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第9話 キレイ
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「というわけですので、お義母さん! 息子さんを……もらっていきます!」
「ふふふ、そう」
ツガイになるということで、フェンリルから許可を貰うべく頭を下げるカノン。
ただ、元々フェンリルの方から提案したことであり、特にそこは問題なかった。
「まぁ、オレの足なら会おうと思えばすぐに会えるわけだし……あと、オレの体に刻んでいる紋様は私と繋いで話をすることも、なんなら召喚することも可能だから」
「え、そ、そうなんですか?」
「当たり前でしょう? それぐらいの警戒をしていないと、人里に可愛い息子を預けられないわ。危険がいっぱい、悪い人間もたくさんいる、だけれどオレの世界を広げる意味でもと、心を殺して私は送り出すのよ?」
フェンリルの言葉に改めて「親ばか」と思うカノンだったが、しばらくは何かと常識の欠如や言葉の壁などでオレのことで悩んだり相談したりすることもあると思ったので、それはありがたかった。
一方で、オレに何か危機があれば伝説のフェンリルが登場してしまう恐れがあり、そうなれば学校も王都も大混乱になる光景が容易に想像できたので、自分がしっかりしないとと、カノンは気を引き締める。
「では、オレ……ガルゥ、ワオ、バウ、バウウウ♥」
「ママ! ガウガウガゥーン♪ バウウウ♪」
獣同士の言葉でも、フェンリルの顔に抱き着いて頬を寄せるオレの姿を見ているだけで、カノンにも互いに何を言っているのか何となくわかった。
――オレ、いってらっしゃい、愛しているわ
――ママ、いってきます、愛している
なんてことを言っているんだろうなとカノンは想像し、微笑んだ。
そして二人は離れ、オレは笑顔でカノンに振り返る。
「カノン、イク! ノル!」
「うん、よろしくね!」
オレが中腰になる。そしてカノンはその背に、初めて自分の意志で跨る。
今まではオレが無理やり担いでおんぶしていたのだが、今度からは違う。
これは、騎乗なのだ。
「よっし、いけーーーー、オレ! 真っすぐ!」
「イクー!」
そして、二人は風のように飛び出した。
深く生い茂り、道も舗装されていない獣道。
ぬかるみや木の枝などが至る所で道を遮るが、オレは背負っているカノンにその全てが当たらぬように、最速最短の道を駆け抜ける。
「わ、速い! しかも……ルートが……なんというか、私が『あっ、やばいかも』って思った瞬間には、それをもう避けてくれてる……すごい!」
「~♪」
もはや並の獣すらも超える速度に、騎乗している自分に配慮した気遣い。
そして相変わらずの背中の安心感。
「なんか……騎獣を探すために訪れた大森林で……本当に……これしかない、この人しかいないっていうのを、見つけちゃったなぁ」
これから先、色々と困難やら外野から言ってくる者は絶対に現れるだろう。
だがそれでも……
「カノン!」
「え? わ、もう森を抜け――――ッ!?」
駆け抜けた先、そこに広がるのは果てまで広がる大草原と眩い日の光。
「……綺麗……世界が輝いて見える」
いつもならば、そこまで感慨にふけることもないような景色も、今ではとても眩く見えた。
「キレイ? セカーイカガヤイテ?」
「あ、分かんないか……えっと、綺麗は……空、綺麗! 周り、草原、景色、綺麗! えっと……」
「キレイ……マル?」
「そう、綺麗はマルな言葉だよ! まる!」
「オー……カノンキレイ!」
「ぶぼっほ!?」
その瞬間、カノンは緩み切った表情で後ろからオレに頬を擦りつけた。
「こいつめぇ~! オレ、プレイボーイなことはだめだよぉ~!」
「プレイボーイ? マル?」
「ぶぶー、プレイボーイ、バッテン!」
「ッ!? オレバッテン!!??」
「違う違う! プレイボーイ、バッテン! オレは二重マル!」
「ッ! ~~~~~~~~~~~~♪」
そう、自分は最高の相棒を見つけたのだと、カノンの心は弾んだ。
「ふふふ、そう」
ツガイになるということで、フェンリルから許可を貰うべく頭を下げるカノン。
ただ、元々フェンリルの方から提案したことであり、特にそこは問題なかった。
「まぁ、オレの足なら会おうと思えばすぐに会えるわけだし……あと、オレの体に刻んでいる紋様は私と繋いで話をすることも、なんなら召喚することも可能だから」
「え、そ、そうなんですか?」
「当たり前でしょう? それぐらいの警戒をしていないと、人里に可愛い息子を預けられないわ。危険がいっぱい、悪い人間もたくさんいる、だけれどオレの世界を広げる意味でもと、心を殺して私は送り出すのよ?」
フェンリルの言葉に改めて「親ばか」と思うカノンだったが、しばらくは何かと常識の欠如や言葉の壁などでオレのことで悩んだり相談したりすることもあると思ったので、それはありがたかった。
一方で、オレに何か危機があれば伝説のフェンリルが登場してしまう恐れがあり、そうなれば学校も王都も大混乱になる光景が容易に想像できたので、自分がしっかりしないとと、カノンは気を引き締める。
「では、オレ……ガルゥ、ワオ、バウ、バウウウ♥」
「ママ! ガウガウガゥーン♪ バウウウ♪」
獣同士の言葉でも、フェンリルの顔に抱き着いて頬を寄せるオレの姿を見ているだけで、カノンにも互いに何を言っているのか何となくわかった。
――オレ、いってらっしゃい、愛しているわ
――ママ、いってきます、愛している
なんてことを言っているんだろうなとカノンは想像し、微笑んだ。
そして二人は離れ、オレは笑顔でカノンに振り返る。
「カノン、イク! ノル!」
「うん、よろしくね!」
オレが中腰になる。そしてカノンはその背に、初めて自分の意志で跨る。
今まではオレが無理やり担いでおんぶしていたのだが、今度からは違う。
これは、騎乗なのだ。
「よっし、いけーーーー、オレ! 真っすぐ!」
「イクー!」
そして、二人は風のように飛び出した。
深く生い茂り、道も舗装されていない獣道。
ぬかるみや木の枝などが至る所で道を遮るが、オレは背負っているカノンにその全てが当たらぬように、最速最短の道を駆け抜ける。
「わ、速い! しかも……ルートが……なんというか、私が『あっ、やばいかも』って思った瞬間には、それをもう避けてくれてる……すごい!」
「~♪」
もはや並の獣すらも超える速度に、騎乗している自分に配慮した気遣い。
そして相変わらずの背中の安心感。
「なんか……騎獣を探すために訪れた大森林で……本当に……これしかない、この人しかいないっていうのを、見つけちゃったなぁ」
これから先、色々と困難やら外野から言ってくる者は絶対に現れるだろう。
だがそれでも……
「カノン!」
「え? わ、もう森を抜け――――ッ!?」
駆け抜けた先、そこに広がるのは果てまで広がる大草原と眩い日の光。
「……綺麗……世界が輝いて見える」
いつもならば、そこまで感慨にふけることもないような景色も、今ではとても眩く見えた。
「キレイ? セカーイカガヤイテ?」
「あ、分かんないか……えっと、綺麗は……空、綺麗! 周り、草原、景色、綺麗! えっと……」
「キレイ……マル?」
「そう、綺麗はマルな言葉だよ! まる!」
「オー……カノンキレイ!」
「ぶぼっほ!?」
その瞬間、カノンは緩み切った表情で後ろからオレに頬を擦りつけた。
「こいつめぇ~! オレ、プレイボーイなことはだめだよぉ~!」
「プレイボーイ? マル?」
「ぶぶー、プレイボーイ、バッテン!」
「ッ!? オレバッテン!!??」
「違う違う! プレイボーイ、バッテン! オレは二重マル!」
「ッ! ~~~~~~~~~~~~♪」
そう、自分は最高の相棒を見つけたのだと、カノンの心は弾んだ。
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