49 / 66
第48話 放課後
しおりを挟む
放課後の学園の図書室で、二人の男が並んで座っていた。
「そうだ。先ほどと同じような意図だ。したがって……」
「うむ、なるほど。火属性魔法因数分解というのを当てはめるわけか!」
「……ああ」
「よーし、ならばもはや僕の敵ではない! 小テストの問1よ、今こそ屈辱を晴らしてくれよう!」
放課後に約束通りシィーリアスに勉強を教えることになったセブンライト。
最初は流れに逆らえずに嫌々ながらではあったものの、昼休みの一件で考えを改め、セブンライトも積極的にシィーリアスに勉強を教えていた。
今やっているのは、昨日の小テストの解説と公式や用語の指導。
両者やる気があるだけに指導に熱が入り、それだけでなく……
(公式を覚えるのにイチイチ説明が必要だけど……こいつ、知識がないだけで理解は早い……頭は普通にいいのかもな……)
シィーリアスは小テストが0点だったが、それは単純に知識が無かっただけであり、別に頭が悪いわけではなかった。
そのことはフォルトも見抜いていたこともあり、まだ初日ではあるが、このまま勉強も続けていけば、きっと実になるだろうとセブンライトも感じた。
「解けたぞ、セブン!」
「ああ……ああ……うん、途中式も合っている……ああ、正解だ」
「ふはははは、やったぞ! ついに小テストにリベンジできたぞ!」
「いや……それは気が早い。まだ一問目の基礎問題だから……問題数はまだまだあり、さらに先に進むにつれて難しくなる」
「ぬっ……徐々に強敵が出てくるわけか……望むところだ!」
まだ一問目。基礎の基礎。というよりも、むしろ魔法学園に入学できる生徒で解けないものなど居ないと言えるほどのサービス問題でもあった。
しかしそれでも全く何も知らなかったシィーリアスが、ちゃんと自ら問題を解くことができた。
教えたことをすぐできるようになったシィーリアスに、セブンライトは普通に関心していた。
本来、シィーリアスほどの力があれば、人に頭を下げることもなく、望みはそれこそ力ずくで何でもできるのではないかとセブンライトは感じた。
こうして人に頭を下げてまで、できないことをちゃんと学ぼうとする姿勢は心に来るものがあった。
一方で……
「お前……すごいんだな」
「え? なんで? これは基礎なのだろう? つまり、倒せて当たり前の敵!」
「いや、そうじゃなくて……あんなに強くなったのも……やっぱすごい努力したからなのか? それとも、戦闘は最初から強かったのか?」
だからこそ、気になった。
できないことを恥をかいてでも頭を下げて学ぶシィーリアスは、戦闘に関してはどうやって強くなったのかと。
すると……
「弱かったさ。だからこそ、僕は常にこう思っている。『僕は今この地で一番弱い人間だ。僕が弱ければ大切な人たちにもすごい迷惑をかけてしまう』……そう思って強くなろうと思った」
「一番……弱い?」
常に自分が弱いと考え、既に十分すぎるほどの力があっても真っすぐな目でそう答えるシィーリアスにますますセブンライトは感心した。
「とにかく、君には勉強を教えてもらっている恩もある! そんな僕の蹴り技でよければいくらでも教えよう!」
「ああ……頼む。僕もこの学園で一番弱い……そういう考えで頑張るよ。僕の場合は、実際にそうかもしれないしな」
一つだけセブンライトが勘違いしているのは、シィーリアスの言葉は全て真実であり、実際にシィーリアスはパーティーの中で一番劣っていたことと、エンダークという街ではほんの少しの弱さが死に直結することもあり、正に生きるために強くなるしかなかったという事情があった。
「うむ、今日は非常に捗った。僕は今、人生でもっとも勉強したのではないかと思っている。頭を使うというのは普段身体しか使っていない僕には難儀であったが、君のおかげだ! セブン!」
「い、いや、別に……それより、たくさん勉強したものの、結局お前が出遅れてるのは変わらないんだから、とりあえず今日の所は家に帰っても復習しておけよ」
「ああ。もちろんだとも! 僕は君から教えてもらったことを決して忘れないぞ!」
「……いちいち大袈裟だな、お前は……」
そろそろキリもいいので、勉強会もこれまで。
集中して充実した時間だったと満足なシィーリアスは改めてセブンライトに感謝した。
「で、僕とのキック練習はどうすればいいだろうか?」
「え、あ、ああ、そうだな……だけど今日はもう遅いし……たとえばだけど、休日とかでもいいか?」
「ああ、もちろんだとも! 君の恩に報いるためにも、僕はいくらでも時間を調整しよう!」
「……ほんとに大袈裟な……」
思いのほか勉強に時間もかかったので、流石に今日は放課後にキックの訓練というわけにもいかないので、それは改めて。
その際にセブンライトは「休日までに走って体動かしておこう……」と、どんなトレーニングになるか分からないが、ハードなものにも少しでもついていけるように今のうちにコッソリ体を慣らしておこうと心に決めた。
そして、帰り支度を終えて校舎から外に出ると……
「おーい、もういっちょー!」
「そーら!」
「よーし、訓練場10週で上がるぞー!」
既に日も落ちているというのに、まだ多くの生徒が学園に残っていた。
箒で空を駆けている生徒や、騎獣に跨っている生徒、木剣で打ち合っている生徒など様々。
「おお、授業が終わってもまだこんなに。みんな、トレーニングをしているのだろうか?」
「ん? ああ、アレは部活だよ。訓練場がお前のアレの所為でちょっと悲惨なことになってるから、今日は少ないみたいだけど……」
「ぶかつ?」
それは、シィーリアスには聞いたことのない単語であった。
「ああ。この学園では、授業外で活動を行うものがあって、この学園には多くの団体がある。魔法開発研究部、魔法騎士部とか、まぁ色々と……今月は見学や体験入部期間になっててな」
「なんだと!? 僕はそんなの聞いてないぞ!?」
「……普通は入学前に知ってるし……まぁ、僕たちは入学式の日はアレだったけど……」
「え、セブンはいいのか?!」
「まぁ、僕はもう入る部活は決めてるし、今日はそこが休みだったから……だから勉強会できたわけだが……」
「ぬう、なんと!」
魔法学園に「部活動」というものの存在があると初めて知ったシィーリアスはひどく震えた。
そして、同時にフリードから与えられた指令を思い出した。
(6)学園の行事などには積極的に参加すること
で、ある。
「セブンよ、部活動とは学校行事の一環だろうか!?」
「あ~、行事というわけではないが、それでも学校行事の中では部活動別に参加したりするイベントもあるからな」
「となると、どこかの部活に所属すべきだろうか!?」
「そりゃぁ、自分のやりたいことを出来る部活とか、あと部活によっては卒業後の進路で有利だったりとかもあるみたいだしな。フォルト姫やクルセイナお嬢様とそういう話はしなかったのか?」
「なんと! 聞いてないぞ、僕は! では……僕もどこかの部活に入らねば!」
実際、フォルトもクルセイナも部活には入る予定であったのだが、この数日はそのことをすっかり忘れていた。
それは休み時間も放課後もシィーリアスと一緒にいたのである。
新入生の部活動の見学や体験入部期間は昨日から始まったのだが、昨日は二人ともフォルトの屋敷でシィーリアスとの勉強会でそれどころではなかった。
そのため……
「あ~ら~~あ~~~らぁん♥ シィーさ~~~ん♥」
「おお、シィー殿♥ まだ残られていたか! 今から帰りか?」
「うむ! 二人も残っていたのか!」
「ええ。部活の見学を」
「私もだ。しかし、丁度良かった。終わったらシィー殿の家に行こうと思っていたのだ。一緒に帰ろう」
訓練場の方からフォルトとクルセイナがシィーリアスに気づき、嬉しそうに駆け寄ってきた。
そして、左右からシィーリアスの腕に抱き着いて乙女の顔をしてすり寄る。
人前だから?
むしろ人前だからこそ二人は周囲に「自分はシィーリアスとこんなに仲が良い」とアピールする打算があった。
流石に二人のこの発情した雌猫のように甘える姿にセブンライトは狼狽える。
一方でシィーリアスはそのことに動じず、むしろそんな二人の口から出た「部活」の単語に反応した。
「二人も部活とやらに入るのか?」
「ええ。ワタクシは明日に騎獣部に入ろうと思っていますわ。明日から参加の予定ですわ」
「私は魔法剣士部にな」
「ふ~む……」
興味深そうに顎に手を当てて考えるシィーリアス。そんなシィーリアスに間髪入れずに……
「ふふ、シィーさんも明日から参加しますわ~。ワタクシと同じ騎獣部で3年間ず~っと一緒ですわ~♥」
「ははは、何を! シィー殿、私と同じ魔法剣士部に入られよ。シィー殿の足技に剣まで加われば、まさにシィー殿の目指すSSSランクに待ったなしだ! 剣の手ほどきなら私がしてやる……その代わり、部活の後は私にベッドで手ほどきを……♥」
二人はもう完全に開き直り、シィーリアスと今以上の親密な関係になると決意して、これまで以上に積極的に行くことにした。
「うむ、確かに君たちと同じ部活だと有意義だと思うな……」
とはいえ、シィーリアスも「この程度のスキンシップ」でフラフラと狼狽えることもなく、単純に二人から誘われた部活について真剣に考える様子。
すると……
「ジャンヌちゃん、部活は決めた?」
「期間中は色々と見学と体験する予定よ。スパイナ先輩からは教えてもらってるけど、『ピュアナ』は?」
「私は魔法騎士部って最初から決めてたから! でも、今日はお休みだった……残念だけどね。でも、先輩たちと色々入部後の話ができて良かった!」
「あら、良かったわね。なら、私はどうしようかしら……ん? あら♪」
その場に、フォルトたちと同じように部活動見学で校内を回っていたと思われるジャンヌと遭遇。
ジャンヌはシィーリアスの姿を見て、「ニヤリ」と笑みを浮かべる。
一方で……
「あ……」
「ッ、君は……」
ジャンヌの傍らにいた一人の女生徒が、セブンライトを見て怯えた表情を浮かべた。
赤みのある長い髪を両脇で結んだ、小柄の可愛らしい生徒。
セブンライトはその少女に見覚えがあった。
そして……
「君!」
「ひっ!?」
「……入学式の日は……本当にすまなかった!」
遭遇した一同。その場の誰かが声を上げる前に、セブンライトが前へ出て、頭を下げて謝罪した。
「……ふぇ?」
セブンライトの行動にポカンとする少女。
その少女こそが、入学式の日にセブンライトに怒鳴られた、平民の女生徒だった。
「君に大変酷い侮辱をしてしまった……本当に申し訳ない!」
「え、あ、あの……」
「許されないのは分かっている。だが、今ではあの言葉を後悔している。自分の愚かさを恥じている。ごめん……なさい」
平民に頭を下げる。
それは、これまでのセブンライトからはありえない行動だった。
しかしだからこそ、その謝罪には本当の想いが込められており、そんなセブンライトの行動にフォルトもクルセイナも、そしてジャンヌも目を丸くした。
「そうだ。先ほどと同じような意図だ。したがって……」
「うむ、なるほど。火属性魔法因数分解というのを当てはめるわけか!」
「……ああ」
「よーし、ならばもはや僕の敵ではない! 小テストの問1よ、今こそ屈辱を晴らしてくれよう!」
放課後に約束通りシィーリアスに勉強を教えることになったセブンライト。
最初は流れに逆らえずに嫌々ながらではあったものの、昼休みの一件で考えを改め、セブンライトも積極的にシィーリアスに勉強を教えていた。
今やっているのは、昨日の小テストの解説と公式や用語の指導。
両者やる気があるだけに指導に熱が入り、それだけでなく……
(公式を覚えるのにイチイチ説明が必要だけど……こいつ、知識がないだけで理解は早い……頭は普通にいいのかもな……)
シィーリアスは小テストが0点だったが、それは単純に知識が無かっただけであり、別に頭が悪いわけではなかった。
そのことはフォルトも見抜いていたこともあり、まだ初日ではあるが、このまま勉強も続けていけば、きっと実になるだろうとセブンライトも感じた。
「解けたぞ、セブン!」
「ああ……ああ……うん、途中式も合っている……ああ、正解だ」
「ふはははは、やったぞ! ついに小テストにリベンジできたぞ!」
「いや……それは気が早い。まだ一問目の基礎問題だから……問題数はまだまだあり、さらに先に進むにつれて難しくなる」
「ぬっ……徐々に強敵が出てくるわけか……望むところだ!」
まだ一問目。基礎の基礎。というよりも、むしろ魔法学園に入学できる生徒で解けないものなど居ないと言えるほどのサービス問題でもあった。
しかしそれでも全く何も知らなかったシィーリアスが、ちゃんと自ら問題を解くことができた。
教えたことをすぐできるようになったシィーリアスに、セブンライトは普通に関心していた。
本来、シィーリアスほどの力があれば、人に頭を下げることもなく、望みはそれこそ力ずくで何でもできるのではないかとセブンライトは感じた。
こうして人に頭を下げてまで、できないことをちゃんと学ぼうとする姿勢は心に来るものがあった。
一方で……
「お前……すごいんだな」
「え? なんで? これは基礎なのだろう? つまり、倒せて当たり前の敵!」
「いや、そうじゃなくて……あんなに強くなったのも……やっぱすごい努力したからなのか? それとも、戦闘は最初から強かったのか?」
だからこそ、気になった。
できないことを恥をかいてでも頭を下げて学ぶシィーリアスは、戦闘に関してはどうやって強くなったのかと。
すると……
「弱かったさ。だからこそ、僕は常にこう思っている。『僕は今この地で一番弱い人間だ。僕が弱ければ大切な人たちにもすごい迷惑をかけてしまう』……そう思って強くなろうと思った」
「一番……弱い?」
常に自分が弱いと考え、既に十分すぎるほどの力があっても真っすぐな目でそう答えるシィーリアスにますますセブンライトは感心した。
「とにかく、君には勉強を教えてもらっている恩もある! そんな僕の蹴り技でよければいくらでも教えよう!」
「ああ……頼む。僕もこの学園で一番弱い……そういう考えで頑張るよ。僕の場合は、実際にそうかもしれないしな」
一つだけセブンライトが勘違いしているのは、シィーリアスの言葉は全て真実であり、実際にシィーリアスはパーティーの中で一番劣っていたことと、エンダークという街ではほんの少しの弱さが死に直結することもあり、正に生きるために強くなるしかなかったという事情があった。
「うむ、今日は非常に捗った。僕は今、人生でもっとも勉強したのではないかと思っている。頭を使うというのは普段身体しか使っていない僕には難儀であったが、君のおかげだ! セブン!」
「い、いや、別に……それより、たくさん勉強したものの、結局お前が出遅れてるのは変わらないんだから、とりあえず今日の所は家に帰っても復習しておけよ」
「ああ。もちろんだとも! 僕は君から教えてもらったことを決して忘れないぞ!」
「……いちいち大袈裟だな、お前は……」
そろそろキリもいいので、勉強会もこれまで。
集中して充実した時間だったと満足なシィーリアスは改めてセブンライトに感謝した。
「で、僕とのキック練習はどうすればいいだろうか?」
「え、あ、ああ、そうだな……だけど今日はもう遅いし……たとえばだけど、休日とかでもいいか?」
「ああ、もちろんだとも! 君の恩に報いるためにも、僕はいくらでも時間を調整しよう!」
「……ほんとに大袈裟な……」
思いのほか勉強に時間もかかったので、流石に今日は放課後にキックの訓練というわけにもいかないので、それは改めて。
その際にセブンライトは「休日までに走って体動かしておこう……」と、どんなトレーニングになるか分からないが、ハードなものにも少しでもついていけるように今のうちにコッソリ体を慣らしておこうと心に決めた。
そして、帰り支度を終えて校舎から外に出ると……
「おーい、もういっちょー!」
「そーら!」
「よーし、訓練場10週で上がるぞー!」
既に日も落ちているというのに、まだ多くの生徒が学園に残っていた。
箒で空を駆けている生徒や、騎獣に跨っている生徒、木剣で打ち合っている生徒など様々。
「おお、授業が終わってもまだこんなに。みんな、トレーニングをしているのだろうか?」
「ん? ああ、アレは部活だよ。訓練場がお前のアレの所為でちょっと悲惨なことになってるから、今日は少ないみたいだけど……」
「ぶかつ?」
それは、シィーリアスには聞いたことのない単語であった。
「ああ。この学園では、授業外で活動を行うものがあって、この学園には多くの団体がある。魔法開発研究部、魔法騎士部とか、まぁ色々と……今月は見学や体験入部期間になっててな」
「なんだと!? 僕はそんなの聞いてないぞ!?」
「……普通は入学前に知ってるし……まぁ、僕たちは入学式の日はアレだったけど……」
「え、セブンはいいのか?!」
「まぁ、僕はもう入る部活は決めてるし、今日はそこが休みだったから……だから勉強会できたわけだが……」
「ぬう、なんと!」
魔法学園に「部活動」というものの存在があると初めて知ったシィーリアスはひどく震えた。
そして、同時にフリードから与えられた指令を思い出した。
(6)学園の行事などには積極的に参加すること
で、ある。
「セブンよ、部活動とは学校行事の一環だろうか!?」
「あ~、行事というわけではないが、それでも学校行事の中では部活動別に参加したりするイベントもあるからな」
「となると、どこかの部活に所属すべきだろうか!?」
「そりゃぁ、自分のやりたいことを出来る部活とか、あと部活によっては卒業後の進路で有利だったりとかもあるみたいだしな。フォルト姫やクルセイナお嬢様とそういう話はしなかったのか?」
「なんと! 聞いてないぞ、僕は! では……僕もどこかの部活に入らねば!」
実際、フォルトもクルセイナも部活には入る予定であったのだが、この数日はそのことをすっかり忘れていた。
それは休み時間も放課後もシィーリアスと一緒にいたのである。
新入生の部活動の見学や体験入部期間は昨日から始まったのだが、昨日は二人ともフォルトの屋敷でシィーリアスとの勉強会でそれどころではなかった。
そのため……
「あ~ら~~あ~~~らぁん♥ シィーさ~~~ん♥」
「おお、シィー殿♥ まだ残られていたか! 今から帰りか?」
「うむ! 二人も残っていたのか!」
「ええ。部活の見学を」
「私もだ。しかし、丁度良かった。終わったらシィー殿の家に行こうと思っていたのだ。一緒に帰ろう」
訓練場の方からフォルトとクルセイナがシィーリアスに気づき、嬉しそうに駆け寄ってきた。
そして、左右からシィーリアスの腕に抱き着いて乙女の顔をしてすり寄る。
人前だから?
むしろ人前だからこそ二人は周囲に「自分はシィーリアスとこんなに仲が良い」とアピールする打算があった。
流石に二人のこの発情した雌猫のように甘える姿にセブンライトは狼狽える。
一方でシィーリアスはそのことに動じず、むしろそんな二人の口から出た「部活」の単語に反応した。
「二人も部活とやらに入るのか?」
「ええ。ワタクシは明日に騎獣部に入ろうと思っていますわ。明日から参加の予定ですわ」
「私は魔法剣士部にな」
「ふ~む……」
興味深そうに顎に手を当てて考えるシィーリアス。そんなシィーリアスに間髪入れずに……
「ふふ、シィーさんも明日から参加しますわ~。ワタクシと同じ騎獣部で3年間ず~っと一緒ですわ~♥」
「ははは、何を! シィー殿、私と同じ魔法剣士部に入られよ。シィー殿の足技に剣まで加われば、まさにシィー殿の目指すSSSランクに待ったなしだ! 剣の手ほどきなら私がしてやる……その代わり、部活の後は私にベッドで手ほどきを……♥」
二人はもう完全に開き直り、シィーリアスと今以上の親密な関係になると決意して、これまで以上に積極的に行くことにした。
「うむ、確かに君たちと同じ部活だと有意義だと思うな……」
とはいえ、シィーリアスも「この程度のスキンシップ」でフラフラと狼狽えることもなく、単純に二人から誘われた部活について真剣に考える様子。
すると……
「ジャンヌちゃん、部活は決めた?」
「期間中は色々と見学と体験する予定よ。スパイナ先輩からは教えてもらってるけど、『ピュアナ』は?」
「私は魔法騎士部って最初から決めてたから! でも、今日はお休みだった……残念だけどね。でも、先輩たちと色々入部後の話ができて良かった!」
「あら、良かったわね。なら、私はどうしようかしら……ん? あら♪」
その場に、フォルトたちと同じように部活動見学で校内を回っていたと思われるジャンヌと遭遇。
ジャンヌはシィーリアスの姿を見て、「ニヤリ」と笑みを浮かべる。
一方で……
「あ……」
「ッ、君は……」
ジャンヌの傍らにいた一人の女生徒が、セブンライトを見て怯えた表情を浮かべた。
赤みのある長い髪を両脇で結んだ、小柄の可愛らしい生徒。
セブンライトはその少女に見覚えがあった。
そして……
「君!」
「ひっ!?」
「……入学式の日は……本当にすまなかった!」
遭遇した一同。その場の誰かが声を上げる前に、セブンライトが前へ出て、頭を下げて謝罪した。
「……ふぇ?」
セブンライトの行動にポカンとする少女。
その少女こそが、入学式の日にセブンライトに怒鳴られた、平民の女生徒だった。
「君に大変酷い侮辱をしてしまった……本当に申し訳ない!」
「え、あ、あの……」
「許されないのは分かっている。だが、今ではあの言葉を後悔している。自分の愚かさを恥じている。ごめん……なさい」
平民に頭を下げる。
それは、これまでのセブンライトからはありえない行動だった。
しかしだからこそ、その謝罪には本当の想いが込められており、そんなセブンライトの行動にフォルトもクルセイナも、そしてジャンヌも目を丸くした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる