笑う門には鬼が来る!?

Holy

文字の大きさ
8 / 13
本編-第一章-鬼に金棒

第1章 4節 -変わる世界のなかで-

しおりを挟む
 
 西京市。そこはかつて『京都』と呼ばれていた都市だ。多くの地名が、建物が、人々の記憶が――書き換えられ、それに気づくことなく、街は回り続けている。
 そのことを知るものはごく限られた者だけであり、自分――柊真白もその一人である。如何にして、そのような経緯に至ったかは知る由もなかったが、原因が何たるかは知っていた…
 
 何故なら目の前にヤツがいるのだから。
 ヤツ――言ノ刃は一般人にはその異形な姿を見せることはない。
 自らの死によって生まれた言ノ刃は何ら意識を持つことなく、人間ならば誰もが持ち合わせた霊核を喰らいにくる。無論、喰われた人間は突然死を起こすし、世間一般では不審死扱いされる。
 そのようなことを避けるために闘い立ち向かうのが自分の仕事だ。
 そっと、息を吸うとヤツを倒すためにぶつける霊力の源、「言霊」を引き寄せる。霊脈炉を起動させ、一気に霊子を言霊に変換する。
 目の前に災いがある限り自分の敗北はありえない。
 そう、信じて疑わずに飛んだ。
 


 言ノ刃もこちらに気付いて応戦態勢に入る。
 両腕が大砲のような形を象った、首のない化け物。人型のように見えるが、両脚は逆関節に曲げられており、その異形さは多くの霊核を喰らってきたことを現していた。
 
 予想通り、両腕から言霊の砲撃が飛来する。
 身をきりもみしながら避け、接近―――着地のショックを和らげるために両脚に言霊を集める。着地――言霊をクッションにして反動を無視し、右膝蹴りを言ノ刃の胴にぶち込む。
 手応えは浅い。続けて、左足で突きを放つが、言ノ刃は異形の両脚で飛びさる。
 「逃がすか―――千秋さん!!」
 言ノ刃の背後、待ち構えるようにスキンヘッドの男――平岡千秋がガトリングを構える。
 「いい、タイミングだ…こいつなら、どれだけ下手に撃っても当てられるぜぇ!!」
 にやけながら呟かれた言葉と共に千秋が持ったガトリングに青白い炎が宿り、火を噴く。
 ばら撒かれた銃弾は言ノ刃の体をズタズタに引き裂き、両脚も崩れた。動けなくなった言ノ刃を追って、真白は飛び込む。
 銃弾の雨が降る中…
 しかし、銃弾は全て逸れ、真白を阻む物は何もない。
 苦し紛れに、言ノ刃は残った片腕で真白目がけて大砲を放つ。
 だが、ガトリングの弾丸と同じように逸れていく。
 「残り、二秒…間に合えェェェッ!?」
 真白が右手に込めた言霊と共に抜き手を放ち、胴を貫き、核がつぶれる。

 瞬間――言ノ刃の体は形状を保てぬまま、内部に残った霊子をぶちまけ消え去った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...