める。誤解しないで欲しいけど、本当殺すワケじゃないよ。
 ゴングが鳴った。
 グラブとグラブを合わせようとした時、テツ君がそれをやらずあたしに向かって、軌道が曲線を描くパンチ『フック』を放ってくる。

――危なっ!?

「ちっ!」

 とっさにかわすが、テツ君は舌打ちしながら追撃してくる。

――ちょっとっ!?

 あたしは不意な攻撃を受けて、心の整理が追いつかないでいる間にもテツ君はムキになってあたしにパンチを打ってきた。

「待ちなさいよっ!」

 相手の『ストレート』つまり直線的な軌道を描くパンチをギリギリでかわしこちらの左フックを頬に叩きこむ。
 足はガクン崩れ、そのまま倒れた。
 テツ君はすぐに立ったが、スリップ扱いではなく、ダウンと判定されあたしの勝ちとなった。

――そりゃ、いくら女子のパンチ力でも。
  向かってくるところに、入れればこうなるか……

 う~ん……少しやり過ぎたかな?
 でも。いきなり攻撃を仕掛けてくる方が悪いんだからね。

「てめえ、よくも鉄也をっ!」

――あ、今の子、テツヤ君っていうのね……

「よくもって、汚い真似したのはテツヤ君でしょーがっ!」

「うるさいっ! 次は俺が相手だ」

「お願いします」

 あたしはペコリとお時儀した。

――あーあ、こんな血の気の多い連中におじぎなんかしたくないけど、師匠のいいつけだし……

「お…おう……」

 相手があたしのおじぎに戸惑いながら、グラブを合わそうとした時、あたしの左ジャブが相手の顔を捉えていた。

「ブギャっ!!」

 相手はあたしとグラブを合わそうとしていたところに不意をつかれたのも相まってダウン。

――やばっ! もうグラブ合わせてこないとばかり……

「このクソアマっ! 汚い手ばかり使いやがって!」

「あ…いや……ごめん。
 てっきり、もうグラブは合わせないで攻撃してくるものかと思って……」

 ふと、あたしが倒れている子に目をやると、顔を抑えて悶絶している。
 いい感じに鼻に当たっちゃったか~……アレ痛いんだよね。
 あたしが、少し罪悪感を感じていると、男子部員からブーイングがあがりはじめる。

「ちょっとちょっと、あたしが悪いワケ? 
 そもそもの原因は最初に汚い真似した、テツヤ君でしょーがっ!」

 ここは全ての罪をテツヤ君一人になすりつけなければ。

「口だけ女があぁ!」

 また一人の男性部員があがった。
 あたしは、ぺこりとおじぎをするため頭を下げようとした瞬間。
 相手はあたしに顎を下から上へ突き上げるパンチ『アッパーカット』をしてきていた。
 バンっという音とともに、あたしは大きく仰け反り、尻もちをついた。
 男性部員達から歓声があがる。

――この卑猥な歓声は……

 あたしの通った中学にもやっぱり不良バカはいた。それはもう沢山の不良バカが……
 不良バカの特徴その壱……
 それは、ルールを守るのが大嫌い。ルールを破る事に喜びを感じる。
 突っ張るってそういう事なのかもしれないけど……
 不良バカがボクシングをやるのは自由だけど、ボクシングをやるならルールは守れ。

「俺の勝ちいぃ~~!」

「待ちなさいよっ!」

「あん?」

「まだ、ゴング鳴ってないでしょうが? フライングで勝った事になるとかオツム緩くない?」

 あたしは立ち上がる。一回でもダウンしたら負けのルールっぽいけど、ゴングが鳴る前に攻撃してきたからこれはセーフ。

「ちっ……」

 相手の男子部員は、舌打ちし構えを取る。
 それもその筈、あたしは風を感じた瞬間、顎を思いっきり引いて、額で受け、クリーンヒットだけはなんとか避けていた。
 相手も軽く打ってきたから、大したダメージはない。
 それでも痛いし、頭がクラクラするけど……あたしの貴重な脳細胞を奪った罪は大きい。

「さやちゃん大丈夫!」

「酷いことするわねあいつらっ!」

 牡丹ちゃんと椿ちゃんが、あたしを応援してくれて少し嬉しい。
 いや、かなり嬉しい。

――やってくれたわね。
  ここどーゆー場所かよーくわかったわ……

 あたしは、師匠にガードは絶対に下げるなってよく言われるけど敢えてガードを下げた。
 相手を挑発するために。

――全集中っ!

 あたしは集中力を高めるため、大好きな漫画の台詞を心の中で唱える。
 呼吸を整え、五感と全神経を戦いに集中させるつもりで。

「舐めやがってっ!」

 相手の男子が向かってくる。

――舐める?

 あたしは、ディフェンスとジャブに徹し、相手の攻撃をとにかく避けていく。

――舐めているのは……

 相手の攻撃が激しくなってくるがステップを使い、避けまくった。

――こんな安い挑発に乗ってしまう……

 追撃してくる相手。
 ムキになってるのが伝わってくる。

――あなたの方よっ!

 あたしは、大ぶりになった左フックをバックステップではなく足はそのままで上体だけを反らしてかわす。
 それと同時に左アッパーも放った。

「!」

 顎に命中っ!

牙突零式がとつぜろしきっ!」

 あたしはとある漫画の必殺技を叫びながら、大きく仰け反らした体を戻す勢いで右ストレートを叩き込む。
 相手は派手に吹っ飛び大の字に倒れた。
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