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第12話 神々の自己紹介
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「ねえ、誰なの? あんなに美人だったり可愛かったりな女の子が……君のことをご主人様? 君の家、メイドさんでも雇っているのかしら?」
ニッコリと微笑みながら、繋いだ手を握りつぶすかの如く握力を解放する弥美。
トイレの神様への恐怖から、今度は彼女の恐怖に神人は体を震わせた。
そんな中、ブラシィたちは主の恋人と思われる女を目にして、慌てて駆け寄った。
「お前が、御子様の恋人か?」
「ふーん……あら、私たちの冴えない貧弱ご主人様には勿体ないくらいの上玉ねえ」
「でも、とてもお似合いのカップルに見えます。この二人が家のベッドで並んでお休みになられる日を、今からとても楽しみです」
突如詰め寄られて若干怪訝な顔を浮かべる弥美だが、三人の口からは「恋人」「上玉」「お似合いカップル」という単語が出たことで、弥美は神人が「浮気している?」という心配は一応なくなった。
「ええ、私は神人くんの恋人よ。愛全弥美。よろしくね。あなたたちは?」
「あ、や、弥美さん、この人たちはお、俺のし、しんせきっていうか……」
このままではまずいと慌てて間に入って誤魔化そうとする神人だが、既にもう遅い。
「私は神であり、御子様の専用歯ブラシでもある、ブラシィだ」
「同じく神であり、そこのゴミ……ご主人様の専用ボディタオルの、ルゥよ」
「神であり、坊や様専用の掛け布団の、アンファです」
……終わった……そんな表情で神人は固まった。
「えっと、神人くん…………私、日本語なのに話が良く分からないのだけれど、それは私の頭が悪いからかしら? 一応、私の成績は学年トップなのだけれど」
ニッコリと笑いながらも、どこか威圧感が篭っているように見えた。
その威圧感に神人の背筋に冷たい汗が流れたと思った、その時だった。
「は~いん。もう、いけずな子たちね~ん。そういうのはぜ~んぶ、お便所に流しちゃいま~す」
突如大きな流水音が聞こえた。
気づけば、目の前には巨大な渦が発生し、その渦にトゲ付きボディタオルも巨大布団も一瞬で吸い込まれた。
いや、流されたのだ。
「はい、水洗完了ん。あんまり大きいのは詰まっちゃうから、ダメよ~ん」
ニッコリと怪しく笑いながら、何事もなかったかのようにイレットが立ち上がった。
その様子に、ブラシィたちは舌打ちした。
「ちい、なんという力……それが……」
「そうよ~ん。トイレはあらゆる物を流しちゃうん♪」
全てを流す。その言葉は決してハッタリなどではなかった。
あらゆる攻撃も拘束もすべてが無意味と、その笑みが物語っていた。
「お坊ちゃまは~、使い捨ての~、おティッシュは~、ゴミ箱に~? それともおトイレに~? おトイレだったらウェルカム~ん! だって、ご家族にだってバレずにお汁の付いたカッピカピの特濃ティッシュだって、まだヌルヌルしているおティッシュだって~、ぜ~んぶ、証拠隠滅しちゃうしちゃう~ん!」
神人はゾッとしていた。「そういう分野」に関して積極的な神はアンファだと思っていた。そんなアンファを生真面目なブラシィは「淫乱神」と呼んでいた。
しかし、このイレットはそれをも上回る。
異常なまでに発情し、顔を赤くし、正気を失ったかのように息を粗くしている。
「はっ! はっ! はっ! はっ! ねえ、おぼっちゃま~ん、イレットは~、もう我慢できません~」
両手を頭の後ろに回し、舌出しながら、雌の顔で、そして何故か、その場でスクワットをしながらイレットは……
「私を~、八百万家専用の便所にしてください~ん! 用を足された後のお掃除も、神のペロペロチュウチュウウォシュレットで洗浄します~ん!」
ここまで狂ったように乱れられては、恐怖すら感じる。
店に居た男性客たちも、最初は色っぽいイレットにムラムラしていたものの、ここまでされては逆にゾッとして引くほどだった。
「な、なんなの、この子たちも、そしてこの人も……どういうことなの、神人くん!」
「……弥美さん……その、なんて言えばいいか……」
しかし、引いている場合ではない。
もはや我慢の限界に達したイレットが、肉食獣のごとく神人に襲い掛かった。
だが、そうはさせないと、三人の神が立ちはだかる。
「させません! 布団防壁ッ!」
「そんな防壁だって流しちゃうわーん!」
「そ、そんなっ!」
アンファが出現させた布団の壁が一瞬でアンファの発生させた渦へと吸い込まれる。
「お前の吸い込みは無限ではない! 吸い込みすぎるとかならず詰まるはず!」
「そうなればあんたは無力! ならば攻撃しまくってつまらせてやろうじゃない!」
防御不可能。ならば、攻撃しかないと、ルゥとブラシイが二人がかりで迎え撃つ。
歯ブラシとゴシゴシタオルならでの必殺技……
「私は歯ブラシ。使い方を誤れば歯茎すら破壊して相手を血まみれにする! 現れよ、我が武器、刃(は)武(ぶ)螺(ら)死(し)よっ!」
「私はボディタオル。時には相手の肌を真っ赤に染め上げることすら可能よ! 必殺・寒風(かんぷう)魔(ま)殺(さつ)!」
まるで大剣のような巨大歯ブラシを構えるブラシィ。
右手のボディタオルから冷気、左手のからボディタオルから風。二つの現象を発生させたボディタオルを携えて、ブラシイと共にイレットに立ち向かう。
「どきなさいん! ようやく見つけた、わたしぃの御主人様たちよおん! あなたたちみたいに、早々に八百万家と出会えた幸福ものたちにいん、わたしぃの気持ちが分かるわけないわあん!」
すると、イレットは発情しながらもどこかイラだった様子で、両手に何かを具現化した。
それは、腰に巻いているものと同じ、便座だ。
「便座ロック!」
ニッコリと微笑みながら、繋いだ手を握りつぶすかの如く握力を解放する弥美。
トイレの神様への恐怖から、今度は彼女の恐怖に神人は体を震わせた。
そんな中、ブラシィたちは主の恋人と思われる女を目にして、慌てて駆け寄った。
「お前が、御子様の恋人か?」
「ふーん……あら、私たちの冴えない貧弱ご主人様には勿体ないくらいの上玉ねえ」
「でも、とてもお似合いのカップルに見えます。この二人が家のベッドで並んでお休みになられる日を、今からとても楽しみです」
突如詰め寄られて若干怪訝な顔を浮かべる弥美だが、三人の口からは「恋人」「上玉」「お似合いカップル」という単語が出たことで、弥美は神人が「浮気している?」という心配は一応なくなった。
「ええ、私は神人くんの恋人よ。愛全弥美。よろしくね。あなたたちは?」
「あ、や、弥美さん、この人たちはお、俺のし、しんせきっていうか……」
このままではまずいと慌てて間に入って誤魔化そうとする神人だが、既にもう遅い。
「私は神であり、御子様の専用歯ブラシでもある、ブラシィだ」
「同じく神であり、そこのゴミ……ご主人様の専用ボディタオルの、ルゥよ」
「神であり、坊や様専用の掛け布団の、アンファです」
……終わった……そんな表情で神人は固まった。
「えっと、神人くん…………私、日本語なのに話が良く分からないのだけれど、それは私の頭が悪いからかしら? 一応、私の成績は学年トップなのだけれど」
ニッコリと笑いながらも、どこか威圧感が篭っているように見えた。
その威圧感に神人の背筋に冷たい汗が流れたと思った、その時だった。
「は~いん。もう、いけずな子たちね~ん。そういうのはぜ~んぶ、お便所に流しちゃいま~す」
突如大きな流水音が聞こえた。
気づけば、目の前には巨大な渦が発生し、その渦にトゲ付きボディタオルも巨大布団も一瞬で吸い込まれた。
いや、流されたのだ。
「はい、水洗完了ん。あんまり大きいのは詰まっちゃうから、ダメよ~ん」
ニッコリと怪しく笑いながら、何事もなかったかのようにイレットが立ち上がった。
その様子に、ブラシィたちは舌打ちした。
「ちい、なんという力……それが……」
「そうよ~ん。トイレはあらゆる物を流しちゃうん♪」
全てを流す。その言葉は決してハッタリなどではなかった。
あらゆる攻撃も拘束もすべてが無意味と、その笑みが物語っていた。
「お坊ちゃまは~、使い捨ての~、おティッシュは~、ゴミ箱に~? それともおトイレに~? おトイレだったらウェルカム~ん! だって、ご家族にだってバレずにお汁の付いたカッピカピの特濃ティッシュだって、まだヌルヌルしているおティッシュだって~、ぜ~んぶ、証拠隠滅しちゃうしちゃう~ん!」
神人はゾッとしていた。「そういう分野」に関して積極的な神はアンファだと思っていた。そんなアンファを生真面目なブラシィは「淫乱神」と呼んでいた。
しかし、このイレットはそれをも上回る。
異常なまでに発情し、顔を赤くし、正気を失ったかのように息を粗くしている。
「はっ! はっ! はっ! はっ! ねえ、おぼっちゃま~ん、イレットは~、もう我慢できません~」
両手を頭の後ろに回し、舌出しながら、雌の顔で、そして何故か、その場でスクワットをしながらイレットは……
「私を~、八百万家専用の便所にしてください~ん! 用を足された後のお掃除も、神のペロペロチュウチュウウォシュレットで洗浄します~ん!」
ここまで狂ったように乱れられては、恐怖すら感じる。
店に居た男性客たちも、最初は色っぽいイレットにムラムラしていたものの、ここまでされては逆にゾッとして引くほどだった。
「な、なんなの、この子たちも、そしてこの人も……どういうことなの、神人くん!」
「……弥美さん……その、なんて言えばいいか……」
しかし、引いている場合ではない。
もはや我慢の限界に達したイレットが、肉食獣のごとく神人に襲い掛かった。
だが、そうはさせないと、三人の神が立ちはだかる。
「させません! 布団防壁ッ!」
「そんな防壁だって流しちゃうわーん!」
「そ、そんなっ!」
アンファが出現させた布団の壁が一瞬でアンファの発生させた渦へと吸い込まれる。
「お前の吸い込みは無限ではない! 吸い込みすぎるとかならず詰まるはず!」
「そうなればあんたは無力! ならば攻撃しまくってつまらせてやろうじゃない!」
防御不可能。ならば、攻撃しかないと、ルゥとブラシイが二人がかりで迎え撃つ。
歯ブラシとゴシゴシタオルならでの必殺技……
「私は歯ブラシ。使い方を誤れば歯茎すら破壊して相手を血まみれにする! 現れよ、我が武器、刃(は)武(ぶ)螺(ら)死(し)よっ!」
「私はボディタオル。時には相手の肌を真っ赤に染め上げることすら可能よ! 必殺・寒風(かんぷう)魔(ま)殺(さつ)!」
まるで大剣のような巨大歯ブラシを構えるブラシィ。
右手のボディタオルから冷気、左手のからボディタオルから風。二つの現象を発生させたボディタオルを携えて、ブラシイと共にイレットに立ち向かう。
「どきなさいん! ようやく見つけた、わたしぃの御主人様たちよおん! あなたたちみたいに、早々に八百万家と出会えた幸福ものたちにいん、わたしぃの気持ちが分かるわけないわあん!」
すると、イレットは発情しながらもどこかイラだった様子で、両手に何かを具現化した。
それは、腰に巻いているものと同じ、便座だ。
「便座ロック!」
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