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聖女召還
ご☆フェルトナリウス様
しおりを挟む一昨日、ようやく説明会があった。
モヤモヤ、どろどろとした考えが頭の中をグルグルとして気持ち悪い。
リュンデルさんも、遠慮気味なのがまたモヤモヤを増加させてしまう。完全なる八つ当たりでそれが余計に泣きたくなる。
「……散歩、行ってきますね」
はじめて散歩に1人で出てからほとんど毎日と言って良いほど、散歩が日課になった。新たにリュンデルさんに図書室に案内して貰ってから、私は、教会室ー勝手にそう呼んでるのだけれどーと、図書室、たまに庭と、だいたいここらへんをぶらぶらしてる
「なんだ、今日はこちらか」
「……こんにちは」
あれから、教会の彼、名前はフェルトナリウス様。何となく、従者っぽい人を連れている時があるので様って付けてる。本人も、様付けしても否定してこなかったから、多分偉い人なんだろう。
そんなフェルトナリウス様と何度か遭遇した。その度に、色々お喋りして今は、私を見つけるとフェルトナリウス様から声をかけてくれるまでになった
ーー何度もお話したおかげでフェルトナリウス様の色気満載ぞくぞくヴォイスを聞いても腰が抜けなくなった
「どうした。本は選ばないのか」
「あ、はい…こっちに来たは良いんですけど…何だか読む気になれなくって……」
「ふむ。そう言えば、一昨日話し合いを設けたそうだな」
フェルトナリウス様も何処からか話を聞いたのね。
「っ……」
ジワリと涙が滲んだ
「おい、なぜ泣くのだ」
すみません、大丈夫です、と言って涙をゴシゴシと擦った。けど、余り意味が無いみたい。情けないので部屋に帰ろうーー…
そう思って椅子から立ち上がった。
「はぁ…」
フェルトナリウス様がため息をついた。
最悪だっ………!!
「ごめんなさい、私これで…」
「ナスカ付いてきなさい」
「えっ………?」
「良いから、付いてきなさい!」
「は、はい!」
フェルトナリウス様は眉間にシワを寄せながら、つかつかと歩き始め、図書室を出ていった。私は、止まらない涙に視界が滲みながらフェルトナリウス様を追いかけた。
「こちらだ。」
「はぁ、はぁ、フェルトナリウス様、ちょっと、待ってください」
コンパスの差なのか、フェルトナリウス様歩くの速すぎ…
もう涙は引っ込んだ。必死に追いかけている内に。
「先に入りなさい」
「は、はい!」
息もまだ収まらない内に訳も分からず連れてこられた部屋の更に内部屋っぽいドアをくぐった。
「そこに掛けて待ってなさい」
「はいっ」
部屋のあちこちに雑多に詰まれた本。窓の前には壁一面のテーブル、椅子が一脚。そのテーブルの上も何かごちゃごちゃしている。
その横に長椅子が一脚。ーーここで良いのかな…?
私が泊まっている半分のサイズの部屋は色々詰め込まれたように物が溢れている…なんだか、プライベート感が溢れすぎているけど…
結局、何処に座って良いのか分からず、突っ立っていたら、フェルトナリウス様が戻ってきた
「なぜ立ったままなのだ。早くあちらに座りなさい」
「は、はいっ」
ぽすんと長椅子に座った。丁度良い固さだ…
フェルトナリウス様は前にある椅子に腰掛けた。テーブルに持っていた桶っぽいのを置いて
「涙は止まった様だな」
「すみません、もう大丈夫です」
「人前でみだりに泣くものでは無い」
「はい…すみませんでした」
」
「それで?何があったのだ?」
フェルトナリウス様がじっと静かに見つめて居たたまれない
「……」
何となく私のどろどろとした感情をフェルトナリウス様に知られたくなくてキョロキョロ視線を彷徨わせたらまたフェルトナリウス様が息を吐いた
「ここは私が許可を出した者しか入れない部屋です。人前で泣いてしまう程の事があったのでしょう?話してみなさい」
「………」
何度か、口を開こうとしては閉じてを繰り返して、結局私は下を向いた
「ナスカ」
名前だけを呼ばれてビクリとしてしまった。フェルトナリウス様は年が多分ちかいと思うのに先生とか、親みたいな感じがあって緊張してしまった
髪の毛スーパーロン毛menなのが余計に昔の学者っぽい雰囲気を増加させてるのよっ
「ホント何も無かったですよ…たまたま、情緒が不安定だっただけで…」
ゴニョゴニョとしてたらフェルトナリウス様がこめかみに手を当てて揉みしだいた
「私はナスカ、貴方がキレたと聞きましたが?」
「それは!今まであんなに放置してたくせに…あんなっ…あんなっ…」
ムカつきがまた膨れ上がって止まらなくなった
「だって…本当の事…言わなかったっ…!」
「本当の事?」
ーーーーーーーーーー
ーーーーー
あの日は、20日ぶりにオーゲンさんが神経質そうな小太りのおじさんと来て、説明を聞いた
小太りのおじさんがした説明は
『こちらの都合で召喚した事』
『聖女について』
『もう一人の男の子、シュン・ササキについて』
『今後どうするのか』
だった。
「…………それで……?」
「ですから、我々はもうお一人、シュン様が魔力を発現したことにより聖女ではないかと仮定致しております。貴方は申し訳ないが、何らかの影響で巻き込まれてしまった様なのです。何分、こちも二人同時召喚など前例に無く…」
おじさんは謝っているフリをして、偉そうに言ってくる。あまり、頭に入ってこない。
この世界に、魔力と言うのが有って、最近、魔力均衡が崩れてきていてそれを聖女が何らかの力で調律するらしいーー…
「それは分かりました。」
ガタリと音を立てて私は立ち上がった
無言で控えていたオーゲンさんが慌てて「ナスカ様!どちらへ!?」ととめに入った
「………私、間違いなんですよね?なら、もう帰りたいんですけど…?」
「………………それは、申し訳ございません…出来かねます…」
………あ、私は気が付いてしまった。
オーゲンさんの瞳の揺れかた、声の震えで。気が付いてしまった……
「あんたたちが勝手に儀式とかやって私をこっちにつれてきたんでしょ!?私は帰りたいのよっ!?」
「申し訳ございません…もう我々にはどうすることも…」
「そこの、あんたも!!私が勝手にこっち来たんだろって顔してるけど!あんたらが儀式なんてしなければ、私はこっちに来ることなんて無かったでしょうが!なに被害者面してるのよ!」
「は、はい、申し訳ございません…」
急に怒鳴ったら、2人は、申し訳ございません、申し訳ございません、しか言わなくなった。
……まるで私が、悪いみじゃないっ
力が抜け、ドサッとまた椅子に座った
「…………私は、どうなるんですか…」
「はい、我々の手違いとは言え、ナスカ様には大変ご迷惑をおかけしていますので、ナスカ様が今後、どの様に致したいと仰っても、可能な限りご支援致します。なので、どうか…どうか…」
「しばらく、これからの事についてお考えください…我々は何かあればご協力致しますので…」
「……出ていきたいです。ここから。町に行きたいです」
「町…!?下町でございますか…!?それは、大変厳しいかと…」
「なんで!?」
「申し訳ございません。ナスカ様は、こちらの事を全くご存じありませんし、下町は治安も悪く…」
私にどうして欲しいのか、コイツらは…!!
分かりきっているけれども!
「なので、我々が支援出来る様、フェルグラット宮にお好きなだけ滞在し、ご興味のある職や、やりたいことをお考えください。」
………結局、
出ていかれるのは困るのねーー…
本当の事を話してくれるでもなく、押し付けて来るでもなく、何を言ってもただ謝られ私はこれ以上怒りをぶつける事も出来ず、ただ、力無く「分かりました」と、だけ答えたのだ。
それから、更に腫れ物の様に扱われている。
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