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本編-第一章-鬼に金棒
第1章 4節 -変わる世界のなかで-
しおりを挟む西京市。そこはかつて『京都』と呼ばれていた都市だ。多くの地名が、建物が、人々の記憶が――書き換えられ、それに気づくことなく、街は回り続けている。
そのことを知るものはごく限られた者だけであり、自分――柊真白もその一人である。如何にして、そのような経緯に至ったかは知る由もなかったが、原因が何たるかは知っていた…
何故なら目の前にヤツがいるのだから。
ヤツ――言ノ刃は一般人にはその異形な姿を見せることはない。
自らの死によって生まれた言ノ刃は何ら意識を持つことなく、人間ならば誰もが持ち合わせた霊核を喰らいにくる。無論、喰われた人間は突然死を起こすし、世間一般では不審死扱いされる。
そのようなことを避けるために闘い立ち向かうのが自分の仕事だ。
そっと、息を吸うとヤツを倒すためにぶつける霊力の源、「言霊」を引き寄せる。霊脈炉を起動させ、一気に霊子を言霊に変換する。
目の前に災いがある限り自分の敗北はありえない。
そう、信じて疑わずに飛んだ。
言ノ刃もこちらに気付いて応戦態勢に入る。
両腕が大砲のような形を象った、首のない化け物。人型のように見えるが、両脚は逆関節に曲げられており、その異形さは多くの霊核を喰らってきたことを現していた。
予想通り、両腕から言霊の砲撃が飛来する。
身をきりもみしながら避け、接近―――着地のショックを和らげるために両脚に言霊を集める。着地――言霊をクッションにして反動を無視し、右膝蹴りを言ノ刃の胴にぶち込む。
手応えは浅い。続けて、左足で突きを放つが、言ノ刃は異形の両脚で飛びさる。
「逃がすか―――千秋さん!!」
言ノ刃の背後、待ち構えるようにスキンヘッドの男――平岡千秋がガトリングを構える。
「いい、タイミングだ…こいつなら、どれだけ下手に撃っても当てられるぜぇ!!」
にやけながら呟かれた言葉と共に千秋が持ったガトリングに青白い炎が宿り、火を噴く。
ばら撒かれた銃弾は言ノ刃の体をズタズタに引き裂き、両脚も崩れた。動けなくなった言ノ刃を追って、真白は飛び込む。
銃弾の雨が降る中…
しかし、銃弾は全て逸れ、真白を阻む物は何もない。
苦し紛れに、言ノ刃は残った片腕で真白目がけて大砲を放つ。
だが、ガトリングの弾丸と同じように逸れていく。
「残り、二秒…間に合えェェェッ!?」
真白が右手に込めた言霊と共に抜き手を放ち、胴を貫き、核がつぶれる。
瞬間――言ノ刃の体は形状を保てぬまま、内部に残った霊子をぶちまけ消え去った。
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