あの頃の私.今の私

おいちゃん

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姉との思い出

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「姉との思い出は?」
と聞かれればこれといった思い出が本当にない
小さいころから目を合わすだけで喧嘩するぐらい短気で一緒に何かした思い出もない
思い出ではないけど、唯一姉のことで覚えてるのは声をあげて泣き崩れてるところだけ

私が小学校に上がるまで姉との毎日のような喧嘩では叩かれて私が泣いて負けてばかり
部屋の中でも、学校にいてもすぐに喧嘩
仲がいい姉妹とは言えない
姉は生まれてすぐ染色体?が1本少なく産まれてきたらしい
発育や知能も他の人とは違い成長がとても遅い
小さかった頃の私は「障害」について知る余地もなく勉強ができなかったことをとても馬鹿にしていた
同じ小学校に通っているのに普通のクラスには行かず特別支援学級で過ごす姉
私が高学年に上がるころには姉は高校生
高校は特別支援養護学校に通っていた
自分も高学年になるにつれて障害ついて知ることが増えた
その反面、姉妹に障害者がいることが恥ずかしくて周りには姉を紹介することができなかった
年齢の割に知能が遅く行動も子供のようで私が「お姉ちゃん」と周りからは見えるらしい
そんな生活と、姉が大嫌いだった
「もう少しまともな行動できないの?」
「なんでそれがわかんないの?」
ひたすら姉に暴言を吐いた

母親の暴力が原因で姉は養護施設に預けられるようになってから会う頻度も減り、会話すら減った
一か月に一回外泊許可が下りていて家に帰ってきても姉は部屋に閉じこもり大好きだというジャニーズの本などを鑑賞して過ごしていた
母親の体調がよくなくて2か月ほど姉が返ってこれないときがあった
母親の暴力がなくなってから姉は母親に甘えることが多く部屋で過ごさない時間はひたすら母親にべったりして甘えていた
この時何年間分の母親との時間がやっと過ごせたかのように姉は母親と過ごせてとても楽しそう
迎えに行けないとき電話をするが帰れないことがわかるとひたすら「ママに会いたい」と泣いていたらしい
本当に母親が大好きだったのだろう
だから、あの時電話したのがとても心苦しかった

気づいたら私は病院にいた
医者から「親族に電話つきそうな人はいる?」
電話をかけてすぐにこれそうな人は一人いる
すぐに電話をかけたらすぐに向かうとのこと
30分すぎたころ姉と担当者であろう施設の職員さんも一緒に来た
姉が来たところで医者が部屋に入ってきてもう一つの病室に案内された
ベッドの上にはさっきまで一緒の部屋にいてテーブルに顔を伏せていた母親が横になって目を閉じていた
「17時06分お亡くなりになりました」
嘘だと思った
だってさっきまで一緒の部屋で過ごしてて救急車が来てタンカで運ばれて救命処置をしていたところ
そこから記憶はあいまい
なんでここにきて、なんでここで母親が寝てて、なんで死んだと告げられてるのか
横を見たら姉がボロボロ涙を流している
訳が分からない
喧嘩して殴り合いをしても泣かなかった姉が泣いている
母親に近づいて必死に「ママおきて?ママ?」って言葉をかけている
揺さぶっても母親は起きない
姉は「ママー!」と泣き崩れた
私は姉から「母親」の存在を奪ってしまった
あの時母親の「大丈夫」の言葉を無視して救急車を呼べばよかった
とてつもなく後悔をした
私はひたすら「ごめん。ごめんね」としか言葉が出なかった
忘れることはない
姉の泣き崩れて絶望してる姿を

あれから何時間たっただろう
私は姉が預けられている施設に引き取られた
一緒の部屋で初めて並んで一緒に寝ている
姉は泣き疲れてすぐに寝てしまった
自分は初めての場所、初めての出来事に戸惑い寝ることができない
部屋から出て廊下に出るとやっと涙がでた
姉から母親の存在を奪ってしまった自分には姉の前で涙を流す資格はないと思っていて気を張っていたが緊張が解けたように泣いた
なんであんなに近くにいたのに何もできなかったのだろう
なんでこんなに無力なんだろう
なんで自分は考えも行動も子供なんだろう
そう考えて毎日寝れなくなった

その日を境に姉は人が変わったかのようになった
どこを行くにも私についていき何をするにも一緒になった
とてもじゃないがしつこいと感じる
夜になれば私は変わらず部屋から廊下に出て泣く日々
物音で起きたのか姉に泣いてるところを見つかった
「泣いてるの?」
ごまかそうと思ったがさすがにごまかしきれなかった
「ごめんね、泣く資格ないのにね」
そういうと姉が初めて私を抱きしめた
「ごめんね。今度は私が守るから」
今までの姉の行動を理解した
私のことを守ろうとしてくれていた
私は守られてばっかりだ
姉から母親の存在を奪ったのに
恨まれてもいいと思っていた
残された姉妹、家族なのに
「これからは2人で頑張っていこう?」
この日から姉とは今までの分を取り戻すかのように家族として施設で過ごした
残された家族
今までできなかったこと沢山しようと
思い出を作ろうと思う
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