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第28話 桁違いの神

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「貴様ッ! 乱交するのは異存ないが、新入りのくせに御子様にすり寄りすぎだ!」
「立場わきまえなさいよ、このゴキブリ人形! いくら御主人様がクズでもねぇ、あんたみたいなビッチ人形抱く気になんないわよ! ……って、ご主人様、あ、あなた、何を勃起してんのよ!」
「んもう、坊や様ったら、昼間に母娘丼ぶりを御賞味いただいたのに、乱交……他人丼は別腹ですか?」
「あるじさまのすっけべ~♪ そんなにまだまだおまんこしたいなら~、クーラのごうほうぷにぷにちつまくらでまたねてもいーよ?」
「うっわ、こんなちっさい枕でオナニーとか、マジスケベ~。どのマンコも選び放題~、オナニーし放題でしかもタダまん!」

 気付けば神たちは張り合うように五人同時に神人にまとわりつき、更に各々がにらみ合いながら神人の股間をまさぐったり、自分の胸を擦り付けたり、手を引っ張って自身の秘所に誘ったりし、さらに……

「らんこ~と~、ききつけて~、それならぁん、私ぃも~ん」

 スタスタとトイレからイレットまでドサクサに紛れて参加しようと顔を出してきた。

「むぅ、神人め……イレットは共有便所とはいえ、あんなにたくさんとオナニーできるなんて……」
「んもう、あなた! 私、神人くんの道具宣言したはずのイレットを使ってあなたが自慰をしようとしたの、まだ怒ってますからね?」
「いや、だ、だって、イレットの便器は名器で……」
「シィとディッシュとキューブだけでは足りないの?」

 息子を巡る神々の争いに、流石の両親も苦笑いするしかなかった。
 唯一この状況に、ため込んでいた怒りが爆発寸前なのは弥美。

「あなたたち……神人くんは私の……」

 神人は自分のモノだと宣言しようとした。すると、その時だった!

「電化製品の反応を感じたザマス」
「「「「ッッ!!!???」」」」

 一人の白いエプロンを纏った一人のメイドが現れた。

「こんどは誰かしら!?」

 また新たな敵かと弥美が牙を剥き出しにして唸る。
 現れたメイドは長い黒のスカートとフリルのエプロン、そしていかにも教育熱心そうなザマス眼鏡をかけている。
 黒い髪を頭の後ろで一つにまとめ、年齢は三十代の熟した女という様子。
 そんなメイドに、父は泣き顔ですり寄り。

「おお、キューブよ。見てみろ、神人があんなにモテてオナニーばかりしようとしている」

 そんな父の様子に、キューブと呼ばれた女はメガネをキラリと上げ、冷めた目を見せる。

「坊ちゃま、あまりお勉強もしないで自慰ばかりは考え物ザマス。最近部屋の掃除をしても猥褻な本は出なくなりましたが、パソコンの中身だったり、恋人との過ごし方なり、そして道具の扱いも少しは考えた方がいいザマス」
「きゅ、きゅーぶ……」
「それと、旦那様。坊ちゃまの自慰を羨ましがるのはいかがなものかと思うザマス。旦那様には……」
「お、おい、キューブ、ま、まて、今は息子の恋人も……おひょっ!?」

 突然、キューブが膝を丁寧につき、父のズボンのチャックを降ろして逸物を唐突に口の中に咥え込んだ。
 何の前触れもない行動に流石の弥美も絶句してしまい、更に……

「じゅ~おぼぼぼぼぼぼぼぼぼ、きゅっ、……じゅぼおおぼぼぼぼぼぼ!」
「おっほおおおおおお! あ、相変わらず、な、なんという吸引力! うっ……」
「んくっ」 

 吸い込む音。途中でいきなり止まる音。かと思えば再び再開してとてつもなく吸引音が響き渡った。
 情けない顔をして一種で果てる父。一方でキューブは何事もなかったかのようにササっと立ち上がり、口元を拭って涼しい顔をする。

「旦那様には私が居るザマス。この掃除機の神様、キューブが」
「きゅーぶう!」

 そう、これが八百万家の掃除機。そして父のオナニーアイテムでもある掃除機のキューブなのだった。

「そ、掃除機……ね、ねえ、神人くん」
「だ、大丈夫だよ、弥美さん! 俺、キューブでオナニーしたことは無いから! ……興味は……」
「いえ、もうすでにこれだけの神と自慰をしておいて今さら……って、今、最後に何を小声で言ったのかしら? オイゴラ……」
「ななな、なんでもないって! そそ、それよりどうしたのキューブ? わざわざ押入れから出てきた……」

 慌てたように誤魔化しながらキューブに尋ねる神人。
 すると、キューブはメガネを上げながら……

「我々電化製品は、ブラシィたちと違ってより神の波動を電気的に感じることができるザマス。だからこそ、電化製品であれば会ったことがなくても神かどうかは分るザマス。それに……」

 電化製品ゆえの能力と口にし、更にキューブはまだ開けられていない段ボールに手を添える。

「電化製品の神の中でも……有名な神であれば嫌でも分かるザマス」

 そう言って、キューブがガムテープを外して段ボールから出て来たもの。
 それはなんと、デスクトップ型のパソコンだった。

「えっ!? ぱ、パソコン!?」
「パソコンまで送られ……ん? 神……って……」
「ま、まさかっ!」

 すると、キューブはコクリと頷く。それは「パソコンに触れろ」と促しているのだ。

「じゃ、じゃあ……」

 神人が息を呑んで、パソコンに手を伸ばす。
 まだ電源の入っていないパソコンに神人が触れた、次の瞬間―――


「ふぅ……色々とあったが、わっちもようやく目覚められたのう」


 独特な一人称と古風な喋りをするもの。しかし、老婆なわけではなく、むしろ……

「えっ!?」
「……こ、これはっ!?」

 出てきたのは、クーラと同じぐらいの背丈の幼い姿の女。
 ツルペタプニプニで、銀髪と鋭い三白眼。
 お腹を露出し、ヒラヒラの短い薄いピンクのスカートと同じ色のスポーツブラ。
 柔らかそうな肌に白いニーソが食い込んでいる。


「そして、初めましてだのう、八百万家よ。わっちの贈り物は喜んでくれたかのう?」

「お、贈り物……えっ!? そ、それって、まさか!?」

「うむ。わっちが贈った。わっちが、通販サイトのデータに入り込み、わっちがネット上で管理している架空口座から金を振り込んでのう」

「ッッ!!??」


 その少女はケタケタと笑い……


「わっちは全知全能にして、世界を征服する神……パーソナルコンピューターことパソコンの神……コンという!」


 己を何者かを名乗った。
 そして、このコンの存在が、今後の八百万家の運命を大きく変えることになるのだった。
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