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第十六話 返り討ち
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「な、ん……なにがどうなって……俺ならこんなやつら……なのに力が、どうなっ……」
這い蹲りながら必死に建物の物陰に移動して隠れるモブノくん。
その姿は「勇者」というものとは程遠いですね。
さて、このままでは失血死してしまいますし……
『痛みと怪我を取り除きますね……』
「ん? あれ? な、治った! 痛みも……ようやくヒールが効いたのか? でも、こんなの初めてだ……」
自分の魔法が時間差で発動したと思ってくれたようですね。それはそれで好都合です。
「さて、あのオーク共……っ、あれ? 俺、足が震えて……ち、力が……なんでだ? う、動けない」
そして、チートを失った彼は、まだチートを失っていることに気づいてませんが、体は正直に反応しています。
そう、もう彼は普通の人間。オークに挑めば一撫でで殺されるほど弱い。
ゆえに、体がそれを理解してしまっているのです。
「ちょっと、何がどうなってんのよ!」
「これは……オーク!」
「おのれ、貴様ら何をしている!」
そのとき、慌てて宿屋から武装した三人の乙女たちが飛び出しました。
ベッドの上で雌の顔をした下着姿から、魔王軍に戦いを挑む勇者のパーティーたち。
「おっ、いい女、みーつけた!」
「ん? こいつら、勇者リュウセイの仲間たちじゃねえか!」
「げげげ、マジかよ!」
そして、彼女たちの力はこの世界に見合い、この世界で戦い抜くに相当する力の持ち主です。
「醜悪なオークたち……でもね、もうこれ以上は好きにさせない!」
「私たちが居る限り、正義は終わりません!」
「私たちが相手だ! 全員まとめてかかってこい! 人類の力を、想いを、その身に刻み込んでやる!」
彼女たちは与えられたチートなどなく、もともと与えられた才やスキルを伸ばして、素の力だけで『通常のオーク』なら十分に倒せる力を持っています。
名のある彼女たちの登場にオークの人たちも驚いた様子。
でも……
「ビビるな、野郎ども! 俺たちには、つよーい味方がいるのを忘れたか!」
「お、おおお!」
「キモブー特攻隊長、こっちです!」
この街を襲撃したオークたちの中にも、オークたちの中の傑物がいますね。
「ぶひひひ、かわいいな~、ぼくちんのオモチャにしたいんだな~ぶひひひひ」
「「「ッ!!??」」」
より醜悪で、より品のない笑み、汚い涎を垂らしたオークさんです。
でも、その分……
『パラメーターが容姿ではなく全て戦闘能力に割り振られておるな……』
『ですね……』
そのぶん、強いですね。だからこの後の展開は……
「へ、何よ、気持ち悪い!」
「け、汚らわしい……」
「ふん……バケモノめ……瞬殺してくれる!」
その瞬間、少女たちは顔を青ざめながらも勇敢に立ち向かいます。
でも……
「はああああ! 私の拳は灼熱の拳! 全てを燃やし尽くすわ! どりゃああああ!」
「ぬふん♪」
「ッ!?」
少女が拳をで殴り掛かりますが、その拳がオークの顔面を捉えた瞬間……「ぼきっ」という鈍い音が聞こえ、少女の肘が人間の関節では本来曲がらない方向に曲がってしまいました。
「ぎ、いやああああ、い、いだい! いだい、いだい!」
「だめなんだな~、ぶひひひ、こんなやわらかい腕で、ぼくちんなぐったらだめなんだなあ~!」
激痛に悲鳴を上げてのたうち回る少女の瞳には涙。こうなっては、勇者の仲間など関係なく普通の少女。
「な、なんてこと……は、離れてください!」
「ぐひ?」
「エクスプロージョンッ!!」
「ぶひいい!?」
傷ついた仲間に顔を蒼白させるも、気の弱そうだった少女が鋭い目つきで魔法を放ちます。
爆発でオークの全身が爆炎に包まれます。
でも……
「だめなんだな~」
「ッ!?」
「おりゃ」
「ぶぐっ?!」
爆発を受けてもまるで無傷のオークが飛び出し、そのまま軽く拳を少女の腹部を殴りつけ、少女は吐しゃ物をまき散らしてうずくまり……
「おのれええええ、斬るッ! 斬り殺してく――――」
「ンあ?」
「ッ!?」
激高した少女がオークを剣で切りかかるも、その剣はオークの強固な肉体を切り裂けず、逆に剣が粉々に砕け散り。
「あは♡」
「ひ……ひい!?」
拳骨気味に叩きつけたこぶしに剣士の少女もその場に這い蹲りました。
「ぶひ、ぶひひひ、ぶひひひひひ!」
「「「「「おおおおお、流石は俺たちのキモブー様だあああ!」」」」
「よっしゃ、皆! 続きだ、へへへへ、好きなだけやってやろうぜ!!」
「「「「オオオオオ!!!!」」」」
オークたちから上がる歓声、そしてその光景に人間たちは誰もが絶望に満ちた表情に染まり……
「ぶひひひ、か~わいいな~」
「「「ッッ!?」」」
「この娘(こ)たち、ちょっと壊れちゃったけど人間にしては丈夫そうだし……ぼくちんがもらっちゃお♡」
「「「い、いやああああああああああああああ!!!!」」」
勇敢だった少女たちには、まあ、うん、あ~……まあ、ね、うん、こういう世界ですしね。
這い蹲りながら必死に建物の物陰に移動して隠れるモブノくん。
その姿は「勇者」というものとは程遠いですね。
さて、このままでは失血死してしまいますし……
『痛みと怪我を取り除きますね……』
「ん? あれ? な、治った! 痛みも……ようやくヒールが効いたのか? でも、こんなの初めてだ……」
自分の魔法が時間差で発動したと思ってくれたようですね。それはそれで好都合です。
「さて、あのオーク共……っ、あれ? 俺、足が震えて……ち、力が……なんでだ? う、動けない」
そして、チートを失った彼は、まだチートを失っていることに気づいてませんが、体は正直に反応しています。
そう、もう彼は普通の人間。オークに挑めば一撫でで殺されるほど弱い。
ゆえに、体がそれを理解してしまっているのです。
「ちょっと、何がどうなってんのよ!」
「これは……オーク!」
「おのれ、貴様ら何をしている!」
そのとき、慌てて宿屋から武装した三人の乙女たちが飛び出しました。
ベッドの上で雌の顔をした下着姿から、魔王軍に戦いを挑む勇者のパーティーたち。
「おっ、いい女、みーつけた!」
「ん? こいつら、勇者リュウセイの仲間たちじゃねえか!」
「げげげ、マジかよ!」
そして、彼女たちの力はこの世界に見合い、この世界で戦い抜くに相当する力の持ち主です。
「醜悪なオークたち……でもね、もうこれ以上は好きにさせない!」
「私たちが居る限り、正義は終わりません!」
「私たちが相手だ! 全員まとめてかかってこい! 人類の力を、想いを、その身に刻み込んでやる!」
彼女たちは与えられたチートなどなく、もともと与えられた才やスキルを伸ばして、素の力だけで『通常のオーク』なら十分に倒せる力を持っています。
名のある彼女たちの登場にオークの人たちも驚いた様子。
でも……
「ビビるな、野郎ども! 俺たちには、つよーい味方がいるのを忘れたか!」
「お、おおお!」
「キモブー特攻隊長、こっちです!」
この街を襲撃したオークたちの中にも、オークたちの中の傑物がいますね。
「ぶひひひ、かわいいな~、ぼくちんのオモチャにしたいんだな~ぶひひひひ」
「「「ッ!!??」」」
より醜悪で、より品のない笑み、汚い涎を垂らしたオークさんです。
でも、その分……
『パラメーターが容姿ではなく全て戦闘能力に割り振られておるな……』
『ですね……』
そのぶん、強いですね。だからこの後の展開は……
「へ、何よ、気持ち悪い!」
「け、汚らわしい……」
「ふん……バケモノめ……瞬殺してくれる!」
その瞬間、少女たちは顔を青ざめながらも勇敢に立ち向かいます。
でも……
「はああああ! 私の拳は灼熱の拳! 全てを燃やし尽くすわ! どりゃああああ!」
「ぬふん♪」
「ッ!?」
少女が拳をで殴り掛かりますが、その拳がオークの顔面を捉えた瞬間……「ぼきっ」という鈍い音が聞こえ、少女の肘が人間の関節では本来曲がらない方向に曲がってしまいました。
「ぎ、いやああああ、い、いだい! いだい、いだい!」
「だめなんだな~、ぶひひひ、こんなやわらかい腕で、ぼくちんなぐったらだめなんだなあ~!」
激痛に悲鳴を上げてのたうち回る少女の瞳には涙。こうなっては、勇者の仲間など関係なく普通の少女。
「な、なんてこと……は、離れてください!」
「ぐひ?」
「エクスプロージョンッ!!」
「ぶひいい!?」
傷ついた仲間に顔を蒼白させるも、気の弱そうだった少女が鋭い目つきで魔法を放ちます。
爆発でオークの全身が爆炎に包まれます。
でも……
「だめなんだな~」
「ッ!?」
「おりゃ」
「ぶぐっ?!」
爆発を受けてもまるで無傷のオークが飛び出し、そのまま軽く拳を少女の腹部を殴りつけ、少女は吐しゃ物をまき散らしてうずくまり……
「おのれええええ、斬るッ! 斬り殺してく――――」
「ンあ?」
「ッ!?」
激高した少女がオークを剣で切りかかるも、その剣はオークの強固な肉体を切り裂けず、逆に剣が粉々に砕け散り。
「あは♡」
「ひ……ひい!?」
拳骨気味に叩きつけたこぶしに剣士の少女もその場に這い蹲りました。
「ぶひ、ぶひひひ、ぶひひひひひ!」
「「「「「おおおおお、流石は俺たちのキモブー様だあああ!」」」」
「よっしゃ、皆! 続きだ、へへへへ、好きなだけやってやろうぜ!!」
「「「「オオオオオ!!!!」」」」
オークたちから上がる歓声、そしてその光景に人間たちは誰もが絶望に満ちた表情に染まり……
「ぶひひひ、か~わいいな~」
「「「ッッ!?」」」
「この娘(こ)たち、ちょっと壊れちゃったけど人間にしては丈夫そうだし……ぼくちんがもらっちゃお♡」
「「「い、いやああああああああああああああ!!!!」」」
勇敢だった少女たちには、まあ、うん、あ~……まあ、ね、うん、こういう世界ですしね。
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