冷酷非道な悪役人形皇女のピュアな恋愛事情 ~血の繋がった母にすら性的な拷問を行う帝国第二皇女は、年頃の娘のように専属執事と初々しい恋をする~

ななよ廻る

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冷酷非道な悪役人形皇女のピュアな恋愛事情

■第4話 人形皇女は冷酷な悪女であり、純粋な恋する乙女でもある

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 ■■

 マードレが目を覚ましたのは、窓のない薄暗い部屋であった。
 意識は朦朧とし、頭痛がする。
 自分がどこにいるのか。確認しようと視線だけ動かすと、見覚えのある部屋であることに気が付いた。

 ここは帝都城内に存在する隠し部屋。
 マードレが好んで使っている拷問部屋であった。

「……っ。なぜ私はここに……?」
「お目覚めですか、お母様?」

 声をかけられ、気怠い中でどうにか顔を上げると、暗闇の中にモナルカの姿がゆっくりと浮かび上がった。暗くて表情こそ伺えないが、見目姿は間違いなくマードレの娘であるモナルカだ。
 彼女に近付こうとしたが、手足が動かせられない。
 そこでようやく自分が拷問用の椅子に座らせられ、手足が鉄の錠で繋がれていることに気が付いた。

 状況からしてモナルカがマードレを捕えたことは間違いない。
 従順だった娘の反抗に驚くよりも、耐え難い屈辱に怒りがこみ上げてくる。

「モナルカ……これはどういうこと? 貴女、自分がなにをしているのか分かっているのですか!?」
「分かっております」

 マードレの怒気に臆することなく、モナルカは冷ややかに答える。

「私の大切なティーレを愚弄し、あまつさえ私の手で殺させようとした罪人を処刑するだけです」
「あ、貴女は……」

 マードレは戦慄《わなな》く。
 普段の無感情とは異なる、なにかしらの感情を感じさせる声音。
 そんなモナルカの異変を、頭に血が上っているマードレは認識できない。
 ただただこの状況が気に喰わないと、モナルカに怒声を浴びせる。

「血の繋がった、実の母である私《わたくし》を殺すというのですかっ!?」

 マードレにとっては正当なる抗議であった。
 解放されれば只では済まさないと釣り上がった瞳が告げているが、そもそもの前提が間違っていると、モナルカは冷淡に告げる。

?」
「……へ?」

 まさか、己の操り人形でしかない娘から、そんな言葉が飛び出すとは思わず、目を点にしたマードレの口から間抜けな声が漏れる。
 理解力が足りていないとようにため息を吐いたモナルカは、丁寧に言葉を付け加える。

「だから、なんだというのでしょうか?」
「だ、から?」
「ええ。不思議なことを仰るのですね」

 暗闇に慣れた瞳が、ようやくモナルカの表情を映し出す。
 醜い汚物を見るかのように、侮蔑を込めて見下《みくだ》す酷薄な表情。
 母であるマードレですら初めて見る冷酷な殺意を宿したモナルカは、己を産み落としただけの女に事実だけを告げる。

「血も涙もない人形に育てたのは、お母様でしょう?」
「あ、あぁっ……」

 無垢な少女を穢したことも。
 無辜《むこ》の民を拷問にかけたことも。
 実験と称して幼い子供を殺したことも。
 どのような惨たらしいことをしても、なにも感じることのできない人形《ばけもの》を作り上げてしまったのは他でもない、マードレ自身だ。

 それだけの非道、これだけの悪意に身を染めておきながら、どうしてたかが血が繋がった程度の女を殺すことを躊躇うだろうか。

 ここにきてマードレはようやく悟ったのだ。自分がナニを育ててしまい、これから自身の身になにが待ち受けるのかを。
 ガシャ、ガシャッとマードレの両手足の枷が幾度も鳴る。
 恐怖で震え、歯をカチカチと鳴らす彼女は、誰よりも外れないと理解している枷を外そうと必死にもがく。

「たすけっ、助けてぇっ!? 金輪際、貴女の執事に関わらないと誓うわ! 貴女に命令することもしません!! 視界に映るのも不快だというのなら、姿を消します!」

 ひたすらにマードレは懇願する。
 助けてください、お願いしますと、彼女がこれまでに手をかけてきた者達と同じように、涙を浮かべて命を請う。

「だからどうか、命だけは……助けてくださいっ」
「いいえ、絶対に許さないわ」

 帰ってくる答えは、当然否。
 モナルカの人生のおいて初めて、憎悪という激情が心を支配する。

「お母様の命令に従うだけの人形でしかなかった私に、人を愛する心をくれた誰よりも大切なティーレ……。彼を想うだけで、ずっと変わらなかった私の鼓動は速くなって、温かくなるの」

 大切な想いを留めるように、愛おしそうにぎゅっと胸元で両手を握ったモナルカは一転、歯を剥き出しにして唾を飛ばす勢いでマードレに怒声を浴びせる。

「そんな愛するティーレを、貴女はぁあっ! 私の手で殺せと言ったのよっ!? それも、お使いでも頼むかのような軽い気持ちで!」

 許せない許せない許せない許せないと頭をかきむしり狂声《きょうせい》を上げるモナルカは、初めて身を任せる激情をコントロールすることができなかった。
 人としての大事な部分が壊れてしまったかのように暴れるモナルカは、噛み付くかのように青褪めるマードレの眼前に顔を寄せる。
 人間の悪意を混ぜて煮詰めた坩堝《るつぼ》のようにドロドロに濁った瞳が迫り、マードレは小さく悲鳴を上げた。

「許せるはずがありませんよねぇっ!? 許せるとお思いですか、お母様っ!? ねぇ!? なにか仰ったらどうですか!?」
「ごめんなさいっ、ごめんなさい……許してくださいっ!」
「あぁっ、本当に愚かですね、貴女という人は! 言っているでしょう? 許せるはずがないと!!」

 許す許さないの選択はもう超えている。
 己よりも大切なティーレを殺そうとした時点で、マードレは母ではなく憎き仇となったのだ。
 後はどのように苦しめて殺すのか、その方法を決めるだけ。

「でも、安心してください。簡単には殺しません」

 そして、その方法を決めているモナルカは、これまでの狂乱が嘘であったかのように、平時のように落ち着きを取り戻すと、拷問部屋にある棚から細長い透明な硝子瓶を取り上げた。
 硝子瓶の中には黒くて細長い、虫のようななにかが蠢いていた。
 まるで見せびらかすように、マードレの前で硝子瓶を振る。

「これがなにか分かりますか?」
「……あぁっ、あぁああっ!? いやぁあああああっ!? 止めて止めてやめてぇええええっ!! それだけはっ、それだけはっ!」
「ええ。貴女もよく知っていますよね? 拷問虫です」

 見る見るうちに青褪めたマードレは、発狂したかのように悲鳴を上げる。喉が潰れてもいい。そう思わせるかのような惨めな絶叫を聞いて、モナルカはせせら笑う。
 モナルカよりもこの虫の特性を理解しているマードレに、恐怖を煽るように拷問虫を見せびらかしながら懇切丁寧に耳元で説明する。

「女の股から侵入し、子宮からゆっくりと、内側から体の肉を貪り喰らう肉食虫の一種です。ゆっくり……ゆっくりと、数日間かけて体を内側から食べられる恐怖と、人間との性行為では得られない想像を絶する性的な快楽を与える魔虫」

 聞きたくない聞きたくないと、ぎゅっと目を瞑り幼子のように首を振るマードレ。
 けれど、両手両足を繋がれた状態では耳を塞ぐこともままならない。
 聞かざるおえない言葉が、マードレの耳の奥を犯していく。

「拷問虫が分泌する麻痺毒によって、自害もできず寝ることも許されない、お母様が好んで使っていた拷問方法です」

 このおぞましい虫は、マードレが女の拷問用に創り上げた魔虫であった。
 自身の創った物で体を辱められ、死に至る。
 これほどまでに無残で惨たらしい、罪深き女に相応しい罰はないだろうとモナルカが選び抜いた処刑方法。

「嬉しいですよね? これを使う時、いつも言っていましたものね? 『人生最後に、女でしか味わえない最高の幸せを感じながら死ねるのだから、寛容なる私《わたくし》に感謝しなさい』って」
「止めてぇえっ!! 離して、離してぇえええっ!?」
「クスクスクス。嬉しいからって、そんなにはしゃがないでください」

 その効果を誰よりも知っているマードレは、千切れてもいいと両腕と両足を暴れさせる。
 けれども、どれだけ力をかけ、手首足首が擦れて血を撒き散らそうとも、人間の四肢がその程度で千切れるはずもない。
 例え千切れたところで、手と足の首より先を失くして逃げられるはずもないのだ。
 目からはいつまでも涙が零れて止まらず、股の間からは恐怖ゆえかじわりと暖かな液体を零していた。

「ほら? 寛容なる私に感謝してください?」
「します! 感謝します! だから、それだけは止めて! お願いしますっ、お願いしますっ、それだけは嫌なのよぉっ!?」
「殺すんですよ、肉片一つ残さず」

 怒り、喜びと安定せず移り変わり続けるモナルカの感情が消え失せる。
 無表情で無機質。先日、一人の令嬢を性奴隷に堕とした時のように、作業感覚でマードレの下半身に手を伸ばす。

「さぁ、足を開きましょう。貴女のような汚らわしい人の股になど触りたくはありませんが、手ずから入れてあげます」
「嫌ぁあああああっ!? そのおぞましい虫を私《わたくし》の大切な場所に入れないでぇっ!!」

 暴れたところで意味はない。
 マードレのスカートを捲り上げると、薄く透けた黒い下着が露わになる。
 失禁して濡れてしまった下着を膝下まで下ろすと、むわっと小さく湯気が立つ性器が外気に触れた。
 一児の母とは思えない、綺麗な色をして閉じた秘部。尿で濡れた肉壺がひくひくと反応を繰り返している。
 
「貴女が育ち生まれた胎《はら》を、このような虫に喰わせていいのっ!?」
「構いませんよ。むしろ、貴女の穢れた胎から生まれたと思うと、嫌悪しか湧きません。欠片も残さず食べて欲しいですね」

 そう言ってモナルカは硝子瓶の封を取ると、マードレの陰部を片手で開き、ひくつく肉へと強引に硝子瓶の穴を突き刺した。

「うぅっ!? あぁあっ!!」

 未使用のように狭く閉じた穴を強引にこじ開けられ、マードレは嬌声を上げる。
 ぐりぐりと深く差し込んでいくと、硝子の中で蠢いていた拷問虫がゆっくりとマードレの膣《ちつ》を目指して動き始めた。

「っ!?」

 黒い拷問虫が女陰《じょいん》に触れた瞬間、マードレの体がビクリッと跳ねた。
 味わうようにマードレに中に侵入していく虫を見ていたモナルカは、淡々と彼女に問う。

「ほら。感じていますか? ゆっくりと、貴女の腔内《なか》に入っていきますよ?」
「ひぎっ!? あ……いやぁ…………おくにぃ……はい、ってぇ」

 ぶちゅりと、卑猥な水音を立ててマードレの蜜壷にその身を隠した拷問虫。
 見えなくなってもマードレの腔内を犯し進んでいるのだろう。
 びくっ、びくっと体を幾度も震わせるマードレの息遣いが段々と荒くなっていく。

「は……はっ……はっ……はっ!?」

 体が火照り、息遣いに艶が出始める。
 頬は熱を出したかのように赤く染まり、潤んだ瞳が性的な快楽を感じ始めていることをモナルカに教えてくれる。

「あ……………………」

 プシャァッと、股から潮が吹き出す。
 同時にどこからかグポリと生々しい音が響き、女性器の少し上の腹が一瞬蠢いた。
 無事、子宮に到達したのだろう。
 それを見届けたモナルカは、マードレの性器に細長い硝子瓶を挿したまま立ち上がると、あっさりと彼女に背を向けた。

「最後の親孝行です。存分に――人生最後の快楽に酔いしれてください」
「……んぐぅっ……あぁあ……あ、あ、ぬいてぇ……おねがい…………だしっ!? あぁあああああああああっ!? いっ!? ……っんあっ!? あ゛あ゛あ゛ぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!??」

 室内では、水音と女の喘ぎ声がいつまでも反響する。
 しばらくの間、女が恐怖と絶頂を繰り返す様を離れた位置で眺めていたが、モナルカは直ぐに興味を失くし拷問室から出て行った。
 部屋を出る間際、女がなにかを言っていた気がしたか、モナルカの耳には意味の通った言葉として届かなかった。
 やることを終えた彼女は、拷問室で今なお行われている凄惨な拷問のことなど直ぐに忘れ、愛しきティーレを想像し頬を緩めると、足早に彼の元へと向かうのであった。 


 後日、モナルカが拷問室を訪れると、椅子には汚れたドレスと真白い骨、死に絶えた黒い虫だけが残されていた。

 ■■

 時は流れ、モナルカとティーレの姿は厨房にあった。
 包丁を握り、指先を見つめるモナルカが、彼の名前を呼ぶ。

「ティーレ」
「なんでしょうかモナルカ様?」
「……料理に血が混じっても食べてくれますか?」
「血って、モナルカ様!?」

 慌てて振り向くと、包丁で切ったのであろう、指先から赤い雫をタラリと垂らして呆然としているモナルカの姿があった。
 ティーレは慌ててハンカチーフを取り出すと、消毒を施し、彼女の指に巻き付ける。

「あぁ……モナルカ様の尊き血がこんなにも」
「料理がこんなにも難しいものだとは知りませんでした」

 赤く濡れたハンカチーフを見て、ティーレは嘆く。
 対して、怪我をしたことよりも料理が上手にできないことをモナルカは嘆き、悲しんでいた。

「それにしても、どうして急に料理を? モナルカ様のお母様が行方不明となってしまい、お辛い時期でしょうに」
「いえ、別段辛くはありません。お母様も良い大人です。お腹が空けばそのうち帰ってくるでしょう」
「子供じゃないんですから」

 疲れたようにため息を付くティーレ。
 母の話題よりも料理の方が重要であると、モナルカは改めて食材に向き合う。

「それで、どうして料理を?」
「……必要ないと勝手に切り捨てられてきたモノが、私にとって大切なものだったから、でしょうか」
「……? それはどういう意味でしょうか?」

 何やら含みにある言い方にティーレが首を傾げていると、体を傾けたモルナカが幸せそうな微笑みを彼に向けた。

「ティーレに美味しい手料理を食べて欲しいと思うのは悪いことでしょうか?」
「――っ!? そ、れは」

 突然の爆弾発言。
 二の句が告げないティーレは、恥ずかしそうに口をもごもごさせると、俯きがちに言葉を紡いだ。

「悪くは、ない、です」
「そう。良かったです」

 素直ではないけれど、ちゃんと気持ちを伝えてくれるティーレが、モナルカはとても愛おしくなる。
 頬を朱に染めると、料理用に置いてあった苺を摘まみティーレの口元へと運ぶ。

「ティーレ。あ~ん」
「も、モナルカ様。帝国の皇女がそんなお行儀の悪い」
「あ~ん?」
「……んむ」

 食べてくれるまで止めない。
 そんな意志が言葉にせずとも伝わってきて、ティーレは諦めたように小さく口を開けて赤い果実を迎え入れた。
 自身の手から食べてくれたことが嬉しいのか、ニコニコと満面の笑顔のモナルカがねだるように感想を求める。

「美味しいですか?」
「……味が分かりません」

 羞恥心で味の分からない素直なティーレの感想に、モナルカは声を上げて笑うのであった。
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