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聖女召還
に☆リュンデルさん
しおりを挟む「ほんっと、すみません…」
「うふふふ」
ソファーでついうっかり寝入っちゃってから、起きたら枕とブランケットが掛けてあり、一通り悶絶して終わった所にお茶を入れてくれたメイドのお姉さんが入ってきた。「起きられたのですね!ようございました」なんて言われて、まるで子供に向ける母性全開な顔されるなんて…
「お疲れのご様子でしたので差し出がましいとは思ったのですが…良くお眠り出来ましたか?」
「はいっ……ありがとうございますっ…」
顔を真っ赤にしながら、畳んだブランケットを返した。若干震えた手つきだったのは羞恥に堪えている私の心情を顕著に表していて…
やだ!ただでさえ顔赤い自覚あるのにっ!震えよ、止まれ!プルプルするなっあたしーー!
むぐっと口をつぐんだ私にお姉さんがまた生暖かい瞳をした
「本当にようございました。いくぶんかは顔色が良くなられましたねぇ」
「…ご心配をお掛けしたようで…寝たらスッキリしました」
「お声掛けしましたが、ぐっすりでしたので勝手ながら枕などをお持ちしましたのですが、ご迷惑でしたか?」
「いえいえ!ありがとうございましたっ!お陰でとっても仮眠…、?安眠?出来たのでっ!!」
「クマも少しは薄くなられましたが、まだお疲れのご様子ですね」
「へ?」
お姉さんは足にとんとんと、指を指しながら私に合図してきた
「足、真っ赤でございましたよ?お履き物を勝手ながら拝見させて頂きましたが、あんな細い踵見たことございませんでした。よく歩けておいででしたねぇ…」
「あっ、ヒール…確かに一日中履いてたので……、でも、見た目よりは痛くないですよっ?」
確かにピンヒールではあるけど、先はちょっと変形してて、芝生とか踏んでも食い込まない仕様だから歩きやすいやつだしっ、10センチが個人的にスーツがかっこよく見えるから、って理由だけの私的プライドの塊戦闘靴な訳で…1回家に帰ったのにヒールを履いてしまったのはスーツ姿で、コンビニにまだ買い物ってゆー戦いが残ってたから気合い入れた結果でして…
あっ、とかうっ、とかワタワタしてたら「薬湯をお持ちしようかと思っておりましたが…大丈夫なんですか?」って心配そうに頬に手を添えて首をお姉さんが傾げてる
あらやだっ、お母さんと年が近いと思われるお姉さんっ、いや、お母さんよりだいぶ若いかと思うけどっ!そんな可愛い仕草っ!似合ってますねっ!
「大丈夫です!大丈夫です!脱いでたら復活するんで!勝手に!!」
「では、楽な様に低いお履き物、お持ち致しますね」
「やんっ!いたせり、つくせりって、やつですね!」
お姉さん、気が利きすぎる気がします。なんだか恐縮するんですけど…
「でも、楽な靴ってのはありがたいです」
「はい。お持ちいたします」
多分、ベテランの方なんだろう。お姉さん。
私の監視とかも入っているのだろうか…?ちょっと寝たから、さっきより色々考えれるくらいには、冷静になってきた。
「どうぞこちらも宜しければお召しかえ下さいませ。お手伝い致します」
「え?服ですか?」
サンダルを持ってきてもらって、試し履きでサイズ確認が終ったところに更にワンピースっぽいものまで出された。
「はい。お休みの時、上着も脱がして差し上げれたら良かったみたいですね」
「あ、スーツ…」
ぱっと見たら、上着もシャツもシワが付いていた
「スーツ、ですか?」
「えっと、この様なタイプの服をスーツって、言うんですけど…」
「変わったお洋服だとは思いましたけれども…さぞかし良い製品なんですねぇ、きっと」
「いやいや、これはそんな良いものじゃないですよ!そこら辺にあるやつですし」
上着を脱いでたら、お姉さんが見せて頂いても?と言ってきたので、私はどうぞと言って渡した。
「見たところ大半素晴らしい裁縫技術ですし、何より、この軽さ…私は触ったことの無い素材でございます」
こんな細かい縫い目…それに柄も素晴らしいわ!とあっちこっち見ている。まぁ、スーツ屋さんで買ったし、決して安くは無かったけど…品は悪くは無いだろうけど…既製品です…それ。高級ではないです。
「まぁ!シャツもシワが!大変ですわ!」
…………ワンピース、お借りします。はい。
急に恥ずかしくなったのでワンピースをお借りすることにした。
ニコニコと笑いながらお手伝い致しますって言われたときには、全力で拒否してしまった。庶民に着替えの手伝いって…不要ですから…後ろのボタンだけはお願いしたけど。
「わぁ、楽~!しかも結構可愛い~」
クルリと一回りすると、お似合いでございます。ってまたニコリ。
「………っ、ありがとうございました。」
「ようございました。では、こちらはお洗濯させて頂きますね。」
「そんな事まで甘えちゃって良いんですか…?」
「はい。もちろんでございますよ。」
本当に、神だ。なんとかの召還で来てしまった私より遥かにそれだ。
「それと、お休みの時に、オーゲン様がお見えでございました。お部屋をご用意したので、そちらでお過ごし下さい。との事でございました。それと、ご説明は、またの折りに、とも」
「はい、分かりました。ありがとうございます」
「ナスカ様は、誰にでも、そんなにご丁寧なのですか?私どもに、その様な言葉使いでなくとも大丈夫でございますよ?」
「え、だって、色々して頂いてますし…それに、お姉さんもそうじゃないですか」
言わないけれども、自分より年齢が上の方にため口って…ねぇ?
「まぁ!おほほほ!お姉さんだなんて!!私の孫の様なナスカ様にその様に言って頂けるなんて!」
「え!?孫っ…!?」
「そうでございますよ。私、50になりますから」
「孫なんて、ムリムリムリ…余裕で娘じゃないですか」
「何をおっしゃいますか!そんなお若いのに、私を喜ばせているのですか?おほほほ!」
いったいいくつだと思っているのか、怖いわ…
「ほんとですよ?私、26ですし」
「ええ?」
今度は、お姉さんがびっくりしてる
「ナスカ様、26歳…?」
「はい。26です」
「まぁまぁまぁ!申し訳ございません!私の、孫とお年が近いかと思っておりました」
「……因みに、お孫さんって、おいくつなんですか…?」
「16でございます。」
じゅうろくっ…そんなおっきなお孫さんがいるのか…
「おっきなお孫さんが居るんですね」
「私も、娘も結婚が早く、子宝もありがたいことに早くに授かりましたからね。ナスカ様は、お子様などは?」
「んんっ、残念ですけど、彼氏もいないですねっ」
お茶を飲んでいたけど、吹き出しそうになったよ…危なかった…
「彼氏…とは?」
「あー、と、恋人?です」
「なるほど!では、ご結婚もなさっていらっしゃらないのですね」
「あははは…、そうですね…」
「ナスカ様のお所は、あまりご結婚は早くに致しませんのですか?」
「んー、最近はみんな、遅い傾向が有るかもですねぇー、早い人は早いけど、遅い人も多い、みたいな?様々ですけどね」
「へぇ、こちらとはだいぶ違うのですねぇ」
「あ、今更ですけど、お名前聞いても良いですか?」
「申し遅れました。私、リュンデルでございます」
「リュンデルさん…」
「はい」
「私は、南鳥 小向 です。」
「ご丁寧にありがとうございます。コムカイ様、とお呼びした方が宜しいでしょうか?」
「いえ!ナスカで大丈夫です!」
「でも、家名がおありなご様子ですので…」
「へ?家名があると、何かあるんですか?」
「ですから、大層なお家柄でございますよね?爵位をお持ちの…」
「はっ!?しゃくい!?ないないない!無いです!!」
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私とリュンデルさんは二人で顔を見合わせた。
「あの、リュンデルさん…私の事ってなんて聞きましたか?」
「ナスカ様は、儀式でお呼びした貴賓である、とだけでございます。」
なるほど、リュンデルさんに私の事を詳しく教えてないのか…リュンデルさんに、根掘り葉掘り聞かない方が良いのかな?ベラベラ喋って、リュンデルさんが監視だった場合とか、そうじゃなかった時とか、どうしよう…
「えぇっと、そうなんですけど…」
口ごもっていたらリュンデルさんは優しく
「では、ナスカ様は、あまりこのフェルグラットに詳しくないご様子ですので、ぜひお聞きになってください。私で答えられることはお答させて頂きますので」
「ありがとうございますっ」
リュンデルさん、本当に神すぎる…
私はリュンデルさんと微笑みあった。
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